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( ^ω^)机は繋がり僕らは出逢うようです。

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:07:00.16 ID:kzzDN7ps0
やがて僕らは繋がる。

茫漠とした距離を跨いで、横たわる永劫の溝を越えて、

そうして僕と君は出逢う。
きっと、やたぶん、じゃなく

( ^ω^)「絶対に、会えるお」

人気のない教室。最後列、出入り口に一番近い廊下側。
軽くそれらを見渡して、僕は自分の机をなぞる。
『絶対なんてこの世にはないよ。絶対に。』
整った字体を脳裏に思い浮かべて、小さく笑った。

朝日を背中で受けて、ああこれが全部のスタートラインだったんだと柄にもなく感慨深く頷いてみた。
窓から燦燦と注がれる日の光を一身に受ける自分の机を見、
出来るだけゆったりとした動作で両腕を天に掲げて、伸びをする。

凍った氷が溶けて行くように、時計の針が一日分進んでいく。
そうして今日が始まって行く。

これは僕と、
そして彼女

僕らを繋ぐ物語。

( ^ω^)机は繋がり僕らは出逢うようです。
《 そのいち 落書きつくえ》

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:07:54.26 ID:ZGoyBiLM0
ちんこかゆい

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:08:18.62 ID:kzzDN7ps0
『眠い、眠い眠い眠い……眠いお……』
頭が下に行ってはまた浮上している。
心なしか視界に入る物の割り合いが黒板からノートに刻一刻と移っているような気がする。
最後列、出入り口に一番近い廊下側。寝るのと授業を聞き流すには最高のポイントだ。


「この因数分解の公式は絶対に覚えとけよー」
水面下の意識を繋ぐのは、公式を読み上げる数学教諭の声と
自分が当てられた時を仮定する恐怖のみ。


『えっ、今どこっスかお?』
『103ページだ授業中に寝るなバカモン』

この。
この103ページの更に詳細で重要な問題を探し当てる時間の、どうしようもないやるせなさを思う心だ。

生真面目に授業受ける奴のため息なんて聞こえてきた日にはどうすればいいんだ。
その上に当てられた問題が解らないとかになると自分の運命を呪いたくもなる。
しかし漕ぎ出した船はそう簡単に引き戻せなくて。

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:08:59.92 ID:kzzDN7ps0
腰を落として、腕で簡易枕を作る。
僕を繋ぎ止めていた一抹の思いはどこかに消し飛んだらしい。

「期末テスト近いからな。だらけるなよ、諸君。」

諸君って勿論僕も含まれてるおね。ってな訳であくびを1つ。
悪い姿勢を取っているせいか少し痛む腰。僕は筆箱を漁る。
中からシャーペンを取って、その黒鉛を机に向けた。


( ^ω^)『うっうっうー♪ 時間の果てまでブーン♪』

軽快なメロディを頭の中で再生する。
3分とも掛からず机上に出現したイラスト。

        ヽ     
         (^ω^)-┐
       ┗-ヽ ノ
         ┏┘

この小生意気なフェイスは僕をデフォルメ化した物で、
結構ムカツクと人気である。ムカツクと言う評価が果たして良いのか悪いのかはさて置いて、
僕自身も結構気に入ってたりしてる。

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:10:30.92 ID:kzzDN7ps0
( ^ω^)「……やっぱりかお」

机に書いた落書きほど上手く書けるのは何故なのだろう。
しかもそれを書き写そうと思うと失敗する。
もしかするとこれは偉大な発見になるかもしれない。
……どうでもいいか。

ため息一つ。
消しゴムを取り、イラストに押し当て、

( ^ω^)「…………」
なんだか消すのもためらわれた。小さく息を吐く。
両腕でバリケードを作り、そのまま机へ寝そべった。


惰性と緩慢で形成された毎日を省みる日はいつか来るのだろうか。
僕としては、僕の30代とか40代なんて一生訪れないような気がする。
哲学的だけど非量産で、なんか中学二年生的な思考がぐるぐると回り、それはやがて眠気に変換されていく。


段々と意識から離れていく数学教諭の声。
小さく息を吐いて、また吸って。そうして思った。

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:11:34.26 ID:kzzDN7ps0
青春って、こんなもんかお?


限りある化石燃料、つまりは青春を無駄に燃え尽くす高校2年の梅雨始め。

そんなこんなでこれが始まり。
日本中探さなくても山ほどあるような、没個性的なありふれた一コマ。


こんななんの変哲もない感じで、僕らの物語は始まる。


《そのいち 落書きつくえ。》 終
                そのにに続く!

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:13:26.67 ID:kzzDN7ps0
《そのに 通信、ふぉー。》
机の変化に気がついたのは、翌朝の事だった。
見覚えのあるイラストと、見覚えのない字。
昨日から違いがないようで、決定的に違う自分の机をもう一度よく見る。

( ^ω^)「お……?」
鞄を置き、小首を傾げる。
そこにあったのは、綺麗な文字。明らかに僕の字ではないそれは、
僕の書いたイラストに添えられるように並んでいた。

        ヽ     
         (^ω^)-┐
       ┗-ヽ ノ
         ┏┘     ←かわいい。


( ^ω^)「お……?」
もう一度傾げてみた。それでも文字はやはりそこにある。

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:14:15.44 ID:0gu1QFIR0


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:15:05.60 ID:kzzDN7ps0
从 ゚∀从 「よう朝っぱらからバカ面下げて何やってんだ!?」
( ^ω^)「声量落せお……」
悪りぃ悪りぃとまったく悪びれもなく笑い僕の背中を叩く(結構痛い)昔なじみに
出来るだけじっとりとした視線をじぃっと送れば、
妙にくねくねと体を捩じらせ始める昔なじみことハインリッヒ高岡。
なんだこの軟体動物。

从 ゚∀从 「見つめちゃいやーんwwww」
( ^ω^)「だまらっしゃいお」
ため息。

从 ゚∀从 「え、何、マリッジブルー?」
( ^ω^)「相手もいないのにですかお?」
確かになー! 朝っぱらから暖まったエンジンは誰にも止められない。
それから僕の背中を叩く猛攻も止められない。

バシィバシィバシィバシィッ

や、背中マジで痛いんですけどお。アンタの辞書に加減って言葉はないのかお。
……や、辞書すらもってないって豪語したっけお。

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:16:11.87 ID:kzzDN7ps0
「あいかわらずお元気そうで何よりです、お二人とも」

いきなり背後から呆れ気味でそんな声。
うお。思わず飛び出た言葉。目の前のハインリッヒがケラケラと笑う。

从 ゚∀从 「おーはよ!」
(´・ω・`)「おはようございます。高岡さん、内藤くん」
( ^ω^)「おー、おはようだおー」
振り向いて、相手を見ようとすれば視界に飛び込んだ後頭部。
背後の人物は深々と45度のお辞儀。律儀というか堅気と言うか。
じんじんと痛む背中の原因を作った人間はこれを少し見習って欲しい物だ。


从 ゚∀从 「苦しゅうない、面をあげっ、ってか!?」

本当爪の垢でもせんじて飲めば良いのに。


( ^ω^)「言葉の意味知ってていってるのかお……?」
从 ゚∀从 「あ゛? なんかいった?」
(; ^ω^)「めめめめ、滅相もないですお!」
それを見て軽い笑いを漏らす後頭部、じゃなくクラスメートのショボン。
裏千家なんとか流とか、なんだか大層な名前の付いた茶道の家元生まれ。
意識して敬語キャラ使っている訳ではなく、これが彼の素だ。

いきなりマッガレーとかは言い出さない。
超能力者でもなんでもないから。疼かないで大丈夫尻の穴。

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:17:24.35 ID:kzzDN7ps0
从 ゚∀从 「で、どーしたワケよ。なんかあったの?」
( ^ω^)「お?」
(´・ω・`)「なにかあったんですか?」
( ^ω^)「別にこれといったことはないお。ただ」

从 ゚∀从 「「ただ?」」(´・ω・` )

