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【エロスよ】( ^ω^)ブーンがマジ切れしたようです【集え】

1 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:37:40.39 ID:Z+GEqtdc0
投下の前の注意書き。

・この作品は性的な描写、及び不快な表現がふんだんに盛り込まれています。
 苦手な方はスルー推奨。
・作柄、地の文が長い。今回は鋼城樹民の5倍はあるのでめんどくさい人はスルー推奨。
・エロだけ読みたい変態さんは、一時間後に来てほしい。

でははじめます。

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 22:39:07.38 ID:HOQyjVVD0
エロktkr ヾ(*´∀`*)ノ キャッキャ

3 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:39:30.31 ID:Z+GEqtdc0
まとめサイトさま

オムライス
ttp://vipmain.sakura.ne.jp/310_2-top.html
ブーンノベル
ttp://booooonovel.web.fc2.com/majigire.html


百物語

ねじ的
ttp://mixboon.blog116.fc2.com/blog-entry-8.html


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 22:40:57.63 ID:W03nhfct0
ktkr

5 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:41:18.99 ID:Z+GEqtdc0
Link
   『( ^ω^)ブーンが植物の世話をしているようです』
                                to
                                 『('A`)ドクオは淫靡に溺れてしまったようです』




               『( ・∀・)モララーは植物と会話をするようです』

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 22:41:41.97 ID:W03nhfct0
支援

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 22:41:49.43 ID:6Vq6RWKz0
1時間後に来るノシ




8 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:42:37.69 ID:Z+GEqtdc0
【1.僕はモララー】
僕は、決して誇れるような人間ではない。

この世に生を受けてから、嫌悪と、劣等と、欺瞞に塗れた人生を送っていた。
他人の軽蔑に、不快に、逆鱗に触れないように。
僕と言う人間の本質は、臆病で、卑怯で、狡猾だ。
これからだってきっと、そうだろう。

今思えばそういった僕の人格は生まれた環境に起因しているのだろうか。
いや、そもそも生まれつきにしてひねくれ者の天邪鬼だったのかもしれない。
卵が先か、鶏が先か。
今では当の本人の僕ですらわからなくなってきた。

……ともかく頭の中を整理するために、ここで僕の生い立ちから遡る必要がある。

僕はとある地方で幼少の頃を過ごした。
大した娯楽もない寂れた片田舎の住宅街だ。
住宅街とは言っても、よく整備の行き届いたようなニュータウンの様相はまるでなかった。
手入れもろくにされていない、木造とトタン造が継ぎはぎのように混ざった造りの家々が大半だ。

白昼であっても、人や車の往来も滅多にない。
耳をそばだててみれば、飼われている犬の鳴き声とテレビの音が軒先から零れてくるほどに静かだ。
鼻につくのは半ば産廃場と化した近くの空き地から漂ってくる、
様々な種類のゴミから放たれる匂いが織り交ざった、えも言われぬような臭気だった。

見てのとおり誇れるほどの特徴はなく、むしろ、思い出すだけで吐き気がする。
故郷を出て一人暮らしをするようになってからは、一度も戻っていない。
だが、僕が帰らない理由はそれだけではない。
むしろ、これから語るもう一つのことが僕を故郷から遠ざけているのかもしれない。

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 22:44:17.61 ID:W03nhfct0
支援

10 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:44:18.64 ID:Z+GEqtdc0
両親はとても厳しい人間だった。

理不尽な意見を押し付けるのではなく、筋の通った正論でいつも僕に接してきた。
ただ、道徳だとか倫理だとかを良く理解していない子供にとっては、
正論も理不尽に、理不尽も正論に変わりのないものであり、
それを幼い一身に受けることは苦痛以外の何物でもなかった。

彼等はまさに謹厳実直を絵に描いたような堅物だった。
僕が何かをするたびに、うるさく口を挟む。
靴を脱いだらきちんと揃えるだとか、おもちゃを出したら必ず元の場所に戻すだとか、
さらには箸の握り方や、言葉づかいに至る一つ一つの所作まで厳しくしつけられた。

こういう教育とはどこの家庭にもある。
多少の差はあれど、『世間一般的』な良識をわきまえている親ならば必ずすることだろう。
しかし、うちの場合は特殊だ。
例えば、夕飯が目の前のテーブルに並んだ数時間後にようやくありつけた、
といったことがしばしばであり、うちの教育は『世間一般的』な範疇を逸していたのだ。

心底うんざりだった。
物心がついたころから、そんな生活だったのだから。

だが、反抗などできもしなかった。
他の人間を知らない当時の僕にとってみれば、いわば両親というものは絶対であり、
彼等の言葉というのは人間の真理以外の何者でもない。
その人間の真理をできない僕と言う存在がとても卑小なものであり、
恥ずべきものであり、到底口答えすることなど憚られた。

悩乱の末にかたどられた感情は抑制され、胸の奥底へと詰め込まれていく。
但し、人間という存在は肉体的にも精神的にも容量に限界がある。
そして、当然ながら僕にもそれがあったようだ。

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 22:45:57.52 ID:W03nhfct0
支援

12 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:46:01.93 ID:Z+GEqtdc0
異変はとても些細なものだった。

ある日、僕の腕に小さなゴマ粒大の湿疹が現れ、同時にその箇所から不快な痒みが疼きはじめた。
見た目には軽いものであったが、僕はそれにある種の薄気味悪さを感じていた。
敢えて言うなれば、僕の脳内に植え付けられた蝿の卵が孵化したもの、蛆虫が、
神経血管を通じ、五臓六腑、果てには四肢の爪先まで這って来、暴れ回るような不快とでも言おうか。

ともかく耐えがたきものであった。
だが、身体の中のことでは手出しならず、僕はこの陵辱にも似た侵食を甘んじるほかはない。
むしろ蛆虫たちの悪意のままに、僕は痒みに耐え切れず無意識のうちに患部を掻きむしる。
気が付けば、発疹は全身に広がっていた。

両親ははじめのうちは、幼少期によくある軽度の皮膚病かと高をくくっていたが、
日に日に悪化する姿を目の当たりにするや否や、只事ではないと判断し、
僕を医師の元へと連れて行くことに決めた。

医師はアレルギー性のアトピー皮膚炎だと診断する。
そして、治療のために軟膏を処方し一日数回塗布するように、と指示した。
一方、両親のほうも熱心に医師の話に耳を傾け、
食事療法も取り入れるという徹底ぶりで僕の治療に当たった。

だが、数週間経過しても一向に症状は快方へと向かう事はなかった。
むしろ、僕が掻きむしることを止めなかったため、患部が化膿するほどに悪化していた。
薬を塗っても痒みが止まらなかったのだ。

幼心に僕は本能的に悟っていた。
決して直ることはない、と。
そして、その原因もわかっていた。

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 22:46:41.31 ID:W03nhfct0
支援

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 22:47:04.45 ID:hUZcv/MM0
C

15 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:47:51.89 ID:Z+GEqtdc0
治療中も、両親の厳しいしつけは変わらなかった。
これも当然のことで、僕の病状は作法教育の直接の障害にはならなかったためだ。
目を覆いたくなるようなミミズ腫れと噎せ返るような痒みがあるほかは、
日常生活を送るにあたって特に問題はなかったのだ。
一方、僕も普段と同様に不平も愚痴も漏らすことなく、彼等の真理に付き合っていた。

だが、僕の内側では変化が起こっていた。
僕の血肉を吸い喰らって育っていた蛆虫が脱皮し成虫となったのである。

そのきっかけは僕の思考が変わったことだ。

本来ならば。
両親の懸命の治療に対して僕の身体が一向に回復しないことに恥を知り、絶望するはずだった。
彼等の行動は真理。
ならば、それを受け付けない僕という存在は全く別の悪そのものであると思うはずだ。

しかし、僕はその思考に二度と辿り付くことはなかった。

僕は彼等の真理を受け入れることをやめた。
正確に言えば受け入れることができなかった。
満杯に水が注がれたコップに、新たに水を注いでも溢れ出てしまうことと同じだ。
溢れ出した水はコップの側面を伝い、やがて地面へと零れ落ちる。
零れ落ちた水は地面の土や埃や不純物を吸い取って汚水となる。

端的にいえば、僕は彼等の真理を受け入れる『ふり』を覚えたのだ。
絶対不変の真理を変幻自在の虚偽へと変えて彼等に突き返したのだ。

16 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:49:32.58 ID:Z+GEqtdc0
僕は止む事のない厳しいしつけに対して、両親の顔色を伺いながら、
彼等の望む事を、一番喜ばしい最善の行動をとるようになった。

つまり、表面上から見れば彼等の真理に従っていることに相違はないのだが、
僕の心中での解釈はまるで違っている。
正しいと信じて行っていたわけではないのだ。
ただ、その選択で自分が損害をこうむることがなく、負担の少ないものであるから行っていたのだ。

そして、これはしつけについてのみではなく、僕に影響を与える彼等の行動すべてについても同じだった。

ある日、父親が僕のご機嫌取りのために地元のおもちゃ屋に連れて行ってくれたことがあった。
父親は言う。

「何でも好きなものを一つだけいってみなさい。買ってきてあげよう。さあ、遠慮することはない」

僕は困り果てた。
人間とは不思議なもので、欲しいものを尋ねられると、とたんに欲しいものが浮かばなくなるか、
もしくは、欲しいものが多すぎて悩んでしまうものだ。
そのどちらになったかは忘れてしまったが、僕は何も答えられずに口ごもるばかりだった。

煮え切らない態度の僕の様子を見て、父親の表情は曇りはじめる。

……まずい。
僕は咄嗟に答えた。

( ・∀・)「こけしが欲しい」

「こ……こけし!? ……むう」

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 22:50:04.35 ID:W03nhfct0
支援

18 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:51:14.20 ID:Z+GEqtdc0
と、父親は驚いた表情を見せ、吃言し、大声をあげた。
それも当然のことで、こけしなど少なくとも遊び盛りの幼児が欲しがるものではない。
僕自身もその異質さを充分理解していた。
ただ、以前に祖母の家に遊びに行ったときに見た、
テレビ台の横に置かれていたこけしが咄嗟に思い浮かんだためにそう言ったまでのことだ。

結果、困惑しながらも、父親はこけしを僕に買い与えた。

僕が考え方を改めてから、皮膚炎の症状はぴたりと止んだ。
つまり、原因は僕の精神的な面にあったというわけだ。

人体というものは、精神的に、肉体的に何らかの異常をきたした場合、
なんらかの反応をみせ(この場合はアトピー皮膚炎)、その後症状を改善するための働きをみせるのだ。
我ながら良く出来た自浄作用だと思った。

と、ここで疑問がでてくるはずだ。
なぜ、精神を抑圧された状態でかんしゃくを起こしたり、徹底的に反抗を行ったりしなかったのか。
幼いとはいっても普通の人間であれば、身体に異常をきたす前にそうするはずである。

恐らく心の奥底に、両親に対する恐怖と背徳心が残っていたのであろう。
真っ向からぶつかれるような力を持っているわけでもない。
それに、自分が卑小で、存在する事自体がおこがましいという考えは変わったわけではない。
その基本があった上で、自衛のためにどう対処するかが変わっただけだ。

そして僕の対人における反応というのは両親以外の他者でも同じであった。
無論、両親が畏敬の念を払う、例えば祖父母や叔父叔母、
会社の上司、町内会の会長、その他もろもろの人間については、
僕も彼らのいうことが真理であると信じて疑わなかった。

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 22:51:50.47 ID:W03nhfct0
支援

20 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:53:05.18 ID:Z+GEqtdc0
では、その他の範疇に入る者たちはどうなのか?
一言でいえば、判断できない。
いや、判断することから逃避したのだ。

一番初めに頭をよぎったことは、その他の者たちが僕と同様悪であり、虚偽の塊ではないかと考えた。
そう考えるのが、自明の理だ。
だが、仮にそうであった場合、僕が体内に飼っている悪魔の化身とも呼べる蝿を彼らも持っていることになる。
僕は、そのことにおののき、戦慄し、絶望するであろう。
僕は、自分の薄汚さを、卑劣さを、醜悪さを知っている。

だからこそ、その業を知っているからこその恐怖。
このような罪深い人間は僕一人でいいのだ。
それを認めれば、恐らく世界の大半を占めるであろう彼らに怯えて暮らさなければいけない。
残念ながら、僕にそれに耐え切れる強靭さは持ち合わせていない。
己自身の罪にすら怯えきり、辟易しているのだ。

そして、もうひとつはこれとはまったく逆の、つまり、僕以外の人間がすべて真理を持ち合わせている場合だ。
これも、白髪に染まり狂人へと変貌してしまうほどの恐怖だ。
僕の父親と母親と同一の存在が世界じゅうに、無数にいるということを認めなければいけない。

僕に選択の余地も、判断の余地もなかった。
見てはいけないものを見ないこと。
考えていけないことを考えないこと。
ひたすら、自分という意思を押し殺し、何者をも通さない殻に閉じこもり、すべてを遮断する。

それが、僕という人間を存在させうる唯一無二の手段だった。


21 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:54:12.64 ID:Z+GEqtdc0
【2.僕は笑う】
幼稚園、そして、小学校と学年が上がるにつれて、両親以外の他者と接触する機会が増え、
僕は幼心ながらたどり着いた先ほどの理論を実践に移した。

最初は、不気味がられた。

その第一歩として僕が具体的に実践したことは、『笑い』という人間という種の動物特有の反応だ。
大人になって実感したことの一つに、『笑い』の有用性が挙げられる。
『笑い』というものはTPOさえ弁えれば、相手に安心を抱かせ、警戒心を解かせ、
社会生活を円満に営むことにおいて強力な武器となる。

しかし、ただ微笑むだけではだめなのだ。
自然に、爽やかに、心の奥底から出ているように見えて、
なおかつ、他者にとって気持ちのいいものでなければいけない。
中には、相手を不安にさせ、苛立たせ、時には憤慨させる種類のものも存在するからだ。

とは言え、分別もつかない子供が作り笑いをするなどとは、至難である。
改めてその頃の写真を眺めてみれば僕の顔は決まって、
我ながら不自然な、面のような、どこか作為的な薄気味悪い笑みをたたえていた。
美醜の区別のつく人間ならば、写真を見るや否やすぐに嫌悪し、
目を背けたくなるほどの酷い笑顔しか、僕はできなかった。

実際、同級生の母親たちにも陰で囁かれたものだ。

「ねえ……あの子、気味悪くない? ほら、なんて言うのかしら。上手く言えないのだけど……」

「え、あなたも? 私もそう思ってたんだけど……」

「礼儀正しくて、勉強も出来て、『いい子』には違いないんだけど、何だかねえ」

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 22:54:49.24 ID:W03nhfct0
支援

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 22:55:28.13 ID:PTo1fQfV0
支援

24 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:56:01.99 ID:Z+GEqtdc0
僕はその陰口を聞くたびに、眼前に霹靂が落とされるほどの衝撃と恐怖を感じた。
僕の恐るべき本性を皆に暴露されてしまうのではないか。
一体、僕の罪を知った両親は、どんな罰を与え、どれほど酷く咎めることだろうか。
もしかしたら、十字架に逆さにはりつけられ火あぶりに処されるのだろうか。

大げさではなく、僕はそれほどまでに打ちひしがれていたのだ。
就寝の時間になると、独り、ベッドの上で頭からすっぽりと布団をかぶり、
がたがたと身震いをしながら刑の到来を待つしかできなかった。

しかしながら、それは僕の杞憂に終わった。

予想に反して、彼女たちは僕の悪魔の本性を言い広めることはしなかった。
今ではその由を知ることもできない。
僕の本性が口に出すのもはばかられるほどに禍々しいものだったのかもしれないし、
その正体を完全に悟りきることができなかったのかもしれない。
ともかく、それは僕にとって都合のいいことであったのは事実だ。

一方で焦燥の思いも募るばかりだった。
見破られてはいけない。
見破られれば、極刑が待っている。
ならば、僕は安息を得るために秘密を守り抜く必要がある。

僕は、笑みという表情を完璧にするために必死になっていた。

僕は可笑しいことを知らない。
腹の底から大笑いをしたことがないのだ。
僕ほどの下郎な存在が嘲ることのできるものなど存在しようもなく、また、僕にそんな資格はない。
だから、いかに滑稽な事象が、剽軽な存在が現れても、僕の中でこみ上がってくるものはない。
ただ、僕以外の他者が共有する『凡庸』から外れている、ということを感じるのみである。

25 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:57:42.63 ID:Z+GEqtdc0
同時に、嬉しいことを知らない。
心の底から喜んだことがないのだ。
つまり、僕は幸と不幸の区別がまるでつかないのである。
人は、何を以って幸せと呼ぶのであろうか?

母親に連れられ買い物に行く道中、軒先の掃除をしていた近所のおばさんに、

「あなたは、すばらしい手本のようなお父様とお母様を持って幸せものね。
 うちの馬鹿亭主にも、あなたのご両親の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいものだわ」

と、言われたことがあった。

完全に理解できなかった。
僕は、彼女のいう『すばらしい手本のようなお父様とお母様』と同じ部屋で過ごし、、
同じ釜の飯を食い、一日の大半を共に暮らしているが、
まったくもって幸福などというものは感じたことがない。
僕が感じていたことといえば、抑圧であり、憂慮であり、畏怖であった。

むしろ、自分で『馬鹿亭主』と呼んでいる者と人生の半分以上もの間、
同棲し続けているおばさんのほうが、よほど気楽なように感じられた。
それでも、彼女は僕を『幸せもの』と呼ぶ。

僕が仮に幸せだとすれば、なんと、この世は絶望的なのだろう。
僕よりも不幸な他者が存在すると考えるだけで身震いがする。
彼らの日常には、僕が味わった以上の無間地獄が待ち構えているのだろうか。
それでいて、なぜ他者に苦痛の顔を見せることもなく、余裕綽々としていられるのか。
胃液が逆流し、身悶えるほどの苦痛であるこの状況が『幸せ』なのだろうか。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 22:58:46.31 ID:S1c6QydB0
しえん

27 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 22:59:10.84 ID:Z+GEqtdc0
僕は思考を止めた。

彼女の言葉が神の天啓であるかも、悪魔の囁きであるかも僕には判断できないのだ。
ならば、知らないほうがいい。
幸の定義を、不幸の定義を。
適切な状況に応じて、幸せであるふりを、不幸であるふりをすればいいのである。

そのような前提で僕はものを見ていたために、
いつのまにか可笑しいものと可笑しくないもの、そして、幸と不幸の違いがわからなくなっていた。
言わば、笑顔という表情の根源である、楽しみと喜びという感情を知らずに生きてきたのだ。

笑顔の習得には膨大な時間を要した。
自然な笑みを作り出せる者とは、自然な笑みを完膚なきまでに知っている者である。
知っている、とは、意識をせずとも自ずと他者に表現できるということだ。
残念ながら僕はそういった概念がすっぽりと抜け落ちている。
だからこそ僕は限りなく本物に近い『模倣』を演じることにした。

笑顔を作り出すうえで一番参考になったことといえば、
巷で評判のバラエティ番組を食い入るように観察したことだ。

芸人が、何か面白いことをする。
観客は、げらげらと笑い声をあげる。
僕は、そのタイミングにあわせて、げらげらと笑い声を上げるふりをする。

もちろん、一度として面白いと感じたことはなかった。
はたから見れば、番組を見て純粋に笑っているように見えるだろう。
だが、実はこれが一番両親に不審がられずに『模倣』の練習を行える方法だった。

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:00:41.95 ID:PTo1fQfV0
支援

29 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:01:05.30 ID:Z+GEqtdc0
この観察は功を奏し、僕は晴れて笑う『ふり』を上手にできるようになった。

当然といえば当然のことで、バラエティ番組というのは、
『世間一般的』な通俗性を含んだ内容を視聴者に向けているものであり、
さらに言えばその通俗性の中でも、『笑い』の一点のみを追求したものである。
まさに、『笑い』において教則とも呼べるその番組を、
毎日延々と繰り返し観察し続けた結果、上達しないわけがない。

そのうえ、更なる恩恵を僕に与えてくれた。
他者にとってどういう事象が面白可笑しいか、つまり、
人間という知的な動物から『笑い』という反応を引き出すメカニズムを、理解できたとでも言おうか。

この特技は、他者と(不本意ながらも)社会生活を営むことにおいて、大きな利点となりうる。
僕がもっとも恐れることは、他人の軽蔑に、不快に、逆鱗に触れることだ。
それらを道化を演じることによって、一身に受けることを防ぐわけだ。

しかし、道化といっても単に嘲笑の的となるような白痴とは違う。
それでは僕の意図とはまるで異なってしまう。
笑われるのではく、笑わせる。
適切なタイミングで非難の矛先を逸らし、矢面から逃れるために、笑わせる。
そのために、僕は道化という方法を選ばざるを得なかったのである。

だからこそ、時と場合と節度を守る必要がある。
過多に行うこともいけないし、過少に行うこともいけない。
どちらに傾き過ぎても、相手の厭悪を引き出す結果になるだろう。

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:01:10.70 ID:W03nhfct0
支援

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:01:48.61 ID:Xwe/hCJiO
太宰治『人間失格』に似てね?