はもる二人。言葉で説明よりももっと簡潔に、人差し指を机へ。
僕の指の先を焦点にして、そこに視線が集まり、

从 ゚∀从 「あいっかわらずこれムカツクなー!!」
(´・ω・`)「内藤くんに似てますね」

論点ずれてる。

( ^ω^)「それじゃないお、これ!」

        ヽ     
         (^ω^)-┐
       ┗-ヽ ノ
         ┏┘     ←かわいい。

「かわいい。」の部分を指さす。

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:18:31.10 ID:T1Vsz6d+0
しえん

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:18:33.44 ID:kzzDN7ps0
从 ゚∀从 「こいつがおかしいのは感性か、眼か、頭かって話か?」
( ^ω^)「違っ。誰が書いたんだろうって話だお!」

ああ、なーる! ……こいつ。
喉に出てきたため息を飲み込んで、すり替えた言葉をもらす。

( ^ω^)「昨日まではなかったから、少し気になったんだお」
从 ゚∀从 「ふーーーーーーーん」

( ^ω^)「どうでもいいって顔すんなお」
从 >∀<从 「どうでもいい」

(; ^ω^)「物凄い笑顔で言うなお」
顔すんなって言ったから言葉にしただけじゃん。
文句垂れるハインリッヒはナチュラルに無視の方向性で、
多分、と切り出し始めたショボンの方に意識を向ける。

(´・ω・`)「定時制の方ではないですか?」
从 ゚∀从 「「なーる」」 (^ω^ )
今度は僕らがはもった。なる程。

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:19:29.06 ID:QGR4y1Ug0
再投下?

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:19:53.39 ID:kzzDN7ps0
僕らの学校は全日制と定時制の二つがあって、
全日制は僕らの、要約すると普通の高校、定時制は言ってみれば夜間学校のことだ。
事実上一つの校舎に二つの学校が同乗している感じ。一番伝わりやすいかお?

まあ色々と、全日制と定時制の間で盗難だとかの問題はあるらしいけど、基本的には
お互いのことを干渉し合わない、で均衡を保っている。そう言う暗黙の了解。僕らの間には深い深い溝がある。
多分言語も宗教も民族も文化も違う国と隣り合ってるってこんな感覚なのだろう。

高校生にしてそう言うシビアな現実に触れれるのは良い事なのだろうか。


ハインリッヒが面白みもなさそうな顔で頷いて、

从 ゚∀从 「ま、それが一番堅実だわな」
( ^ω^)「おー」
(´・ω・`)「はい。この教室は彼らも使っていますし。あ、そろそろ授業ですよ」
では。そしてお辞儀。流石次代家元、さまになっている。
じゃ、俺も行くわ。女の子が俺なんて言葉遣いどうなの、でも様になってるし。ますますどうなの。

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:21:43.82 ID:kzzDN7ps0
( ^ω^)「じゃーおー」
その二人に手を振り、僕も席についた。
もう一度、自分の書いたイラストと向き合う。

        ヽ     
         (^ω^)-┐
       ┗-ヽ ノ
         ┏┘     ←かわいい。


( ^ω^)「…………綺麗な字だお」
男の整ったそれとはまた違う、整然とした中に柔らかさがある字。
字体で人物が出るとはよく言う。

筆跡鑑定の歴史は古く、はるか昔、16世紀のフランスで書籍として出たのが最初らしい。
……驚くほどどうでもいい知識であるが、それ位伝統ある、確立された分野であるから、やっぱり字体で人物はでるのだろう。
事実ハインリッヒはなんかを太刀でズバスバ切り倒してるような字なのだ。
豪快には遠いが、間違っても清楚なんて言葉を使っちゃいけない。

なに、言うなら爽快?
……文字に使うべき言葉なのかとか聞かないほうが吉だ。

>>17
ご明察です。地の文に手直し入れての再投下。
それでもなんか粘っこいですね。

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:23:26.75 ID:kzzDN7ps0
鞄から古文の教科書を取り出して、今回の授業のページを開ける。
ペンを持って、それを一回りさせる。

やっぱり返信はすべき、だおね?

メールがあるご時世に、机の上で一日空けてやりとりし会うなんてスロー通信手段が、
まるで今ちょうど開いている平安時代の人間みたいだと思えて、少し笑えた。

初めてこれをかわいいって言ってくれた彼女か彼に、何て書こう?


ああ、もう。青春ってこんなもんか!


     《そのに 通信ふぉー。》終

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:24:34.61 ID:kzzDN7ps0
《そのにぃてんご  返信、ふろむ。》

「なに、どしたの?」

まだ眠気が頭の上を徘徊しているらしい友人が、
やはり眠たそうな声でいきなり尋ねてきた。固まってた私は更に固まる。
喧騒に包まれた教室内、最後列の廊下側、内職するには結構いい位置。隙間風が寒いのが唯一の難点。

「いや、なぁ。これなんだが」
「ん……」
認識して、うわと声を上げる友人。

「ムカツクわねー」
「な、可愛いと思うぞ?」
「…………」

純粋に言葉を返せば、純粋な言葉を返される。

「おかしいのは感性か目?
いや、アンタに限って頭って事はないし……熱でもあるの?」

随分と酷い物言いだなぁ。
っていや、額に手を当ててくれる親切心があるならもうちょっと友人を信じてくれ。


「冗談よ」
普段顔に感情の出ない私ですらこれには微妙な顔をしていたのか、
私の顔を見て、半目になった友人がその手を腰にもっていく。
すうと引いていく伝導熱。少しばかり残念。

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:26:34.91 ID:kzzDN7ps0
「ほら、授業始まるわね。……って次はヨッシー中村じゃん」
だるっ。嘆息を入れる友人。ヨッシー?
「ほら、なんか数学の中村先生、マリオのヨッシーに似てるでしょ?」
「でっていう」
おまwwww 破顔した友人。
いつの間にか教室入りしていたヨッシー中村(解からないでもない)が早く席に付けと促す。
手でスカートと尻を押えて、皺にならないようにゆっくりと座り、

        ヽ     
         (^ω^)-┐
       ┗-ヽ ノ
         ┏┘    

イラストと向き合って、小さく笑う。
それから筆箱からペンを取り出して、通常ならばルーズリーフへ向けるべきそれを机に向けた。
たった一言だけ付け加える。

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:27:44.84 ID:kzzDN7ps0

        ヽ     
         (^ω^)-┐
       ┗-ヽ ノ
         ┏┘     ←かわいい。


……よし、満足。
そして尚もこちらを見てニコニコと笑うイラスト。

今日一日は退屈しないで済みそうだ。

      《その2.5  返信ふろむ。》 終
         そのさんに続く!

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:29:09.13 ID:kzzDN7ps0
《そのさん 一筆けいじょう。》

意識が浮かび上がってきた。

体は喧騒の中で、授業終わってたのかと、漏れたのは嘆息。
むくりと起き上がり、内藤ホライゾンを始動する。ピコン。起動音。
黒板を見、そして気づいた

( -ω-)「あ、ノートとり忘れてたお」
え、何さっそくフリーズ?
真っ白なノートと前方の黒板を交互に見る。

( ^ω^)「……うん、テスト前にショボンに泣きつけばいいお」
眉を下げながら、何で取ってないんですかと僕をなじりながら、
それでもノートを差し出してくれる友人を精密に思い浮かべる。
そしてそのノートをVIP高の核弾頭ことハインリッヒ高岡に奪い去られることも完璧に先見する。

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:30:09.43 ID:kzzDN7ps0
(; ^ω^)「…………」
僕の頭の中限定で流れる微妙な空気。……さて、それはともかく。
ノートもさる事ながら、大問題が起こっているのだ。