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:02:38.65 ID:W03nhfct0
支援

33 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:02:41.77 ID:Z+GEqtdc0
その結果、僕の小学生としての生活は成功を収めた。
同級生から何一つ恨まれることはなかったし、また、成績優秀、品行方正な生徒として、
教師たちの機嫌を損ねることなく、僕の評判は上々なものであった。

ガキ大将に宿題を写させろと言われれば、嫌な顔をせずにノートを貸し出したし、
クラスの男子と女子が言い争いをしている様子を見れば、鞄に忍ばせていたジーンズを頭から被り、
上下ジーンズ怪獣だ、と教室のドアから飛び出して、気まずい雰囲気を和ませたりもしたし、
掲示板にクラス全員分の絵を貼り付ける退屈な仕事を先生に押し付けられても、
放課後遅くまでかかってまで、きちんと言われたとおりやり遂げた。

そして、気がつけば僕は『陽気な茂良(もら)ちゃん』のあだ名を貰いうけるまでに、人気者になっていた。

しかし、勘違いをして欲しくはない。
僕は、決して羨望の眼差しで見られ、人気者としての立場を享受したいわけではない。
単に皆の顔色を伺い、皆の望む行為を常に選択していただけで、
周囲の人間の理想を反映するだけの虚像であっただけだ。
むしろ半ば脅迫観念に近い義務感に駆られ、要らぬ気苦労を背負い込むばかりの日常だった。

そんな僕を皆は『幸せもの』だ、と言った。
全く笑えない、冗談だった。

僕には、皮肉にしか聞こえなかった。
皆は、生皮を剥ぎとられたおどろおどろしい山羊のような僕の正体を知っているのだろうか。
皆は、生きたまま腹を切り裂かれて心臓を抉り取られるような僕の苦しみを知っているのだろうか。
『陽気な茂良ちゃん』のあだ名も、まるで見当はずれだ。
僕の実像は、寡黙で、陰鬱で、醜悪な人間であるのだから。

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:04:16.50 ID:W03nhfct0
支援

35 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:04:23.68 ID:Z+GEqtdc0
【3.僕は目覚めた】
人生の分岐点とは、日常のすぐ傍らに転がっている。

これは、中学校へと上がったころの話だ。
僕はある経験を期に、そのことを悟ることとなる。
まさに天変地異とも呼べる、僕の存在意義を揺さぶるほどの出来事だった。

まずは僕の中学校生活においての、一つの習慣――『観察』について話そう。
僕はいつも同じ通学路を通っていた。
家から一歩外に出れば、侘しさや非裕福の象徴ともいえる粗末な家々が並ぶ区画が続き、
さらにまっすぐに十分ほど歩けば、唐草模様の鉄門とコンクリート製の塀で物々しく遮られた屋敷に差し掛かる。
屋敷の前を抜けていくと、今度は大通りに面した十字路にぶつかり、そこでようやく右に曲がることができる。

曲がった先の幹線道路に平行するのは、朽木と化している名も知らぬ街路樹だ。
くすんだ茶褐色をした枝々の隙間から覗く灰色の空は、凄惨とも空虚とも呼ぶべき光景で、
歩道に沿って歩く僕を、一日二回、きまって憂鬱な気分に変えた。
そして、かっきり三十六本目の街路樹を過ぎた左手の横断歩道を渡ったその奥には、
地元の人間しか使わない路地があり、それは再び僕を住宅街の内部へといざなう。

そこは、僕の家がある区画とはまた違った雰囲気をもっていて、
どちらかといえばまだ新しい、建てられたばかりのマンションや一戸建てが並んでいる土地だった。
空き缶はおろか、塵ひとつ見当たらないほど綺麗に整備されていたのが印象的だ。
通勤途中のサラリーマンや、ゴミ出しのために出てきた主婦の身なりを見ても、
どこか小奇麗なもので、自分との生活水準の違いをありありと感じさせられる。

しかし、羨嫉の感情は全く生まれてこなかった。
仮にこちらに住むことになれば、たちまち、この場所を汚してはならないという圧迫感に苛まれ、
絶えず不要な気遣いを振りまかなければならず、僕の悩みの種は尽きることはないだろう。
ともかく、ここでは埃を落とさぬように静かに脚を前に進め、ひたすら直進するのみだ。
ここまで来れば、もう学校は目と鼻の先だ。

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:04:32.02 ID:PTo1fQfV0
支援

37 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:06:00.92 ID:Z+GEqtdc0
しかし、特筆すべきは僕の母校ではない。
その敷地が見えるか見えないかの位置にひっそりとそびえる、一軒の木造アパート。
そこが、僕の人生観を大きく変貌させた場所だ。

一階二階合わせて四部屋しか存在しない、まるで小さなアパートだった。
周囲の目新しい家々やマンションの中で擬態するためであるのか、
白いペンキで一面塗り固められてはいたが、所々で皮がめくれ、ささくれ立ち、
木材本来の木目がまだらに見え隠れしているところを見ると、それなりに年季が入っていることが伺えた。
だが、僕はそんな古ぼけた建物に、不思議と安堵の念を抱かずにはいられなかった。

幾度となく通学帰宅を繰り返す中で、僕はそのアパートに惹かれはじめていた。
構造から判断する限りだと、部屋のいちばん奥側の窓が道路に面しているようで、
アパートの前を通り過ぎる度に、嫌でも住人の生活が視界に入ってくる。

一階左側の部屋は、水色の花柄のカーテンで遮られて中を伺うことができないが、対照的に、
右側の部屋の窓にはそういった遮蔽物がまったくなく、反対側の入口のドアまで鮮明に見ることができる。
その部屋の住人は、タンクトップとステテコのよく似合う剥げた中年男性で、
一日中スルメを肴に酒を浴びながらテレビを見るという、自堕落な生活を送っているようだった。

そのまま視線を上げて目に入ってくるのは、窓先に多量の洗濯物がぶら下がっている二階右側の部屋だ。
中からは子供らの騒々しい黄色い声、そして、それを叱る母親の声がひっきりなしに響いてくる。
声色は少なくとも、四つ。
六畳一間ほどであろうこの部屋では、少々窮屈であるようにも感じられた。

そしてもっとも僕の興味を惹く、いや、興味の九割九分を占める部屋が、その左隣だ。
そこだけは何か、言い知れぬ異質さを醸し出し、他の部屋とは完全に隔絶されたようにも感ぜられた。
まず、僕の視線を釘付けにしたのは、窓先に干された女性ものの下着だ。
日が経つごとに、下着の色は目まぐるしく変化していったのだが、
たいていは赤、黄、桃、紫などの派手な色をしており、まさに衝撃的だったことを記憶している。

38 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:07:36.55 ID:Z+GEqtdc0
勘違いして欲しくないのは、僕には女性の下着を収集するような狂気じみた性癖もないし、
それらを盗もうだとか下卑たことを考えたこともない。
一番に、その持ち主の人物像について興味が注がれていたのだ。

しかしながら、欲がまったくなかったと言うのも嘘になる。

中学一年だった当時は、ちょうど精通を覚えたばかりの頃で、
性的なものに少なからず関心があったわけだが、
ただ、先ほども言ったとおり、両親は厳格な人間であったため、
それまで淫猥卑猥な、つまり、性欲を刺激するようなものに触れる機会が全くなかった。
彼らは、茶の間にベッドシーンが流れようものならば、すぐにチャンネルを変えてしまうほど堅気なのだ。

いってみれば、雄の本能ともいうべき欲望の正体を、僕は知らなかった。
思春期に入ってからというもの、心の中で肥大し、成長し、増幅する黒い渦塊にひたすらわななき、
僕の中で再び悪魔の化身が誕生したのだと、絶望した。
射精という行為をはじめて経験した後は、根拠のない罪悪感と喪失感と虚無感で満たされ、
来たるべき断罪の時に一層怯えるようになっていた。

だが、同時にその悪魔を拒絶することができずにいた。
一度精液を排出してしまえば、罪の意識に苛まれることになるのだが、時間が経つにつれて、
それは朝霧のようにすっかりと消え去ってしまい、代わりに黒渦が怒涛のように押し寄せてくる。

そう考えれば、あの『誘惑』はまさしく悪魔の住処に続く門への入口だ。
僕は引き返すことのできない世界へと足を踏み入れたのだ。

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:08:38.58 ID:W03nhfct0
支援

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:08:49.66 ID:xywPMX+H0
支援

41 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:09:22.58 ID:Z+GEqtdc0
僕は例の部屋の住人を一目見ようと、一日二回、欠かさず窓の中を覗きこんだ。
赤のカーテンが階下の部屋同様に窓を遮っていたのだが、不思議なことに、
いつも半分ほど開いており、逆にその中途半端な隠蔽が僕の好奇心を刺激したのである。

もちろん、堂々と覗き込むことはしない。
何かにつけて、例えば、伸びをするふりをしてちらりと視線をやったり、
はたまた、空に雨雲が覆っている日には、雨を気にするふりをして横目で窺ったりと、
通行人や住民たちに訝られないように、あくまで自然に探るのだ。
こうして、探偵じみた日々の調査によって、断片的ではあるが、
僕は例の部屋の住人の素顔を突き止めることに成功した。

住んでいるのは二十代後半ほどの女性。
まあ、これは干されている洗濯物の内容で大体把握できる。
問題は、その職業だ。
朝の通学時と夕方の帰宅時に、僕はその窓を観察していたのだが、
決まって朝は電気も付いておらず真っ暗なのに対して、
夕方はテレビから発せられている青白い光だけが漏れ出していた。

状況から、僕はOLでも住んでいるのであろうかと察したが、残念ながらそれも違った。
たまたま午前中で授業が終わって、いつもよりも早い持間にアパートの前に通りがかり、
ふと中を覗いてみると、ぼんやりと薄暗い光が揺らめいていたし、
逆に、部活の大会に向けて夜遅くまで残っていたときに通りがかり、そっと覗いてみると、
部屋には一切の暗闇があるのみで、静まり返った空間と化していたのだ。