すなわち、肝心な机の返信がまったく出来てない。
……ノートとこれどっちが学生として重要なのかとかは、推して知るべし。

( ^ω^)「どう書きゃいいかわかんないおー……」
人間熟考すればする程煮詰まるもので、それを身をもって体験してたりする僕。
うんうん。そういう時こそ、

(^ω^ )「とりあえずリサーチ」

他力本願とも言う。



23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:31:40.37 ID:kzzDN7ps0
( ^ω^)「おーい、ショボンー」
窓際の三列目、授業をサボるにはいささか教師の目が届きすぎるけれども、
隣りが窓って所を汲むとまあ別に良い席って思ってもいいかななんて感じの場所。

僕の席の基準は授業をサボれるかどうかなのか、
なんてのは聞くだけ野暮と言う物だ。
とにかく、そこの位置に座って外を眺めていたショボンに近寄った。

ショボンといえばこちらに気づいたなり、そのまま座礼する。
こちらも妙に畏まって礼。ほぼ反射。

……なんでこんなに緊張するのか不思議だお。
どうかしましたか。ちなみに両手は膝にきちんと添えられている。本当に不思議な奴だ。

( ^ω^)「いや、なんかそう深刻そうな顔して聞かれると困るお」
空笑い。
どうせ僕の口から発せられる話題なんて高が知れているんだ。
気を張らなくてもいいとは思うのだが、相手の話に全身全霊を持って耳を傾けるのが
ショボンと言う、あるいは裏千家なんとか流の性質らしい。

背後に茶室ぐらいあっても違和感ない。
そう言うスタンドですって言われたらたぶん納得する。
閑話休題。

( ^ω^)「えーっと、ほら、例の机の返信に迷って」
なんかいい案ない? 付言すれば、顎に手を当て瞑想するショボン。
そうですね。ワンクッションが入って、

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:33:44.21 ID:kzzDN7ps0

(´・ω・`) 「暑気日ごとに加わり初蝉の声きく風待月のこ……」
(; ^ω^)「ストッ、ちょww ストォォオップッッ!」

はい? や、小首傾げられても困る。
顎に手を当て迷走するショボン。ワォ、うまく言えてたりする?
僕らの間に流れる微妙な空気。高校一年の一学期初クラス、
その自己紹介の時にいきなりただの人間には興味ありませんとか言い出した感じ。

( ^ω^)「それ重い」
(´・ω・`) 「はあ……、すみません」
って言うか、こいつ本当に高校2年か。

ありがとう(全然参考にならなかったお!)
喉の先まで出てきた後半の言葉を、また無理やりに胃の方に返して、ショボンに手を振る。

だめだ。次。



25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:36:34.27 ID:kzzDN7ps0
( ^ω^)「高岡ー」
教室の真ん中に陣取りながら、二、三人の女子と会話をしていたハインリッヒに声をかける。
先に言っておくけど全然期待してない。

从 ゚∀从「あー?」
*(‘‘)*「お、ブーンどうしたの」
川д川「…………」
声を掛けて来たり、あからさまに身引きしたりするハインリッヒの友人。
ちょっと質問があるんだおー。と一声。

从 ゚∀从「何」
( ^ω^)「いや、ほら、例の机のメッセージへの返信」
('、`*川 「あー、それ今高岡から聞いてたよー」
*(‘‘)*「なんかすごいロマンチックよね」
川д川「……そう?」
わいわいと会話を広げようとする女子と軽く笑いあって、

( ^ω^)「なんかいい案無いかお?」
と一言。
聞いとくだけ聞いとけ。ちょっぴり投げやり思考。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:38:09.59 ID:kzzDN7ps0
川д川「……愛しています、だから私は何も語りません」
('、`*川 「シェークスピアか」
从 ゚∀从「欧米か」
シェークスピアは西洋だよ。伊藤さんの知的な突っ込み返しですらもうどうでもいい。
女子の反応は打って響きまくった鐘のようだ。僕若干引き気味。
何ですか。皆さんそう言う気障な奴がご所望ですか。


*(‘‘)*「人と場合と財政によるわね!」


沢近さんが言う。うわなに一番最後生々しい。

川д川「女の子は狡猾じゃないと生きていけない、から……」

サダッチーこと貞子さんが言う。何か触れてはいけない世界な気がするお。
ふとハインリッヒ高岡と目が合う。なんか凄いイイ笑顔でこっちをみながら、

Σb从>∀从「Don´t think, feel!」

(; ^ω^)「ようはいい言い回しが思いつかんかっただけじゃまい……」
从 ゚∀从「なーんかいった?」
そして女子陸上部砲丸投げ部門のエース、ハインリッヒ高岡からのヘッドロック。
し、死ぬ……!!
(;;^ω^)「なな、ななな何も無いですお!!」

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:39:40.47 ID:kzzDN7ps0
そしてジャストタイミングに鳴る授業開始のベル。ある意味福音。

ありがとう(全然参考にならなかったお!)
喉の先まで出てきた本日二度目の後半の言葉(これを言ったら殺される。)を
また無理やりに胃の方に返して、僕たちは席にもどった。


もうなんかみんなだめだ。


そうして僕が結局書いたのは

『初めてそう言われたお! ありがとう』

すんごい普通。
僕と言う人間を正確に表しているように思う。
いろんな意味で等身大。笑える。



28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:40:47.32 ID:kzzDN7ps0
( ^ω^)「ってな事があったんですお」
ジュコココココ。もてなされたコーラを飲み干してから、僕はストローの先を噛んだ。
この部屋は少し埃っぽい。
それは締め切ったカーテンと固く掛けられた窓の鍵のせいだ。

3年前からこの部屋の主は外界との交信を一切遮断している。
電気灯の青白い光だけが発光源の部屋。
年がら年中それを浴びまくりの家人は、
3年前の風貌からまったく変わっていないようにも思えた。

外に出たほうがエネルギー使って余計老けるって事だろ。
カラカラと笑う家人は記憶に新しいが、やはりずっと前の記憶と瓜二つである。

世に言うひきこもりだ。

('A`) 「そうか。で、俺になんて言って欲しいんだよお前」
ひきこもりこと家人のドクオが、デスクワーク椅子で回りながら僕に問うた。
いや、あのねぇチミ。ストローから口を離す。

( ^ω^)「ドクオがなんか今日あったかって言ったから話しただけだお」
('A`) 「俺のせいですかそーですか」
ため息とその言葉を返される。歯噛みしていたストローから口を離して、

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:41:34.61 ID:kzzDN7ps0
( ^ω^)「義務をまっとうした僕に何かプリー」
('A`) 「俺のコーラでも勝手に飲んどけ」
( ^ω^)「間接キッスっすかお」
('A`) 「絞めるぞ。」
冗談だお。そして冗談じゃねぇお。
露点に達して、表面の濡れ始めたコップを手にとって本日二杯目のコーラを啜る。
ドクオの部屋へ来て遊ぶのはほぼ日課だ。

それは何も先生やドクオの両親に促されてやっている事ではなくて、
僕自身もここに毎日来ている理由はよくわからなかったりする。
しいてあげるなら「なんとなく」

この閉鎖空間のような場所が気に入ってたりするのかも知れないし、
ただ単にドクオが気の置けない仲だからなのかも知れない。

( ^ω^)「つーかドクオには持久力ってもんがないお」
('A`) 「は?」

( ^ω^)「中三になってパッタリ学校も、つか外に出なくなるし」
('A`) 「あー、はいはい。またその話か」

( ^ω^)「長距離走者がそれでいいのかお」

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:43:12.35 ID:kzzDN7ps0
小学校からの腐れ縁であるドクオに僕は語りかける。
コーラの炭酸が口の中にまだ残っていて、パチパチと攻撃するように発泡している。

少し説明をしよう。
中学に上がってから、僕とドクオは仲良く陸上部に入った。
そこでドクオは長距離を専門種目にしたという事に、僕の発言は帰来する。
持久力と粘り強さが求められる長距離走者がそれでええんかと言うのが僕の持論。