どう考えても、一般人の生活リズムとはまるで違っていた。
居るはずの時に居なく、居ないはずの時に居る。
そこに、どこかしら引っかかるものがあった。
しかしながら、白昼に見た時はたまたま仕事が休みだったかもしれないし、
夜遅くに見た時はたまたま外出していたのかもしれない。
ともかく、あれこれ邪推しても仕方が無かったため、僕はそこまで深く追求することはしなかった。

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:10:50.56 ID:W03nhfct0
支援

43 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:11:02.61 ID:Z+GEqtdc0
しかし、それは完全に否定されることになる。
ある日、僕はある光景を目の当たりにして、確証を得ることとなったのだ。

いつもよりもほんの一時間だけ、帰りが遅くなった時のことだった。
僕は例にももれず日課の一つとして、あの部屋を見ようとアパートの前に差し掛かる。
だが、アパートの前には一台のタクシーが止まっていた。

一体誰が使うのか、と僕は思考をめぐらした。
あの剥げた中年の男性が使うのか、と一階右側の部屋を見てみると、
下着姿のまま酒を食らっており、どう見てもこれから出かける様子は見られない。
では、二階右側の部屋に住む母子家族が使うのか、とそのまま上を見上げると、
食事をこぼす子供を叱っている母親の声が響いてきたため、これも違うと悟った。

では、一階左側のまだ見ぬ、正体不明の住人かと睨んだが、
支度をする音がまったく聞こえてこないことから、相変わらず不在であるようだ。
ならば、と僕がその真上に視線を傾けようとした、

その瞬間だった。

(*゚∀゚)「ごめんね、待たせちゃったわさ。化粧が上手く乗らなかったからさっ。
     でも、もういいよ。とりあえず、二戸町まで出して頂戴」

ハイヒールが階段の段差を踏みつける、カツカツと高い音が響いてきた後に、
一人の女性がアパートから飛び出してきて、タクシーのほうに駆け寄り、
口早に謝罪の言葉と行き先だけ告げると、そのまま、半ば強引に中に飛び乗ったのだ。

僕は、呆気にとられ、立ち止まってしまった。
思わぬところで、あの部屋の住人の姿を見てしまったこともそうだったが、
想像の斜め上をゆく彼女の容貌に、釘付けになってしまったのだ。


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:12:18.95 ID:W03nhfct0
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45 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:12:50.04 ID:Z+GEqtdc0
まさに三文小説に出てくるような娼婦が、ページを突き破って実体化したような下品な装いだった。

乳房を無理やり押し込ませ、不自然に谷間を強調させるような仕立てのドレスは、どこか仮装じみている。
所狭しとスパンコールがちりばめられ、まばゆいほどに光をちらつかせているストールは、妙に安っぽい。
染色のために傷んだ毛を無理やり束ね、ねじり込み、くくり上げたヘアースタイルは、浮浪者のように汚らわしい。

男性である僕が注意したくなるほど、化粧のしかたもまるで酷いものだ。
ファンデーションを塗りたくった面皮の白と対照的に、毒々しい口紅の赤だけがやけに浮いており、
まるで、売れないサーカスでおどけるピエロのごとく、醜い表情だった。

今振り返ってみて、僕がこんな風に感じているように、実際美しい容貌でもなかったのだが、
雌という生物を表面上でしか捉えていなかった、つまり、女性を知らなかった思春期の僕は、
彼女に本能を揺さぶられ、欲情を搾りとられ、妄想を掻きたてられた。
そして、そのあばずれた姿にサンタ・マリアの後光を重ねてしまった。
言わば彼女は僕にとって、未知の存在であり憧憬の対象であったのだ。

最初の衝撃的な出会いは、刹那の間ともいえるほどに短いものであった。
しかし、目を閉じれば、瞼の裏に彼女の姿がありありと浮かぶほどに、
停まっていたタクシーのナンバーや、塀に貼られた町内会の掲示物の内容、
さらには頭上を走る電線の本数をそらで言えるほどに、僕の脳裏にはその光景がはっきりと焼き付いていた。

僕はその日以来、彼女との再会をひどく鶴望し、悶々とした思いに悩まされ続けた。
授業中も、ずっと教室の窓からアパートの方角を眺めるばかりになり、
通学帰宅の際に彼女の覗き込む行為も、気づかぬうちにあからさまなものとなっていた。
たまたま、洗濯物を干すために窓から半身を乗り出している彼女の姿を見ることができたときは、歓喜に震えた。
室内での彼女の服装は色あせてくたびれたタンクトップ一枚であったのだが、それがまた逆に僕の淫欲をそそった。

46 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:14:29.69 ID:Z+GEqtdc0
僕は、彼女の『観察』に夢中になっていた。
この行為が、僕のはじめて感じた喜びであり、楽しみでもあった。
そして、彼女のアパートの前を往来する、このつかの間のひとときだけが、
僕の生きている意味であったとしても過言ではない。

ただし、彼女と知り合いになりたいだとか、会って話がしたいだとか、そんな願望はまるでなかった。
そこまで惹かれておきながらも、やはり彼女という他者が怖かったのだ。
それに、僕のやっていることは、陰湿で、ねちっこく、気味悪いことであり、
『世間一般的』に非難されるべき行為だということはわかっていた。
仮に、それが明るみに出てしまったならば、たちまち彼女は僕を排斥しようとするだろう。

しかし、僕はアパートの部屋を覗き込む習慣を止めなかった。
不思議なことに、きまって彼女が窓から顔を出す時間は同じであったため、
僕は彼女の姿を見逃さないよう、そのころを狙ってアパートの前を過ぎる。

冷静になって考えてみるとひどく軽率だ。
それでも、抑えることができなかった。
理性と恐怖と冷静を跳ね除けて、暴走するばかりだった。
まさに僕は、狂信者だ。
山中での密修から久しぶりに街に戻ってきた聖者の姿をありがたがる、おろかな民衆そのものだ。

だが、よほど無頓着で鈍感な人間でないかぎり、
毎日のように自分の周囲を嗅ぎまわるような不穏な気配に気づかないはずがない。
もちろんのこと、彼女も例外ではなかったわけだ。

彼女はとっくに僕の存在に気づいていた。
そして、僕の体内でうごめく黒い悪魔にも。

おかげで、期待することのなかった彼女との際会が訪れることとなったのである。

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:15:02.28 ID:xywPMX+H0
支援

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:15:57.60 ID:W03nhfct0
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49 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:16:14.54 ID:Z+GEqtdc0
【4.僕は溺れた】

校舎の時計台の短針は真下を、長針は真上を指していた。

地の底から吹き付けるような冷ややかな風が、僕の頬をなでる。
否応なしに晩秋の到来を肌で感じ取れた。
初秋までは、まだ辺りも白んでいた時刻であったが、この時期ともなるとすっかり日も堕ちていて、
身の回りの輪郭が、暗く、おぼろげなものに変わっていた。

でも、そんなことはどうでもよかった。
日々はただ過ぎていくだけだ。
そこに意味などない。
静かに暮らすことができて、唯一の楽しみさえ残っていれば、それでいい。

校門から一歩出れさえば、一日のなかで至福の瞬間がおとずれる。
目指すは、白いアパート。
そして、二階左側の部屋。
その空間に、女神が棲んでいる。

僕はそっと目を閉じた。
胸は歓喜に震え、高鳴っている。
支配するものといえば、至高なる甘美。
理性にしがみつくことを止めてしまえば、たちまち僕は発狂し、地面をのたうち回り人目もはばからず絶叫するであろう。

だが、それがいい。
僕をまともな人間にしたらめる虚像にしがみつくくらいなら、壊れてしまったほうがいい。

そして、僕は目を開く。
網膜にその姿を焼き付けんと。
髪の一筋さえも鮮明に残そうと。

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:16:51.28 ID:jvHHnTyu0
なんか凄い塊が降ってくるようだ

51 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:17:56.14 ID:Z+GEqtdc0
(;・∀・)「……え?」

僕は呆けたように、声をあげた。
僕の目に映ったものは、半分ほど開かれた窓だった。
そして、その奥に見えるものは、古ぼけた蛍光灯がぶらさがった天井だけだ。
彼女の姿は、ない。

僕は瞼をこすり、再度、状況を確認する。
……いない。
やはり、いない。
例のごとく、テレビの声と青白い光だけは確認できるのだが。

(*゚∀゚)「ねえアンタさ、いつもアタシの部屋をのぞいてるでしょ?」

突然のこと、僕に落胆を与える隙間もなく、横から喧々しい声が飛んできた。

(;・∀・)「――ッ!!」

僕は思わず、目を閉じ、身をすくめた。
つかつか、とハイヒールの音が近づいてくる。
しまった。
僕は、このときほど、自分の行動の浅はかさを後悔したことはなかった。

どうしようか。
このまま逃げてしまおうか。
いや、それはよくない。
なにしろ、学校の制服を着て毎日ここを歩いている。
ならば、どうする。
いや、どうしようもない。
もう、僕の平穏はここで終わってしまうのだから。

52 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:19:48.95 ID:Z+GEqtdc0
(*゚∀゚)「アンタさあ、あそこの中学の生徒? 名前は?」

(;・∀・)「……」

目の前に立ちはばかったのは、あの部屋の女性だった。
何百回も繰り返して洗濯したようなよれよれのTシャツに、太ももの上まで短く裾が切られたショートパンツ、
そして、甲の部分にディ○ニーのネズミの顔があしらわれたサンダル。
相変わらずだらしのない格好だ。

しかし、僕は彼女を目の当たりにして、答えることができなかった。
ただ、怖かった。久しぶりに他人の逆鱗に触れ、戦慄した。
嘘をつく余裕などなかった。

あのアパートと同じだった。
ぼろぼろの中身を隠し通していたペンキが、剥がされたのだ。

(;・∀・)「……」

顔に血の気が引いていく感覚がした。
見えもしないのに、自分の唇が青ざめていくのがわかった。
脂汗がにじみ出た。ワイシャツがべっとりと背中に吸い付いていた。
視界が歪んだ。まばたきをすれば、涙がすぐにこぼれてしまいそうだった。

(*゚∀゚)「……まあ、いいわ。ちょっと来なさいよ」

僕の様子を知ってか知らずか、彼女は僕の腕を強引にわしづかみにした。
僕はなすがままに、アパートの中に引きずり込まれていく。
これから、どんな刑が言い渡され罰せられるのだろうか。

僕は、終焉の到来を覚悟した。

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:20:02.87 ID:Tq7RlNKLO
いいなこれ
支援

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:20:38.49 ID:uWpiABSjO
なんというwktk

55 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:21:06.83 ID:Z+GEqtdc0
アパートの外見にも劣らないほどに、散らかり放題の部屋だった。
まずドアを開ければ、足の踏み場もないほど靴が散乱していた。
そして、その横にはそれらが元々入っていただろう箱が山積みになっている。
箱にはでかでかとブランドのロゴが印刷されており、なんとなく、贅沢なものであることがわかった。

ドアのすぐ右手にはキッチンがあった。
流し場も、玄関同様に山ができていた。
茶碗やコップや皿、橋、フォーク、スプーンがうず高く重なっている。
中にはカップラーメンの容器もごちゃ混ぜになっていて、そこから発せられる生臭さが僕の鼻をつんざいた。

部屋の中もひどいありさまだ。
パンツやブラジャー、靴下などの下着と、ジャケットやスカート、フリルの付いたゴシロリ風のワンピース、
料理用の白衣、中には何の衣類であるかがわからないぼろ切れが区別もなく床を覆っており、
唯一、布団が敷いてある部分だけが申し訳なさそうに空間を取っているだけだ。
一応棚や机なんかの収納家具も置かれてはいたのだが、そこも容量を超えており、
小瓶や口紅や眉墨などの化粧品、その他わけのわからない小物がはみ出しているありさまだった。

ともかく、『世間一般的』な女性の部屋としては、汚い部類にあることはわかった。
女兄弟もいないし、このときまで女性の部屋にも入ったことはなかったので、確信はできなかったが、
少なくともテレビや映画なんかで見る女性の部屋とはかけ離れていたため、僕はそう判断した。

(*゚∀゚)「まあ、狭い部屋かもしれないけど座りなよ」

(;・∀・)「……」

彼女は、床に散らばった衣服を、無理やり部屋の隅のほうに押し込みながら言った。
僕は言われるがままに座る。
というよりも、そうせざるをえない状況だ。
彼女が裁く立場で、僕が罰せられる立場であり、力関係は一目瞭然である。

56 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:22:52.09 ID:Z+GEqtdc0
(*゚∀゚)「でさ、毎日見てたわよね、アタシの部屋。どうして、そんなことしたの?」

(;・∀・)「……知ってたんですか?」

最初に出た言葉はこれだった。

これが僕に残された最後の抵抗だ。
質問を質問で返すことで、結論を後回しにする。
つまりは、断罪のカウントダウンを伸ばす行為。
そもそも、彼女はそれを知っていたからこそ僕を捕まえたわけだし、
本来ならば、僕の方もそんなわかりきったことを無駄に聞かない。

(*゚∀゚)「ええ。そりゃあんなふうに毎日見られてたらイヤでもわかっちゃうわさ。
     毎日、午後6時5分きっかりにね。
     それに平日だけじゃなく、休日までやってくる熱の上げっぷり。呆れちゃうわ」

そして、僕の思惑どおり彼女は答えた。
言うまでもなく、全てが割れていた。
六時五分に時間を合わせてここに通りがかることも、休日にもこのアパートの前に来たことも事実だ。
最初は自然な演技であったはずが、いつのまにか我も忘れて、堂々と彼女に魅入ってしまったのがいけなかった。
僕は、再び後悔した。

(;・∀・)「はい。まさに言う通り。一言一句間違いありません。……ですが、間違えないでほしいです。
     僕が6時5分かっきりにここの前を通るのは、僕が几帳面な人間で、
     決まった時間に帰宅しないと落ち着かないからで、また、休日にもそうしないと落ち着かないからです」

(*゚∀゚)「……ハア?」

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:23:03.04 ID:PTo1fQfV0
支援

58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:23:22.10 ID:W03nhfct0
支援wktk

59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:23:42.50 ID:EDCEfcc00
すまん、俺のようなバカには、難しすぎて理解できん……

60 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:24:30.54 ID:Z+GEqtdc0
我ながら、見えすいた嘘だった。
まず、そんな人間などめったにいない。
そんな習慣が自然にできるのは、仕事や学業などの変則的な事情に影響されないような、
例えば、一日中暇をもてあましているような剛直な老人くらいだ。

だが、僕はあえて言いわけをした。
もしかしたら、万が一つにも、奇跡に近い確率で信じてくれる可能性があると思ったからだ。
それに、信じてくれなくても時間稼ぎにはなる。
もはや僕の言葉に理路整然など存在しなく、ただこの重苦しい空気から逃れるために口八丁を並べるしかできなかった。

(*゚∀゚)「……ふぅん」

彼女は、布団に腰を落ち着け、怪訝そうなまなざしを投げかけつつも、
いかにも納得したかのような生返事をした。
そして、

(*゚∀゚)「まあ、そんなことはどうでもいいわさ。
     覗きに関しては別にとがめるつもりもないし、そもそも、何の被害をうけたわけでもないからねっ」

(;・∀・)「え? じゃあ……」

(*゚∀゚)「――問題は、アンタが何を見ていたかってこと」

彼女は痛んだ髪の毛先を、指でくるくるともてあそびながら、訊いた。
一瞬、僕は罪を許されたことを確信し肩の力を落としかけたが、再び愕然とする。
これまでのことが帳消しになったどころか、もっとも痛いところを突かれたのだ。


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:25:49.38 ID:xywPMX+H0
支援

62 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:26:01.61 ID:Z+GEqtdc0
はっきりいえば、僕は彼女を見ていた。
ただ見るという行為そのものに罪はないのだろうが、どこか僕の中で後ろめたいものがあった。
少なくとも、花を愛でるような感覚で、無邪気な子供を見守るような感覚で見ていたわけではなかった。
その動機として、崇高で、神格視したような、まるで信仰とも呼ぶべき部分からきたものであると同時に、
僕の中の蝿が、悪魔が生贄の血肉を欲するかのような、生々しい本能からきたものでもあるわけだ。

(;・∀・)「それは……あなたの部屋が気になっt」

(*゚∀゚)「嘘よ」

それでも僕はごまかそうとしたが、それは彼女の言葉に一蹴されてしまった。
迷いも、戸惑いもなしに、きっぱりと。
そこまで断言されては、ぐうの音も出ない。

(*゚∀゚)「ああ、それにしても蒸し暑いね」

追い詰められる中でどう返そうかと僕が考えあぐねている中、彼女は唐突に、手をぱたぱたと扇がせはじめた。
僕自身、そのとき汗が止まらなかったのは事実だが、決して暑かったわけではない。
むしろ、軽く鳥肌がたつほどの寒さを覚える外に比べて、
この部屋の中は生々しい暖気が充満しているように感じられ、決して身をやつすほどの暑さではなかった。

だが、

(*゚∀゚)「ああ、暑い暑い。まったくこんなぼろアパート、住むんじゃなかった。
    不動産屋にだまされちゃったのかしらね」

(;・∀・)「ッ!!」

63 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:27:42.98 ID:Z+GEqtdc0
次に彼女は着ていたTシャツの裾を上下にたくしあげるように扇ぎはじめたのだ。
上に腕を振るたびに赤いブラジャー、そして、窮屈そうに押さえつけられた双丘が見える。
あられもない、下品な涼みかただったが、それでも僕の視線は彼女から離れることはなかった。
気がつかぬうちに、僕の口元は笑みを含み、僕の目は恍惚を見せはじめる。

(*゚∀゚)「そうよ。その目」

と、そんな醜い顔をしていた僕に、彼女は言った。

(*゚∀゚)「そのいやらしい目。アタシの体を舐めるようにして眺めていたの。
    アタシの店の客とまさに同じ……いえ、もっと、あなたからは醜いものを感じるわ。
    中学生とは思えない変に大人びたような、大人の汚さを悟りきってそれに甘んじているかのような、そんな雰囲気を」

(;・∀・)「ッ――」

彼女の鋭い言葉に、ここではじめて、はっとした。
ナイフを喉元に突きつけられたような錯覚に陥り、背筋に冷たいものが走った。

(;・∀・)「べ……別に、そんなつもりじゃ……」

僕は目の前が真っ暗になるような感覚に襲われながらもなお、否定した。
彼女の言ったことが、かなり的確であったにもかかわらずだ。
もはや、僕の失態を完全に見抜かれているといってもいい。
しかし、それでもまだ逃げようとしていた。
自分がまっとうな人間であるよう見せかけることに、自分の虚偽の姿にしがみついていたのだ。

だが、彼女は僕の言葉をさえぎり、そのナイフで僕の胸を貫いた。

(*゚∀゚)「認めなさい。アンタは欲望にまみれた、最低の人間」

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:29:02.07 ID:PTo1fQfV0
sien

65 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:29:24.60 ID:Z+GEqtdc0
彼女の唇がにい、と歪んだ。
くすくす、と吐息を漏らした。

そして、さらに奥深く、心臓まで届きそうなほどに刃をくぐらせた。

(*゚∀゚)「かわいいわさ。むきになって、無駄な虚勢をはりたがるところなんか。
     ぜんぶバレバレなのに、おかしいったらありゃしない。
     本当は、アタシのことを見ていたんでしょう?
     胸とか、お尻とか、太ももとか、へんなところを見ていたんでしょ?
     男は見てないふりをしているのかもしれないけど、当の女からしてみれば完全にわかっちゃうのさ」

僕は、思わず視線をそらした。
罵倒と、軽蔑の嵐にさらされているにもかかわらず、僕はおろかにも彼女の言葉そのままに、
胸を、尻を、太ももを、じっと食い入るように見つめずにはいられなかったからだ。

(*゚∀゚)「いやらしいことを想像していたんでしょ?
    そして、自分の部屋なのか、トイレなのか、アナタがどこでしているかはよくわからないけど、
    とにかく、人の目に触れないようなところでアタシを思い浮かべながらマスターベーションするの。
    そうね、アンタくらいの年頃だったら毎日していても……いえ、下手したら一日に何回もそれをするのかもね」

(;・∀・)「……」

(*゚∀゚)「それでも、アンタは満足できない。あくまでそれは妄想であって、
    自分の手で性欲を事務的に処理しているだけの、単なるひとりよがりの行為だから。
    アンタはきっと思ったはずよ。
    私を抱きたい。べちょべちょに、唾液だらけになるまでアタシの体を貪りつくしたい。
    そして、存分に汚しきったあとで、今度はアタシの中にアンタのあそこを入れたくなる」

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:30:31.93 ID:Tq7RlNKLO
支援

67 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:31:09.91 ID:Z+GEqtdc0
彼女はナイフを突き刺すだけでは飽き足らず、深々と押し込まれた刃をかき回し、肉をえぐりはじめた。