('A`) 「阿呆。長距離に求められるのは持久力なんかじゃねぇよ」
( ^ω^)「ほぉ……?」

これは興味深い。ドクオが首を一回しする。コキリ、と骨がなった。
時計の針が時間を刻む音と、パソコンの起動音だけが響いている。そんな中でドクオが言う。


('A`) 「諦め。諦めだよ、長距離に大切なのはな」


くあ。欠伸をするのもめんどうくさそうだ。
……って、いやいや。何で?
ドクオの言葉は、僕の持論とは真っ向から対立するものだ。と言うか、それで、いいのか。

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:44:01.03 ID:kzzDN7ps0
('A`) 「走りきらなきゃ終らんのが長距離だからな。
あー、もうここでいいやーとかあの地点ついたらそこから歩こうとか、
そう言う念を俺らは常に諦めなきゃいかん。」

( ^ω^)「………………」

唐突気味ではあるが、僕はその時過去に一度
何故外に出ないのかとドクオに詰め寄ったことを思い出した。

『さあ? ぜんまいでも切れたんだろ』

そう言えば、あの時もドクオはどこか諦めたように笑っていたように思う。
あの時からこの、目の前の長距離走者は何かを諦めていたのだろうか。

('A`) 「解ったかコラ短距離走者」
( ^ω^)「勉強になったようでならなかったお長距離走者」
ふざけ合って笑い合い、僕らはダウナーに時間を潰していく。
よしっ。と立ち上がったドクオは、やはり何かを諦めたように笑い、

('∀`) 「モンハンやるか」
( ^ω^)「おー。今日はドラゴン狩り祭だおー」

たぶん、青春ってこんなモンだ。

    《そのさん 一筆けいじょう。》終
             そのよんに続く。

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:45:33.88 ID:kzzDN7ps0
《そのよん 会話ろぐはとってない。》

さて。

朝一番に自分の机の前で呆然としているのも僕くらいのものだろう。
教室内の喧騒と、外から聞こえる雨音が体のいいバックミュージックだ。
クラスメートたちは昨日の晩御飯の内容やTVドラマ、
あるいは今日の小テストの話題で盛り上がっている。

教室の一角、机の前。

( ^ω^)「…………おー」
ゆるゆると吐く息はどこか震えていた。
この感情、歓喜とでも言うのだろうか。

        ヽ       初めてそう言われたお! ありがとう
         (^ω^)-┐   
       ┗-ヽ ノ       どういたしまして。
         ┏┘     友人はムカツクと言っていたが、私はそうは思わないよ。

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:46:43.05 ID:kzzDN7ps0
( ^ω^)「…………おー」
もう一度、意味のない言葉を、感極まった声を出す。
整頓された字。……綺麗な字だ。
感動している僕へ、ヤブから棒気味に頭にメシャ、と衝撃。

( ゜ω゜)「ぬふぉ!?」

唾が飛び出て放物線。

从 ゚∀从「うっわ、汚ねぇ」
あれ。僕の頭の痛みがリアルならば、原因を作ったのは僕の背後で
ケラケラ笑いながら人の後頭部をグーで殴って置いてさらに
『うっわ、汚ねぇ』って罵倒してきた人物だと思うんだけど。

( ^ω^)「な に す ん だ お ……!」
从 ゚∀从「えー、いやー、なんかお前の頭の上にお花畑が見えたから
こっちに戻ってこさせようと思ったもんのすごい親切心みたいなー?」

もんのすごい大きなお世話様お。

从 ゚∀从「何かおっしゃってかしらー?」
(; ^ω^)「ひ、人のピロートークにまでツッコミいれんなお!」
両の手でガードをする僕に、ケッと悪付いたハインリッヒ。
暴行の現行犯なのにそれももう日常なのか、僕らを特異の目で見てくるクラスメートは誰一人としていない。

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:47:31.84 ID:kzzDN7ps0
从 ゚∀从「それで、何して……ああ」
合点。
ハインリッヒが僕の机をじぃと見る。どうでもいいけど肩に顎のせんなお。こしょばい。

从 ゚∀从「いーじゃんいーじゃんすげーいーじゃん」
棒読みでハインリッヒ。電王か。

从 ゚∀从「んー……何々、どういたしまして……」
読み上げるハインリッヒ。別の意味でこしょばいのだけれども。
背後霊のように背後に立つハインリッヒは非常にのんびりと音読している。
つられて僕も読み返せば、また少し心が浮き足立った。

从 -∀从「ふむ。おかしいのは感性か、目か……」
( ^ω^)「その話はもういいお」
从 ゚∀从「なんだよー」

返信するつもりではあったけど、まさかまた返答が帰ってくるとは思わなかった。
先の見えない暗闇に語りかけるような感覚であったために、
僕は平常以上に喜びを感じているのかもしれない。

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:48:18.07 ID:tuHuf6VH0
こんな時間に・・・支援

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:48:44.43 ID:kzzDN7ps0
从 ゚∀从「私ってことは女かー。お前、俺だけじゃあきたらず……ふご」
おま。ハインリッヒが妙なこと言う前に口を塞ぐ。それが最後の『ふご』だった。

変態ラブコメ現在進行形なのにそれももう日常なのか
僕らを特異の目で見てくるクラスメートは誰一人としていない。
くやしくはない。

そして手に篭もる熱。

( ^ω^)「つか、なあ体熱いお。熱でもあるのかお……?」
从 ゚∀从「俺に限って?」
( ^ω^)「心配したわたくしめが阿呆でございました」
よろしい。とハインリッヒ。くそぅ。

从 ゚∀从「朝練なのよー。もーお疲れ様よ俺様は」
( ^ω^)「雨の日もかお。陸上部は大変だおね」
从 ゚∀从「うわっ、すっごい他人事だなおい」
じと目でハインリッヒが言って、それからカラリと笑う。

从 ゚∀从「あー、つかブーン、なんでお前、高校で陸上やらねーんだ?」

その問題が酷く素朴だ、そんなようなハインリッヒの声。

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:49:55.62 ID:kzzDN7ps0
(^ω^ )「お?」
从 ゚∀从「県タイム保持者がもったいねー」

ハインリッヒにしては珍しく、ため息が漏れた。
中学まで陸上をやっていた僕であるけれど、高校に上がってからは自然とそれをやめてしまった。
走る事は、今でも好きだ。だけれど陸上をやろうという気にはどうしてもなれなかった。
先生にやれやれと急かされる度に、その気持ちは大きくなっていったのを、今でも思い出す。

『さあ? ぜんまいでも切れたんだろ』
ドクオの言葉が再生された。
僕のぜんまいも、もしかすると切れてしまったのかも知れない。

( ^ω^)「さあ。なんでだろうかお」
从 ゚∀从「ふぅん……」
ハインリッヒがあっさりと食い下がる。珍しい事尽くめだ。
ふと窓の外をのぞいて、今日の雨はもうちょっと強くなるかも知れないなと思った。

喧騒と雨音はチャイムの音にかき消され、満を持して前方の扉から教師が入ってくる。

从  从ノシ 「じゃあなー」
ひらひらと後ろ手を振りながら去っていくハインリッヒを見ながら、
僕は着席する。手に取ったシャーペンは板書をする為じゃなくて、

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:51:33.21 ID:kzzDN7ps0

『みんなムカツクって言うから正直落ち込んでたんだお!
 それにしても雨がうっとおしいお』

よし、完成。
1人で大袈裟に頷いてみた。
文通をやって居た時代の人間って、多分こんな感じだったのだろう。
相手はどう言う返事をしてくれるのだろう。いつ返してもらえるのだろう、とか。


多分そんな僕は今、割と青春してたりするのだろう。


 《そのよん 会話ろぐはとってない。》 終

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:52:27.33 ID:kzzDN7ps0
《そのよんてんご たあいもない会話。》

「雨…………?」
机の上に記されたメッセージを見ながら、もう一度私はそれを頭の中で租借する。
そしてソフトに叩かれた肩に反応して後ろを向けば、

「よっす。机の君から返信でもあったの?」
机の君ってなんだろうか。
「だから。あー、うん。そのムカツクイラストの人」
「いや、可愛いと思っ……」
「はいよー。アンタの趣味はわかんないわ」
言葉を遮られて、少しだけ眉を寄せる。
ごめんごめん。と軽く笑ってくる友人。

「……まあいいが」
「つーかほら。次移動だし、さくさく返信しちゃいなさい」
そうして友人は片目だけを細めて、小悪魔のように笑いかけてくる。
「あ、ああ……しかし、せっかく書いてくれたんだし……」
「何事も全力投球なのはいいけど、ぜんまい切れるわよ」
じゃあ授業の後にでも書けばいいじゃん。
教室の喧騒の中、他愛もない会話をする。小さく相槌を打って、世界史の教科書を取り出す。

ξ゚听)ξ「ほら、いくわよクー」
川 ゚ -゚)「了解。ツン」

机の上に、予備のシャーペンが転がった。


《そのよんてんご たあいもない会話。》終
         そのごに続く!

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:53:24.34 ID:kzzDN7ps0
というわけでここまでが一昨日の投下分です。
ここから今回の更新分。続けて行きます。

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:54:32.60 ID:tuHuf6VH0
支援

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:55:10.13 ID:QGR4y1Ug0
しえん


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:55:15.71 ID:kzzDN7ps0
《そのご 休日しせんくぐり。その1》

从 ゚∀从『いーか、日曜大会だけど絶対くんなよ! 来たら死なす!』

ハインリッヒの言葉だ。

そんな訳で日曜日の午前11時。
僕は市立のスポーツセンターの駐輪場にいた。

ずらりと並んでいる色とりどりの自転車のフレームに、太陽の光が反射している。
梅雨の晴れ間と言うやつだろうか。空はとにかく青い。

(; ^ω^)「それにしても来たら死なすて物騒な……」
けれども行かなかったら行かなかったで殴られるのだ。すごい理不尽。
……しかしそういえば僕も、小学2年くらいの時母に『明日授業参観だけど、来ないおね?』と
一見聞いておけば牽制のような、ただし真意は見に来て欲しい心持ちで言った記憶があるような。

( ^ω^)「それと同じ心境……?」
僕の呟き声に反応する人影はない。
しめたものだ。ついでにため息も大げさに吐いた。

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:56:12.32 ID:kzzDN7ps0
(; ^ω^)「あいつは小学生かお……」
思えばあの、金曜日の日の陸上の話が前フリだったのかもしれない。
それはともかく。

( ^ω^)「グラウンドは……こっちかお」
自転車を所定の場所に直してから、グラウンドへ向かう。沸き踊る歓声はまだ遠い。
ジャリ、とスニーカーが乾いた砂を噛んだ。
僕なり心配していたグラウンドの状態だけれど、水はけの悪い駐輪場の地面がこの調子だ。

( ^ω^)「ま、大丈ぶい」

その声を吸い込むようしてグラウンドから上がった歓声に、また一つ大きなため息が出た。


蝉の声はまだ聞こえず、けれども確かに初夏を
感じされる6月の空が、頭上にあった。




45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:57:18.43 ID:kzzDN7ps0
広い場所、殊に陸上の大会などでハインリッヒを見つけたい場合は、
その空間内で一番黄色い歓声が上がっている所を見つければいい。
それはイコール、ハインリッヒ高岡の現在地になる。


VIP高の核弾頭こと、ハインリッヒ高岡。

また別の名を
( ^ω^)「砲丸投げのプリンス…………」

なんでプリンス、とか突っ込んだら負ける。それを本人に言うと極めて高確率で
綺麗な川とお花畑が見える。触らぬ神に祟りなし。

今は砲丸投げや走り幅跳びと言ったトラックの中で行われる競技が中心らしかった。
アップや休憩の為にトラックを歩いたり走り回ったりする陸上部員の姿がちらほら見える。

目を細め、それらの風景を歩きながら見る。
胸の中が確かに熱くなるけれど、この足は走り出さない。


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:58:02.44 ID:kzzDN7ps0
( ^ω^)「……おー。やっぱいたお」
先に言った法則はまだまだ健在のようだ。
投げ終わったらしいハインリッヒがベンチに戻っていくのが見えた。
スタンドからキャーキャー聞こえる。高岡様ー! とか聞こえる。

さま……?

聞かなかった事にする。すごい賢明。
マネージャーからタオルを手渡される高岡様の顔は終始不機嫌そうだ。
般若面、は流石に可愛そうだから人を食い殺そうとしている目とでも言っておこう。


( ^ω^)「たっ…………」
黙った。
小動物的勘が『近づくとデストロイ』としきりに訴えかけてくる。
しかし理性的思考が『このまま帰るとデストロイ』とも言う。

行き着いたのは痛みが先に来るか後に来るかの話ですおね、と結論。

よし。


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 18:59:02.41 ID:kzzDN7ps0
( ^ω^)「たっ…………」
黙った。
小動物的勘が『殺される! 逃げなきゃ殺されるッ! 逃げなきゃあ!』と訴えかけている。
理性的思考が『逃げるんだよォォォーーーーーーッ』と言う。

逃げれる訳ねー、と結論。

僕に気付いたハインリッヒ高岡が、あの般若面で、
人を食い殺そうとしている目で、こちらに、向かってくる。
え、何本当に来て欲しくなかったとかそういうオチ?

高岡の第一声はこれだった。

从 ゚∀从「ああ」

それから矢継ぎ早に

从 ゚∀从「ちょうどいい所にサンドバッグが」
(; ^ω^)「サンッ…………!?」

ガードする暇すらなく、僕の首に、ハインリッヒの両腕が絡みつく。
背中にはハインリッヒの気配と濃い死の香り。
スタンドから上がった悲鳴は、これから開始される僕の私刑を案じての事だろうか。

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:01:39.07 ID:kzzDN7ps0
『あたしィィィの高岡様がァァー!
う…うろたえるんじゃあないッ! プリンセスはうろたえないッッ!』

チミらにはこれが甘い恋人の抱擁に見えるらしい。
どう見てもヘッドロックですありがとうございました。

(; ゜ω゜)「ぬぁー! ぬぁー! ギブッ、ギブギブギブッッ!!」
从 ゚∀从「はっはっはっうるさいサンドバックだなぁ!」
(♯^ω^)「っーっせぇこの洗濯板ァッ!」
从 ゚∀从「あん?」
きゅっ。力が強まる。

し、死亡フラグ……!?
遠くの方でオタコンが僕の名前を連呼している。
キャーキャーとスタンドからは僕への罵声が聞こえる。恋は盲目らしかった。


(=゚ω゚)ノ「せんぱーい、お疲れ様でしたいよ……いよよぅ!?」

あ? ハインリッヒが体ごと振り向く。振り子の原理で白目剥いてる僕の体もふりむく。
ひぃっ。息を呑んだのはスタンドの方々だろうか。それとも目の前の小柄な少女だろうか。

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:02:55.06 ID:kzzDN7ps0
从 ∀゜从「…………いようか」
(; ゜ω゜)「お……僕はもってないですお、6文なんてお金……」
船頭が渡し賃金6文を要求してきた所で腕は放された。
危うく崩れ落ちそうになる体をどうにか両足で支える。


(;=゚ω゚)「先輩、この方……」
从 ゚∀从「このサンドバックはここで拾った。今師匠から伝授された技をかけていた所だ」
(; ^ω^)「サンドバックて……!」

从 ゚∀从「あー?」
ハインリッヒから両手が伸ばされる。すばやくホッピング土下座。
背中に、暑さからではない汗が流れた。

(*=゚ω゚)「もしかして、ないとう、内藤ホライゾンさんですかようっ?」
(^ω^ )「お? おー、そうですお」
名前を呼ばれ、鎌首をもたげる。膝についた砂を払って、立ち上がる。
僕よりも頭二つ分小さい、小柄な女子。
その大きな目は何か、僕が汲み取ることの出来ない種類の感情で揺れている。

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:03:53.38 ID:kzzDN7ps0
(*=゚ω゚)「やっぱりですよう!! VIP中の大鷲、かの内藤先輩!」
( ^ω^)「お?」
从 ゚∀从「……始まりやがった」
突き出されたいようの拳はかすかに震えていた。
ハインリッヒの嘆息。目には情熱の光。思わず一歩退く。