(*゚∀゚)「アタシとひとつになったら、それはもう素晴らしいほどの感触がアンタを襲う。
    ちょっとでも腰を動かしたら、すぐに果ててしまいそうな快楽だよ。
    アンタは必死に耐えようとするわさ。だってもったいないもの。だから、最初はゆっくりとアタシを犯す」

筋繊維がぷちぷちと音をたてて、引きちぎられていく。
傷つけられた血管からは、とめどなく血液がこぼれ落ちる。
ナイフの刃が左右に動くたびに傷口が広がり、
僕の胸には黄色い脂肪の層が覗くほどにまで大きな穴ができあがっていた。

(*゚∀゚)「想像の中のアタシは、官能的なあえぎ声をだす。隣の部屋に聞こえるほど大きな声でね。
    それに気をよくしたアンタは、徐々に腰を振るスピードを速める。
    いわゆる征服欲ってやつかしら? あなたの思うがままに犯されるアタシに昂ぶるのさ。
    そうこうしているうちに、絶頂の波が押し寄せてくる。ひとりでするときよりもはるかに高い絶頂。
    それで、とうとうアナタは」

(  ∀ )「――やめてください!!」

僕は、叫んだ。
もはや、耐え切れなかった。
僕がひた隠しにしてきた想いを、一言一句紛うことなくあらわにされることが我慢ならなかった。
……いや、少しばかり違う。
彼女は、僕がわけもわからずに抱いていた願望を具体的に形にしたのだ。

僕は当時、性交とは具体的にどのような行為をするのかを知らなかった。
彼女を想像しながら毎日のようにマスターベーションをしていたのは事実だが、
それがセックスをするための予行であることすら、わからなかった。
だから、どのように妄想すればいいのかもわからず、猿のようにただひたすら快楽に身を溺れさせていただけだ。
なにしろ、僕はポルノビデオや成人雑誌を見ることはおろか、映画のラブシーンさえ見ることができなかったのだから。

68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:31:38.31 ID:xywPMX+H0
支援

69 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:32:51.25 ID:Z+GEqtdc0
(*゚∀゚)「ふふ、赤くなっちゃって。けっこうウブだね。
    最近の子はこういう知識があるのが当たり前だと思ってたけど、アンタはそうじゃなかったみたいだね」

僕の剣幕にたじろぐこともなく、むしろ、そんな僕がほほえましいといわんばかりに、彼女はただ、笑った。

(;・∀・)「……」

抵抗はすべて無駄におわったことを悟り、僕はがっくりと肩を落とした。
もはや、完全に見透かされている。
これ以上嘘で塗り固めたところで、一笑に付されるだけだ。
それに、僕の道化もこの状況では役に立たない。
こういうものは相手が僕の心中を知らないからこそ、効果を発揮するのだ。

抵抗も、嘘言もできない。
どんなに壁をはりめぐらせても彼女はそれをくぐり抜けて、いとも簡単に僕のいちばん奥深くまで入り込んでくる。
だから彼女の前では、僕はもう、ただの赤子と同じだ。
意思を隠し通すことができない、感情を素直に表現することしか能のない、ちっぽけな存在と同等なのだ。

僕の生涯でもっとも重い絶望の時間だった。
地平線の終わりがない砂漠をさまよい続けるような、エッシャーのだまし絵の中に閉じ込められたような、
果てしなく永遠に広がる閉塞に縛り付けられたような、そんな感情にさいなまれた。

僕は三度後悔した。

いや、後悔という言葉では表しきれるものではない。
わけのわからない甘美に酔いしれ、思うがまま欲望に支配されたあげくに、
この世で僕を正常に存在したらめる、生命線とも呼ぶべき『演技』という防衛行動を怠ってしまった結果がこれだ。
まさにこの感情は、自己に対する嫌悪と、否定と、怨憎と呼ぶにふさわしい。
そして、とうとう僕は羞恥のあまり彼女を見ることができず、うつむいてしまった。

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:33:24.90 ID:PTo1fQfV0
支援

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:34:18.73 ID:W03nhfct0
支援

72 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:34:31.24 ID:Z+GEqtdc0
【5.僕は繋がった】

(*゚∀゚)「でもね……そんなアンタ、アタシは嫌いじゃないわ」

(;・∀・)「……えっ?」

だが、彼女は言った。
悪戯めいたような、無邪気な笑気を含めながら。
僕は、一瞬とまどった。
彼女が何を言いたいかがわからなかったからだ。

しかし、彼女は僕に考える暇を与えることはなかった。
僕の鼓膜が彼女の声を感じ取り、その意味を脳が解釈するまでのタイムラグ。
その隙を突くように、彼女の影は動いた。
僕との距離は、わずか二メートル。
四つんばいで僕のほうまで擦り寄ってくると、僕の視界にもぐり込んでくるようにして目と鼻の先にまで顔を近づけ――

(; ∀ )「んっ!!……んんっ!?」

――強引に口付けをした。

僕はこの瞬間、異性の唇の味を知った。
少女漫画で使い古された表現のような、レモンの味ではない。
煙草の匂い。
そして、口紅のべたつき。
これまでの想像とはかけ離れた生々しさだけが、僕を支配する。

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:34:52.22 ID:Tq7RlNKLO
支援

74 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:36:25.97 ID:Z+GEqtdc0
(* ∀ )「ふふ」

それだけには留まらなかった。
彼女が小さくウインクすると同時に、舌が生きもののように僕の口腔をこじ開けて入ってくる。
生暖かい唾液と粘膜が、口内に絡みつく。
とろけるような、という表現がまさにふさわしい。
身も心も、すべてが不可思議な溶融感に包まれる。

あまりの唐突な彼女の行動に、僕は動けずにいた。
ただなすがままに覆いかぶさられ、貪られるばかりだった。
だが、なぜか跳ねのける気にはならなかった。
中学生の僕にも、女性ひとりをどうにかできる力くらいはあったはずだが、あえて彼女の行為に甘んじていたのだ。

(*゚∀゚)「……ハァ」

一分ほど経って、ようやく彼女は僕の唇を離す。
唾液の糸が口から口へと伝いながら、蛍光灯の光を反射させる。
僕は彼女の恍惚とした表情を虚ろに眺めながら、まどろむような余韻に酔いしれるばかりだった。

(*゚∀゚)「急にしおらしくなっちゃったね。さっきまであんなにむきになっていたのに。
    ああ、もしかしてキスもはじめてだったのかしら? なら思い出のファーストキスはアタシがいただいちゃったみたいね。
    ……で、どうだった? アタシのキスの感想は?」

彼女は、気だるそうな顔をして僕に訊いた。

(;・∀・)「……すごく頭がぼうっとして、それでいて……だめだ、上手くいえないや」

僕は、口をぱくぱくと魚のように開き、空言のようにつぶやくだけだった。
思考が感覚に追いついていない状態で問いに答えようとしても、たどたどしい言葉しか出てこない。

75 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:38:07.04 ID:Z+GEqtdc0
(*゚∀゚)「ええ……クセになりそうでしょ?」

それでも彼女は、満足げに僕に微笑みかけた。
語らずとも、僕の情けない状態をみれば一目瞭然なのだろう。
とりあえず、それだけで彼女はすべてを納得したようだ。

(*゚∀゚)「でも、こんなものじゃないよ。これよりも、もっと気持ちいいことがあるわさ。
    どう? 興味ある?」

(*・∀・)「……」

そして、ふふっと、含み笑いをした後で、彼女はさらに訊いてきた。
この先の段階に移ることの確認だった。
僕は、無言でうなずく。

僕にはわかっていた。
具体的には知りようもなかったが、この快美に続きがあることを本能で感じとっていた。
その証拠に、血液が高沸するかのような昂ぶりが一向に静まる気配がなく、
そればかりか、さらなる彼女への渇望だけが僕を支配していたのだ。

(*゚∀゚)「じゃあ、こういうのはどうだい?」

彼女はそのまま上から体を重ね、僕の股間をまさぐった。
つう、と人差し指でズボンのファスナーのあたりを往復してなぞるような、そんな優しい触れかただった。

(*・∀・)「ああっ」

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:38:11.72 ID:7slOv5fm0
エロ ヾ(*´∀`*)ノ キャッキャ

77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:39:40.58 ID:HDUJntWBO
1時間たって来てみたら……わっふるわっふる

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:39:42.41 ID:xywPMX+H0
エロスが・・・

79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:39:43.67 ID:lDRypaQUO
WaffleWaffle

80 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:39:44.36 ID:Z+GEqtdc0
それだけで僕は顔を歪めて、女の子のような声をあげた。
思わず尻を引っ込めて、腰をよじってしまったほどだ。

だが、彼女はやめるどころか、さらに力を込めはじめた。
次第に、僕の体内で膨れあがった熱が股間に集中する。
いや、実際に熱を帯びた血液が、爆発的に海綿体へと流れ込んできたのだ。

(*゚∀゚)「まだ脱いでもいないのに、反応しているわさ。
    まだそこまで大きくないみたいだけど、すごく硬い。さすが若いコは違うね」

気づけば、僕の口は半開きになっていた。
何しろ、明らかに自分で触るときよりも段違いに敏感になっている。
これほどかと思うほどに、硬く、全体が張りつめている。
このまま陰茎の表皮が裂けて中の血肉がはじけ飛んでしまうのではないか、という錯覚に支配されるほどの滾りだ。

(*゚∀゚)「ふふ。まさに飛び出したくてたまらない、って感じかい? かわいそうだから中から開放してあげる」

彼女は愛撫の動きを止めると、今度はベルトに手をかけて僕のズボンを器用に脱がせ始める。
僕が思っている以上に経験があるのだろうか、その手つきはどこか慣れたように感じられた。

(*゚∀゚)「ふうん、そこそこの大きさってところかな? あ、別に落ち込まなくても大丈夫。
    まあ、でも皮はちゃんと剥けてるようだし、これから大きく成長するだろうから」

あっというまに、僕のいきり立った陰茎はあらわになった。
彼女は目を細めながら、冷静に僕のそれを批評する。
でも、そんなことは別に気にならなかった。
それよりも、ただ僕は欲していた。
早く、僕を刺激してほしかった。

81 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:41:19.58 ID:Z+GEqtdc0
(*゚∀゚)「よほど、待ちどおしいみたいだね。じゃあ、こうしてあげる」