(*=゚ω゚)「両手を広げて100mトラックを走るその姿はまさに大空を羽ばたく鳥のようだと称えられ、
空気抵抗をみじんも考えてないフォームなのに早いし何故かそれは見る人の心を強く打つ!
しかしそのフォーム故にレーン侵害、ひどい時は失格を与えられたのにも関わらず自分の姿勢を一切変えないで、
あの超自由形で3年間走り続けた真正のアホ!!」

从 ゚∀从「それ褒めてんのか? 貶してんのか?」
(*=゚ω゚)「そんな内藤ホライゾンさんに生でお逢い出来るとは光栄ですいよう!」
ハインリッヒのツッコミをスッパリ無視して、更に熱弁を奮っていたいようが前へ出て僕の両手をにぎった。
スタンドからはざわめき声がする。

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:04:48.67 ID:kzzDN7ps0
『オレェェェのいようちゃんがァァー!
う…うろたえるんじゃあないッ! 頼れる男はうろたえないッッ!』

スタンドは阿鼻叫喚。
月のない夜には気をつけようと思う。

(♯^ω^)「っ……いてぇお!」
从 ゚∀从「うるせぇ」
ハインリッヒにつま先を一思いに踏んづけられた。
当然の事ながら競技終わりの砲丸投げのプリンスはスパイクを履いている。

(=゚ω゚)「あはは。先輩、さっきの砲丸でファール取られたから機嫌悪いんですいよう!」
( ^ω^)「お?」

(=゚ω゚)「きっと内藤さんにいい所見せたかったんですよう!」
从 ゚∀从「いよう」
真実じゃないですか。と朗笑するいように、眉間にしわを寄せて口止めにかかるハインリッヒ。
いようの笑い顔には、なんとなく懐かしくなる。
誰かに似ていると思うのだが、誰だったかは思い出せない。

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:05:48.39 ID:kzzDN7ps0
(^ω^ )「お?」
(=゚ω゚)「あ、それに僕が走るといっつも先輩、内藤さんの話だすんですよう?
やれアイツはもっと速かったぞーとか。……内藤さんのフォーム真似してる僕も悪いかもしれませんけどよう」
( ^ω^)「……お?」
从 ゚∀从「あー、もー、いようっ!」
お前そろそろ短距離のアップすんだろ! ハインリッヒの怒声。
いようの首根っこを掴んで歩き出した。お前のバツの悪そうな顔なんて久々に見たお。

从 ゚∀从「うるせぇ。あ、かっこ悪いからこれみんなには言うなよ」

顔だけをこっちに向けて、捨て台詞を吐く砲丸投げのプリンス。
その際少し耳が赤かったとか言うのは、きっと僕の幻覚に過ぎない。うん。多分。

(;=゚ω゚)「僕はもうちょっと内藤さんと喋りたいんですよう! その為に陸上部入ったのに……」
从 ゚∀从「だからアイツはもう陸上やってねーって言ってんだろ!」
(;=゚ω゚)「っ! ですから、納得の行く弁解を要求するんですよぅ!」
从 ゚∀从「ファビョんな阿呆」

遠ざかって行く二人の掛け合いの声をドナドナの気分で見送りながら、
僕はゆったりと息を吐いた。

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:07:13.54 ID:kzzDN7ps0
『親指を! あいつの! 目の中につっこんで! 殴りぬけるッ!
俺は あいつがっ 泣くまで 殴るのをやめないッ!
悪意がある 悪意の血液の流れを感じる!』

もう一回息を吐いた。
空を仰げば寸分違わない青さがある。そしてとん、と叩かれた肩。


/ ,' 3「ほぉ、内藤か」

その声に突き動かされるように振り向く。


( ^ω^)「……荒巻せん、せい?」

年老いた、けれども威厳を感じされる雰囲気が彼にはある。
僕の師が。歩み方を、僕に走り方を教えてくれた先生がそこにいた。


つきあがってきた感情は、懺悔と後悔。




54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:08:32.65 ID:kzzDN7ps0
/ ,' 3「ほれ」
( -ω-)「……すみませんお」
おごって貰った炭酸飲料を受け取り、礼をする。

/ ,' 3「大した事はないの」
缶コーヒーのプルタブに手を掛けながら朗笑する荒巻先生を見て、
上がっていた頭が段々と下がって行った。漏れたため息は多分、心から溢れ出した物だ。

/ ,' 3「まさか一度陸上を離れたお前が、まさかまたこんな所に来るとはの」
この人はいくつになっても少年のように振舞う。
それに言葉も倣うのか、刺のある言葉でも嫌味と言う物を感じない。今だってそうだ。

グラウンドから少し離れた所にある、雑木林。
そこに備え付けられたベンチに座って、まあジュースでも奢るから
話でもしようかと荒巻先生が提案したのは、ほんの5分前のことだった。

( ^ω^)「すみませんお……」
/ ,' 3「否、責めてはおらん」
ちょうど真上に鎮座する初夏の太陽みたく荒巻先生は笑う。

( ^ω^)「先生」

歓声は遠い。
僕はいつから、この位置に落ちていったのだろう。
あの声たちに、いつから蓋をしたのだろう。

55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:10:05.91 ID:kzzDN7ps0
( -ω-)「聞かないんですかお。僕が、陸上をやめた理由」
/ ,' 3「聞けば内藤はまた陸上をやり始めるのか?」
( -ω-)「………………」
図星もいい所だ。先生は完璧に理解しながら言ってる。
風が吹いて、葉擦れの音がする。こくり。荒巻先生がコーヒーを租借した。


/ ,' 3「内藤。高校入った時、他の先生方に陸上する事を強要されたの?」
( ^ω^)「は、はい。確かにそうですお」
サトリか、この人。大げさに肩を震わせた。
高校入学当初『陸上はもうやらない』と公言した後の事。今でも粒さに思い出せる。
先生がよって集って僕を引き止めにかかった時の事。

『お前は陸上をやる為に生まれてきたんだ』だの、
『お前が走らなくてどうするんだ』だの、

教師も所詮ノルマを課せられたサラリーマンなのだと身をもって理解した一年の春だった。
僕はもう走ることはない。この足はもう前には進まない。
アンタらに何が解ると、ささくれた心は今でも時々痛む。


56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:11:23.27 ID:kzzDN7ps0
/ ,' 3「それ、ある時期を過ぎるとパッタリやんだの?」
邪気眼でもついてるんですかお。幸いその言葉は喉にひっかかった。
目を剥いて先生を見たら、はやりしわがれた顔で少年は笑っている。


/ ,' 3「あれ、やめさせたのワッチだの」
危うく手に持ったままだった炭酸飲料を落としにかかりそうだった。

/ ,' 3「もしかしたら、あのまま先生方が強要し続けていれば、
 内藤は陸上をやめていなかったかもしれぬ」
だからワッチも共犯だ。そう言ってケラケラ笑う荒巻先生。
また視線は地面へ落ちていく。2年になってから新調した綺麗なスニーカーが目にうつる。
昔は2ヶ月もあれば靴底が磨り減って、脇が破れて、歩くたびに砂が入ったものなのに。

いや、それにしても

(; ^ω^)「どんなマジック使ったんですかお……?」
/ ,' 3「なーに、簡単簡単。陸上部顧問やめるぞと口添えしたの」
(; ^ω^)「…………」
要は脅したわけですかお。

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:13:08.47 ID:kzzDN7ps0
/ ,' 3「交渉術と言ってくれい」
人のピロートークにやんわりツッコミを入れ
今度はケタケタと笑う狸爺、もとい希代の陸上コーチ。