彼女は、僕の股間のほうへ顔をずらし、そっと口付けをし、それからあたたかく包み込み、舌をはわせた。
まさに珠玉の寵愛とも呼ぶべき彼女の行為に、僕はため息を漏らす。
自分のざらついた手でするような、味気のない刺激とはどこか違うのだ。
下手をすれば意識ごと彼女に持っていかれてしまいかねない、それほどまでに快美な悦楽に染められていた。

そして、襲いくる絶頂の波。
このまま、果ててしまいたい。
出してしまいたい。
あと十秒もすれば、僕の脳内は真っ白になる。

(*゚∀゚)「ん……んんっ。
    ……はあ。じゃあ、おしまい」

(*・∀・)「……えっ?」
 
(*゚∀゚)「気持ちよかったでしょ? 男のひとはたいていこれが好きなのさ。でも、まだだよ。まだいっちゃだめ」

だが、僕の期待を裏切るように彼女は口淫をやめた。
それどころか、ウインクをしながら意地悪を言う始末だ。
僕はあまりの出来事にあっけにとられながらも、恨めしげな眼差しで彼女をにらんだ。

(*゚∀゚)「ふふ、怒らないで。こんどは、こっちでしてあげるからさっ」

それでも彼女は悪びれることもなく不敵に笑うと、
今度はおもむろにTシャツを脱ぎだして、横手の洋服の山へと放り投げた。
あらわになったのは、折れてしまいそうなほどに華奢な胴体と、赤いブラジャーに覆われた肉叢の双丘。
先ほどの失望は嘘のようにかき消され、僕は思わず彼女の胸に釘付けになる。


82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:41:19.84 ID:MOFTQVIB0
εミ(っ>_<)っ

83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:42:23.92 ID:xywPMX+H0
ktkt

84 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:42:51.16 ID:Z+GEqtdc0
そして、彼女が後ろ手で起用にホックを外すと同時に、
ブラジャーがするりとはだけて、押し込められていた二つの乳房が一気にこぼれ落ちた。
僕は、ゴクリと唾をのむ。
とても小さな音だったが、この隔離された空間の静寂の中では彼女にまで響くほどに大きく感じられた。

(*゚∀゚)「胸でされるのも、男の人は好きみたいらしいね。これがけっこう病み付きになるわさ」

僕は、恥じることもせずに彼女の胸を凝視していた。
具体的なカップ数がどれほどか当時はわからなかったが、とにかく僕の欲望を満たすには十分な大きさだ。

(*゚∀゚)「とりあえず最初に、触ってみる?」

(*・∀・)「……」

彼女はまぶたを薄く閉じた表情で、挑発的に言った。
僕は、無言でうなずく。

もはや、理性は壊れつつあった。
引き寄せられる磁石のように、ひとりでに彼女の身体へといざなわれる。
そして再び、互いの息が触れ合う距離にまで近づくと、僕は震える手のひらで彼女の乳房にそっと触れた。
五本の指に収まりきらないほどに大きい肉の球からは、思った以上の反発と弾力が、しびれるほどの温もりが僕にかえってくる。
そんな、ずっしりと指に圧しかかるような重圧を感じるだけで、僕は果てそうになった。

こんな感覚を、僕のものが受け止めるのか。
僕の期待は高まる。
犯して欲しい。
この凝縮された肉の谷間で埋めつくして欲しい。
僕は、心の奥底から懇願した。

85 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:44:32.98 ID:Z+GEqtdc0
(*゚∀゚)「ね、やわらかいでしょ? アタシの胸でしてほしい?」

(*・∀・)「……はい」

僕は餌をねだる犬のように、瞳をうるませて答えた。
彼女はそれを聞いて、鼻で小さく笑った。

(*゚∀゚)「じゃあ、軽くうつぶせの姿勢になって」

僕は言われるがままに、軽く上体を起こした姿勢で寝転がる。
すると彼女は僕の脚の上にまたがって屈み、その豊かな胸でゆっくりと僕の股間を押しつぶした。
そして、いきり立った竿を両房の隙間へと滑り込ませる。
彼女の火照った体温が、亀頭を刺激する。
僕は思わず、うめくように声を漏らした。

(*゚∀゚)「気に入ってもらえたみたいだね。もっとも、ある程度大きくないとできないけど」

彼女は上目遣いで僕を見た。
たまらない角度だ。
奉仕という行為をあからさまに表現するような彼女の姿は、もとより持ち合わせていた美艶さをさらに増幅させる。

(*゚∀゚)「滑りをよくしないとね」

彼女はくちゅくちゅと口の中で唾液を溜め、それを一気に吐き出して胸の谷間へと流し込む。
客観的に見れば、この行為はとても下品なものとしか映らないだろうが、
催眠状態にかかったようなこのときの僕には、ある種の抵抗というものが全く感じられなかった。
むしろ、彼女の体温と対極的な、ひやりとした粘液の感触に心地よさを覚えていた。

86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:44:40.67 ID:Tq7RlNKLO
支援

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:45:15.36 ID:KWX1orMD0
やっと追いついた
エロwktk支援

88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:45:17.63 ID:W03nhfct0
……支援

89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:45:49.19 ID:PTo1fQfV0
F5F5F5F5

90 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:46:11.12 ID:Z+GEqtdc0
(*゚∀゚)「じゃあ、動かすよ」

彼女は胸の両端に手を押し当てて、僕の陰茎を圧迫する。
硬くとがった乳首が、僕の下腹部をこする。
彼女の心拍と、僕の脈が絡み合う。
二つの脈動と、彼女の胸の揺らぎが連動して、それがまた僕を快楽へと突き落とす。

口淫とはまた違った刺激だった。
口淫が一点を集中的に攻める愛撫のしかたならば、この紅葉合わせは陰茎全体を一斉に攻める愛撫だ。
ちなみに後に聞いた話ではあるが、この紅葉合わせ、
すなわちパイズリとは、十八世紀ごろにルイ十五世の愛人ポンパドゥール夫人が、
彼のロリータ・コンプレックスの性癖を解消するために編み出した技巧であるとか言われているが、それはどうでもいい。

(*・∀・)「……ああ、ダメです。僕もう……ああっ」

そうこうしているうちに、僕は再び果てそうになる。
一度絶頂を迎えようとしたところを止められて、先ほどよりも敏感になっていたのだ。

(*//∀/)「ハアッ……ハアッ……今度は出していいよ。その代わりアンタのを私に浴びせてちょうだい。
      いっぱい……アタシを汚して!!」

気がつけば、彼女の表情も紅潮を見せていた。
先ほどの高圧的な態度とは裏腹に、ただ隷辱にまみれた、淫靡な雰囲気に満ちていた。
僕は、その彼女の豹変ぶりに思わず興奮がこみ上がってる。
拒む理由はもはや、なかった。
僕は、ほとばしる熱い体液を開放する――

91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:46:54.78 ID:0EkRvqxpO
( ゚∀゚)o彡゜おっぱい!おっぱい!

92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:47:17.25 ID:HDUJntWBO
支援支援

93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:47:17.98 ID:S25Iblo7O
支援支援

94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:47:41.55 ID:PTo1fQfV0
支援支援

95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:47:45.99 ID:xywPMX+H0
支援

96 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:47:50.91 ID:Z+GEqtdc0
(*・∀・)「ハッ……ハアッ……ハアッ……」

彼女の髪の束から、白濁した粘液が雫となってこぼれ落ちる。
いや、髪の毛だけではなかった。
額も頬も唇も、すべて僕の精液で塗り固められていた。
なんと卑猥な、それでいて神秘的な光景なのだろう。
僕の中の醜悪と呼ぶべき存在が形となって吐き出されたものを、彼女はその一身に甘んじたのである。
それどころか、排出を終えたばかりで、脈を打つ僕の陰茎をもの惜しげになめ尽くす始末だ。

(*//∀/)「ふふ、いっぱい出たわさ。ひとりでするよりも断然こっちのほうがいいでしょ?」

そして、こびりついた精液と唾液が混ざった液体を飲み込み、汚れた顔をティッシュでふき取ったあとで、彼女は訊いてきた。

(*・∀・)「……」

僕はまた、うなずいた。
快感に身も心も支配され、ほかに何も言う余裕がなかったせいもあったが、
それ以上に、更なる悦楽の波が押し寄せてくることを肌で感じとっていたせいでもあった。
証拠に、僕のものは静まるどころか、さらに硬さを増して腫れあがっている始末だ。
一方、彼女の方もまだ足りない様子で、一向にそそり立った状態から戻らない僕の陰茎を物欲しそうに眺めながら、
ふふ、と笑って次の誘惑を僕に持ちかけた。

(*//∀/)「やっぱりまだ若いね。やっぱり一回イッたら冷めちゃうオッサンたちと比べても、全然勢いがちがうもんね。
      ねえ、ここからさらに続きがあるんだけど……やってみたいと思わない?」

まだ、続きがあるのか。
僕は、背筋にぞくそくとするような震えが走るのがわかった。
恐怖のせいではない。
期待と、感嘆と、歓喜から来た身震いだった。

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:47:51.63 ID:KWX1orMD0
支援支援

98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:49:10.29 ID:PTo1fQfV0
支援支援

99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:49:17.42 ID:W03nhfct0
( ゚∀゚)

100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:49:27.17 ID:S25Iblo7O
支援支援

101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:49:29.10 ID:0EkRvqxpO
支援

102 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:49:54.70 ID:Z+GEqtdc0
僕は、相変わらず無言だった。
だが、彼女の問いに対してはうなずくことはなかった。
代わりに、抱擁と口付けで応えた。
彼女の華奢ながらも豊満な身体を押し倒した。
この唐突の行動は、僕がここに来てはじめて見せた積極性の表れであった。

彼女は一瞬とまどった表情を浮かべながら、ひゃ、と小さく鳴いて簡単に崩れ落ちる。
しかし、僕は抵抗する暇は与えなかった。
僕はそのまま唇を、鼻を、耳を、まぶたを、頬を、髪を除く彼女の首から上を、なめつくした。
そして、そのまま身体のラインを下に向かいながらなぞるように、乳房、乳首、腹部、臍部と舌を這わせ、しゃぶりつくした。

化粧と、汗と、精液が交じり合った複雑な味が僕の口に広がる。
汚いなどとは微塵も思わなかった。
捕らえた獲物の肉を食いちぎる肉食動物のように、ひたすら彼女という雌を堪能したかったのだ。