( ^ω^)「怒って、ないんですかお? ぼくは……僕は、
貴方にたくさんの事を教えもらったのに、それを全部ゼロにして……」


/ ,' 3「内藤。」


"荒巻コーチ"が僕の名前を呼ぶ。反射で顔を弾き上げ、隣りにいた先生の方向へ首を曲げる。
視界に写ったのは、全部を許したように笑う荒巻先生だった。

時々荒巻先生はちぐはぐになる。
その表情は、長く生きた人にしか出来ないと僕は思う。
目を見ただけで泣きそうになった。

いっそう強く、葉擦れの音。

/ ,' 3「いいんだの。……あれは、仕方なかった」

しわがれた手が僕の頭へのびる。そのままくしゃり、と撫でられる。暖かい手だった。


58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:13:48.34 ID:9Iz+ftOe0
紫煙

59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:14:41.76 ID:kzzDN7ps0
( ;ω;)「せん、せい……」
ぼやけた視界に木々の緑はよく映えた。
太陽の光に浮かんできた涙が乱反射して、プリズムの中にいるようだ。

/ ,' 3「ああ、そういえば藻川は元気かの?」
( ^ω^)「ドクオ、ですかお?」
/ ,' 3「左様、藻川だ。アイツも磨けば光る逸品だったの」
( ^ω^)「…………ドクオは」
/ ,' 3「ぬ?」


荒巻先生の眉尻が上がる。
僕らの足はいつからかひしゃげてたって話だ。


/ ,' 3「……むぅ、今流行りのにぃととか言う奴かの?」
( ^ω^)「や、先生。ニートとひきこもりは別物ですお!
その違いを敏感に反応する人はたくさんいますお。気をつけて下さいお」
/ ,' 3「ぬ、ぬぅ。今後の参考にするの……」

そして流れる沈黙。
葉擦れの音は低くなったり高くなったり。あるいは強く、弱く。
まるで海にいるみたいだと思った。慣れない感覚だけれど、心地良い。

60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:15:42.62 ID:kzzDN7ps0
/ ,' 3「内藤。覚えてるか? お前とドクオが一度、朝練を休んだ日のこと」
( ^ω^)「お? ……いや、覚えてませんお」
/ ,' 3「調度、梅雨初めのこの時期だったの」

荒巻先生が双眸で空を仰いだ。
頭に浮かんだ疑問符に、覚えてないのならいい。と先生の声。

短距離100m走のプログラム開始を伝えるアナウンスで流れた。


/ ,' 3「そろそろワッチは行くの」

そうして荒巻先生は立ち上がり、僕の頭をもう一度撫でた。
頭を垂れて目を瞑る。やがて離れていく暖かさを、少しでも心に刻み込むために。


( ^ω^)「お?」


撫でまわす手の動きは止まっているのに、何故か荒巻先生の手は僕の後頭部から離れない。
お? もう一度声に出す。
(; ^ω^)「あ、荒巻先生……?」

61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:16:40.56 ID:kzzDN7ps0
ははははは。荒巻先生が笑う。

/ ,' 3「いやの、いや、のぉ。なんか可愛い可愛い一人孫に悪い虫がついた様での。
しかもそいつの真似までするようになっての、やめろやめろとワッチが言うにもかかわらず
『でもおじいちゃん、尊敬してるんだいよぅ』とか言って泣き落とされての。
まあ可愛い孫の言う事じゃからワッチも百歩譲ってやって真似くらい
許してやってもいいかのぉとか思った矢先に孫の陸上大会にその男が来たようで
さっきすれ違いざまに頑張れのと言うてやったら
『聞いておじいちゃん、先輩が来てくれたんですいよぅ!』なんて嬉しそうな声で
言っちゃったりしちゃったりしてくれちゃったりしたりの今までは何を置いても
ワッチだったのにそれがどうだの! どうだの!? 
もうさくっとその悪い虫をやっちゃったほうがいいような気がして来てのぉ!」

( ^ω^)「い、いやっ先生? 痛いですお!? ってかホントにってぇお!
 どこからこんな握力でてるんですかお!?」

このままトマト的に僕の後頭部がつぶれるとちょっとした大惨事だ。
つーか高岡のヘッドロックの師匠って先生の事ですかお!?

/ ,' 3「と言うのは冗談だの」
(; ^ω^)「どこからどこまでが!?」

冗談じゃない。後頭部の痛みは凄い現実的だ。

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:17:56.34 ID:kzzDN7ps0
/ ,' 3「内藤。高岡のことは大切にしてやりの」
( ^ω^)「お……?」
唐突に伝えられた忠告に、小首をかしげざるおえない。
グラウンドからはピストルの音。第一走者が走り出したのだろう。

/ ,' 3「あいつはいつも遠まわしだからのぉ」
( ^ω^)「どこかですかお?」
感情の出し方も凄くストレートですお?
間髪入れずに返した僕の言葉に、荒巻先生がまた一つ朗笑した。

/ ,' 3「さしずめ高岡はヤマアラシだの。『自己の自立』と『相手との一体感』という欲求の、ジレンマ」
( ^ω^)「日本語でおk」
/ ,' 3「少年老い易く学なり難し。勉強しろぃ内藤」

荒巻先生の白髪が風に揺れる。
じゃあの。その一言だけが荒巻先生なりの別れの挨拶だった。
振り返ることもせずに先生は歩を進めていく。僕も回れ右で駐輪場へ向かう。

63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:19:19.46 ID:kzzDN7ps0
ジャリジャリと砂髪の音、強弱様々な葉擦れの音。
そして、遠くなっていく歓声。


両手を広げて、一歩足を前へ出すものの、走り出しはしない。


僕は走れるのだろうか?


それを実践する気持ちには、どうしてもなれなかった。


《そのご 休日しせんくぐり。その1》 終
             そのろくに続く!


64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:19:20.58 ID:tJJB9g+2O
しえんwktk

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:21:48.27 ID:kzzDN7ps0
ピコン! [荒巻いようシナリオが追加されました。]

と言うのは悪い冗談で。
いようのマシンガントークはじぃちゃんゆずりのようです。
その日スタンドは地獄の釜の底のようだったそうな。

余談はここまでに、続けてそのろくの投下です。
また少々、お付き合いください。

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:24:57.70 ID:wihdUZIjO
頑張れ支援

67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:25:54.29 ID:kzzDN7ps0
《そのろく 休日しせんくぐり。そのに》

(´・ω・`) 『そう思うのなら、今の内に借りて下さいよ……
 テスト勉強が遅れるのは、僕としても少し辛いですから』

ショボンの言葉だ。
メールでの文体もやはり丁寧調の彼が言った。

その因果で、僕はショボンの家の前にいる。
見上げすぎて首がそろそろ痛い。

(; ^ω^) 「……なんだおこの異空間」
世界の法則が乱れでもしたか、僕の目の前には威圧感たっぷりの門戸があった。
知らない人が目の前を通れば寺かと思うな。僕も思ったお。

表札ってヒノキで出来てるもんだったっけ?
丁寧な職人技で彫られた『須田』の文字。
その横にはやはりヒノキ造りのでかい看板で、裏千家須田流。

( ^ω^) 「あるあ……ねーおwwwww」
インターホンを押すのもためらわれた。
ピチュチュ。と戯れるような小鳥の声。羽ばたく音がして、
綺麗に剪定された垣根から2羽のスズメが飛び出して行った。


そんな訳で梅雨の晴れ間、快晴の日曜日午後2時12分。




68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:28:41.83 ID:kx6c3fLOO
なんかいいなw支援

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:29:51.33 ID:iSMkj23e0
支援

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:33:32.93 ID:wihdUZIjO
支援

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:41:49.76 ID:SIJGVr/YO
>>1、かなり地の文読みやすくなったな、てかむしろオレの中ではベスト(*^ω^)b
支援するぜぇえ!

72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 19:52:16.56 ID:SIJGVr/YO


73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 20:03:35.65 ID:SIJGVr/YO


74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 20:17:50.14 ID:tJJB9g+2O
しゅ

75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 20:32:08.26 ID:SIJGVr/YO


76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 20:43:31.92 ID:VlzLHHoJO
読み上げ

77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 20:55:52.23 ID:sWUPJUIi0
ID変わりまして>>1です。さるさんをもりもり食らってました。苦かった。
出来上がった作品を読むことは多いけど、その前の段階を覗く事は少ないですね。
意図として見せないようにするのが美徳とされているのかも知れません。
という訳でプロットの紙とかうp
http://www.uploda.org/uporg855021.jpg

>>71
そう言って頂けると嬉しいです。精進します。
気を取り直して>>67の続きから投下いきます。

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 20:55:52.55 ID:VlzLHHoJO
ウホッな作者さん
 
('A`)続きマダー?

79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 20:58:11.56 ID:sWUPJUIi0
>>78
んなこといってると掘るぞ><

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 20:58:13.42 ID:SIJGVr/YO
さぁ〜て、wktkwktk

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 20:58:49.81 ID:VlzLHHoJO
キタ━━(゚∀゚)━━

82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 20:59:25.87 ID:sWUPJUIi0
(´・ω・`) 「不審者と聞いて何事かと思いましたよ。内藤くん」
( ^ω^) 「はぁ……恐縮ですお。つかそれよりもあの、
僕を瞬く間に取り囲んだ薙刀片手のおばちゃん達は何者かお」

通された縁側をショボンに着いていく形で歩きながら、僕はつい2分前の事を思った。
ショボンの家の前で呆然としていたら、目の前の扉が勢いよく開いた
(恵比寿神社の年初め福男争奪レースを思い出して貰えると一番だ)
と思ったら武装したおばちゃん達に囲まれた。みんな薙刀片手。


(´・ω・`) 「茶道教室の生徒さんです。元気な方々でしょう?」
( ^ω^) 「元気すぎると思いますお」
キィ。板張りの廊下が軋む。
僕の左手には日本庭園。お茶のCM一本、ここで作れるな。

(´・ω・`) 「時々ハッチャケますけどね」
(; ^ω^) 「16年生きてて初めて本気で死ぬと思ったお……」
(´・ω・`) 「はは……ご無礼をお許しください。僕を孫のように思ってらっしゃるらしくて」
笑い、ショボンが立ち止まる。閉め切られたふすまの取っ手を引いて、僕を招き入れた。

( ^ω^) 「お。お邪魔しますお」

一礼。



83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:00:01.51 ID:VlzLHHoJO
支援

84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:01:31.15 ID:2ojB/74C0
お!続きあった

いまから読むぜー

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:01:47.68 ID:sWUPJUIi0
純和風の部屋だった。
月見窓とか床の間こそなけれ、ここだけ時間がゆったりと流れているように思う。

(´・ω・`) 「適当に座ってて下さい。今お茶でも……」
(^ω^ ) 「いやいや、お構いなく。長居はしないお」
これ以上居たらどっかから矢でも飛んできそうだ。

(´・ω・`) 「そうですか? でも、お呼び立てしたのはこちらですし……」
( ^ω^) 「おっおwwwつーかそれはこっちの話だお。日曜日にすまんおww」
眉尻を下げながら、そうですか。と少し残念そうなショボン。
立ち上がり、本棚へ歩き出した。

適当に部屋を見渡すと、学習机の方に目が行った。


( ^ω^) 「おっ…………?」
机の上に置かれていた、簡単な木のフレームの、写真たて。その中にある、写真。
学ランを着たショボンが左端に。そしてその横に二人。
同じく、僕の高校のブレザーを着た女の人。

( ^ω^) 「………………」

一番右側の女の人の顔の部分が、ハサミか刃物で切り取られていた。
学習机の上に真っ先に目が行ったのは、この写真が含む異質のせいかもしれない。

86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:03:35.10 ID:sWUPJUIi0
(´・ω・`) 「――内藤くん?」
呼ばれて振り返ると、思ったよりも近くにショボンがいた。
うお。後退する。いつもと同じトーンで、一冊の大学ノートを差し出してくる。

(´・ω・`) 「これ、英語のノートです」
(^ω^ ) 「おっおっwwwありがとうだお」

受け取り、パラパラとページを確認する。
やはり丁寧に取られたノート。日本語訳も……ちゃんと出来てる。

( ^ω^) 「さっすがショボンだおwwwありがとう!」
(´・ω・`) 「いえ。それでいいですか?」
( ^ω^) 「もっちろん! 本当に、日曜日に悪かったお」

いつのまにか背後に居たショボンを振り返り、礼を言う。
静かなトーンでいえ。と首を横に振るショボン。
その際また机の上に視線が言ったけれども、写真たては伏せられていた。
それは多分、そういう事、なのだろう。

( ^ω^) 「うん、じゃあブーンはそろそろおいとまするおw」
(´・ω・`) 「すみません。たいしたおもてなしも出来ずに」

( ^ω^) 「薙刀のおもてなしは結構鮮烈だったお!」
(´・ω・`) 「すみません……」

(; ^ω^) 「ただの冗談だお!」
途端くしゃりと顔を崩したショボンに、急いで弁明する。

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:04:35.49 ID:sWUPJUIi0
(´・ω・`) 「わかってますよ」
そう言ってショボンが見せた明るい苦笑に、
少しだけ陰りの色をみたような気がした。


《そのろく 休日しせんくぐり。そのに》終
             そのななに続く!

そのごとそのろくの「しせん」には
死線と視線のお好きな漢字を当てはめてください。
んでもって先ほどなんとなしに見ていたんですが、人物設定のショボンの項。
殴り書きで『男装の麗人』 ……もちろん没にしましたよ。

88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:05:10.01 ID:VlzLHHoJO
支援

89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:06:42.98 ID:VlzLHHoJO
ウホッな作者のくせに
(´・ω・`)はウホッじゃないのか

90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:10:04.05 ID:VlzLHHoJO
猿かな…
 
ttp://vip.main.jp/300-top.html
一応まとめサイト貼っとく

91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:10:30.48 ID:uVcR/WCd0
しえん

92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:13:57.81 ID:sWUPJUIi0
>>90
マジですか。まとめサイトいつのまにしかもオムライスさん?
ご多忙なのに何やってるんですかオムさん。
あー、なんだ、その。ありがとうございます。
まとめサイトがあるwwwやべぇすごい嬉しいwww

93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:15:58.68 ID:smcfhZUP0
>>62 3~4行目
×小首をかしげざるおえなかった
○小首をかしげざるをえなかった
じゃね?

94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:17:31.49 ID:sWUPJUIi0
さてテンションが一通り上がった所で
ちょっと席を外します。20分程度で戻ります。

http://www.uploda.org/uporg855056.jpg
間継ぎでまたプロットうp。現、元限らず陸上部員の方違和感あったらお気兼ねなくお願いします。
そしてじわじわ増えていくルーズリーフ。

95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:17:49.00 ID:VlzLHHoJO
ちなみに依頼をしたのは
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(´・ω・`)「このショボン様さ…」

96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:22:16.79 ID:ZNLS85Vm0
>>1

絵、上手いなぁ

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:22:18.84 ID:SIJGVr/YO


98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:35:45.54 ID:2ojB/74C0



99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:39:57.15 ID:SIJGVr/YO


100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 21:50:34.86 ID:tJJB9g+2O
しゅ この話好き

101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 22:04:03.80 ID:SIJGVr/YO
('A`)「保守してやんよ…」

102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 22:13:30.93 ID:IVuUnM+kO
携帯から〉〉1です。
すみません、ちょっと戻れそうにありません
スレが落ちたようならまたこちらで立てたいと思います。
また6時ころになると思います
申し訳ない。支援と保守ありがとうございました
すみません。では!

103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 22:15:17.16 ID:FtOeAale0


104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 22:23:14.69 ID:notRUtEq0


105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 22:23:44.63 ID:BJfA93hS0


106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 22:39:07.90 ID:46xGFJAVO
(´・∀・`)

107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 22:42:15.01 ID:SIJGVr/YO
遅れたが乙

108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 22:49:21.73 ID:8Htj+slx0


109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/14(木) 22:56:14.79 ID:46xGFJAVO
(´・∀・`)

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