(*・∀・)「ハアッ……ハアッ……」

ひとしきり彼女を味わい終えると、僕は顔を上げて、そのまま馬乗りの体勢で、彼女の手首を両腕で押さえつけた。
そして、冷淡をひどく含んだようなまなざしで、彼女を見下ろした。

(*//∀/)「ああ、びっくりした。子供だと思って油断してたけど、もう十分オスとしての自覚はあったわけだね。
      ……ふふふ、でもこのあとはどうするのさ? 知らないんでしょ?
      気持ちが抑えきれないのはわかるけど、あせっちゃだめ。これが普通の女のコだったら逃げ出しているところだよ」

だが、彼女のほうも一向に怯える様子はなく、むしろその表情はいとおしいと言わんばかりだ。
この状況で自然に笑いが出るほどの彼女の余裕ぶりは、僕を少しだけ冷静な状態へと戻した。
いや、冷静というよりも、困惑のほうが大きいといってもいい。


103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:50:25.62 ID:PTo1fQfV0
支援支援支援支援支援

104 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:50:41.61 ID:Z+GEqtdc0
(;・∀・)「……ごめんなさい」

僕は気まずさのあまり、思わず目をそらした。
衝動のあまりに取るような、盲目の行動というのは僕がもっとも禁じていたことである。
先ほども後悔を覚えたにもかかわらず、欲望に駆られてまた同じことをやってしまったわけだ。

だが、彼女は言った。

(*//∀/)「でも、そんな荒々しいところは好き。
      こんな興奮なんか、ほかの男のひととするときでもめったにないよ。
      見て、鳥肌が立ってる。ぞくぞくしている。これも全部、アンタのおかげなのよ。
      でも、残念ながらアナタはまだ未熟で、女の悦ばせかたを……いえ、その行為の知識すら欠けている。
      だから、教えてあげる。これはアタシにとっても、アンタにとってもいいことなのさ」

彼女は、僕の背中に腕をまわす。
かさかさと乾燥した手のひらだが、暖かい。

(*//∀/)「いい? これからアンタとアタシはひとつになる。
      つまり、言葉どおり、身体の一部同士をつなげる。
      ほかの男のひとがどうかは知らないけど、女を知らないアナタにとってはいちばん気持ちいいものになるはず。
      ……もう一度訊くよ。やってみたい?」

(*・∀・)「……はい」

僕は、まっすぐに彼女の目を見て、答えた。
もはや、断る理由などありはしない。
このまま、彼女の言うとおりに身を委ね、快楽に浸ることだけを望んでいた。

105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:51:32.37 ID:0EkRvqxpO
( ゚∀゚)o彡゜支援!支援!

106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:51:42.19 ID:KWX1orMD0
ワッフルワッフルワッフルワッフル

107 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:52:04.32 ID:Z+GEqtdc0
(*゚∀゚)「じゃあ、キスしてちょうだい。それがコトの前にする女のコへの礼儀ってもんだよ」

(*・∀・)「? ……どこに?」

(*//∀/)「馬鹿、唇だよ」

そう答えた彼女の表情は、どこか呆れたとも、可笑しいとも言っているように見えた。

僕は言うとおりに身を屈めて、顔を近づける。
舌を少しだけ突き出し、彼女の上唇から下唇にかけて円を描くようになめる。
そして、目を閉じ、そっと口付けをした。
その瞬間、彼女の腕の締め付けがぐっと強くなる。
アザが残ってしまうのではないかと心配してしまいそうなほどに強い抱擁だった。

でも僕は、それすらも心地よく感じていた。

(*//∀/)「……ふう。やればできるじゃない。三回目のキスにしては上出来さ。
      アンタ、女泣かせの才能があるよ」

顔を離したあと、彼女は僕の頭を撫でながら言った。
才能云々に関しては当時の僕には全く理解できなかったが、今振り返ってみればそれもあながち間違いではない。
それもそのはずで、女性の愛でかたを一から十まで教えてくれたのは彼女であり、
そんな性の宣教師ともいうべき者からお墨付きをもらったわけなのだから、当然のことなのだろう。

(*゚∀゚)「じゃあ、腰を浮かせてちょうだい。お尻から上に乗っかられたら、できることもできないよ」

108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:52:21.43 ID:W03nhfct0
((((( ゚∀゚)……

109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:53:03.07 ID:PTo1fQfV0
支援!! 支援!!!

110 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:53:28.84 ID:Z+GEqtdc0
僕は言うとおりに膝を地面について、腰を軽く浮かせた。
すると、彼女は僕の股間に向かって手を伸ばし、竿の部分を軽く握り締める。

(*゚∀゚)「じゃあ案内してあげる。ここに入れるんだよ。
     ……まあ、ちがう穴に入れたがるひともいるけど、正しくはここ」

そして、ゆっくりと彼女の陰部にむかって僕の亀頭を導くと、軽く襞にあてがらせた。
皮膚の外側が、じわりと生暖かく湿っているのがわかる。
これが、彼女の入り口。
触れるだけで、身悶えをおこすほどの期待感が僕を襲う。

(*゚∀゚)「でも、すぐに入れちゃだめ。それだと女のコはさめちゃう。
     じっくりと、存分に焦らしてから、入れてあげるのがいいんだよっ」

だが、彼女は簡単には入れさせてくれなかった。
じっくりと、僕のものの感触を味わうように、肛門から陰唇にかけて上下に擦りつけはじめたのだ。
先走った僕の淫水と彼女からにじみ出ている愛液が、交じり合い、互いの性器に塗りたくられてゆく。

(*゚∀゚)「で、ここがクリトリス。一般的には女のコがいちばん感じやすいところ。
    本当は、最初にここを愛撫してあげて濡らしておかなきゃいけないんだけど……不思議だね、今日は自然に濡れてる。
    もちろん、これまでにそんなことはほとんどなかった。これもアンタが相手だからかしら?」

僕の亀頭が、彼女の陰核に口付けをする。
いわば互いの一番敏感な部分をあてがうような行為に、僕の身体も次第に上気しはじめる。
彼女もたまらないとばかりに、さらに腕に力を込め僕のものを強引に押しあてる。
僕の先端はそれにつられて、熱くなる。
次第に高まる二人の呼気が、部屋に充満する。

111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:54:25.50 ID:xywPMX+H0
支援支援

112 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:54:53.53 ID:Z+GEqtdc0
(*//∀/)「……ああっ、いいわ。やっぱりアンタのって硬い。このままイキたいくらいいいわ」

(*・∀・)「ハアッ……ハアッ……入れて、いいですか?」

(*//∀/)「ッ……いいわ……もう準備ができているから、入ってきてちょうだい!!」

迷うことはなかった。

彼女の手が僕の陰茎を導き、膣口へと滑りこませる。
ほんの少しの、亀頭が肉門に引っかかるような、抵抗。
そして、そのあとには入ってきたものすべてを飲み込むような肉壁の重圧が僕に迫ってくる。
脳が、心が、身体が、溶かされる感覚だ。
彼女の内からあふれ出てくる体温と粘液の激流は、信じられないほどの速度で僕を消化する。

(*・∀・)「くっ……」

僕は、反射的にくぐもった声をあげる。
入れただけで、もう果てそうだ。
だが、歯を必死に食いしばり、僕の内なるものを強引に押さえ込む。
まだだ。
まだ、出してはいけない。

(*//∀/)「あっ……すごく、いいよっ。
      ……ねえ、見て。アタシたち繋がっている。いやらしい姿でひとつになっている。気持ちいいでしょ?
      でも、ここでも焦りは禁物よ。最初はゆっくりと動かすのさ。この甘い時間を存分に愉しむように、ね。
      で、徐々に二人が昂ぶりはじめたら、思いのままに激しく暴れさせていいよっ」

彼女は眉を寄せ、苦悶の表情を浮かべながらも、僕をなだめた。
僕は彼女に促されるままに、ゆっくりと腰を動かす。

113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:54:54.06 ID:0EkRvqxpO
( ゚∀゚)o彡゜支援!支援!

114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:54:56.55 ID:KWX1orMD0
射精支援

115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:55:02.17 ID:PTo1fQfV0
支援支援支援!!!

116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:55:13.00 ID:W03nhfct0
( ゚∀゚)( ゚∀゚)( ゚∀゚)( ゚∀゚)( ゚∀゚)( ゚∀゚)o彡

117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:55:29.98 ID:ijGY0gFq0
エロだからって支援の数増えすぎだろ。

支援支援背印せいn支援背印!!!!!111111111111

118 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:55:49.82 ID:Z+GEqtdc0
(*//∀/)「あっ、いいわ……すごくいい。その調子でゆっくりと動か……くっ……ああっ!!」

(*・∀・)「ハアッ……ハアッ」

汗が、額から頬に伝う。
熱い。
熱いのだ。
しかしそれは、湿気のこもりきったこの部屋の気温のせいだけではなく、
彼女の官能的な色気が僕の熱情を促しているせいでもあるだろう。

僕は、上から彼女を眺めた。
腰を一つ前に突き出すたびに、彼女は悩ましげに呻いている。
ただゆっくりと腰を振っているだけなのに、これほどまでに反応がかえってくることに驚いた。
僕は、次第に好奇心にかられ、腰を振る角度と速度を変えてみた。
上に、下に。激しく、優しく。
膣内をあますところなく刺激するように。

彼女の表情は、そのたびに色の変化を見せる。
時に歓喜に打ち震え、時に苦悩に犯され、彼女は艶やかな色に染まってゆく。

ああ、これで僕は彼女とひとつになれたのだ。
この果てなき中毒性を有する、この性交という行為。
なんと、すばらしきことか。
僕が直感的に待ち望んでいたこととは、これだったのだ。
決して、孤独のマスターベーションでは得られなかった充足感。

気が狂いそうなほどの快楽だ。
いや、もはや僕は狂人だ。
獣だ。
生殖行為に支配されただけの、猿と同等だ。

119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:55:51.07 ID:MOFTQVIB0
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 エロ!エロ!
 ⊂彡

120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:55:51.37 ID:PTo1fQfV0
支援!!!!!!

121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:56:18.80 ID:0EkRvqxpO
支援

122 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:56:34.62 ID:Z+GEqtdc0
だが、それがいい。
他に望むべきことは、何もない。
この甘い時間さえ享受できれば、それでいいのだ。

(  ∀ )「ク……ああっ!!」

(*//∀/)「アッ……アアッ!! もっとよ!! もっと激しく!! もっと激しくアタシを犯して!!」

気がつけば、僕たちは身体を強く揺さぶりながら快楽に酔いしれていた。
床が、壁が、天井が、古ぼけたアパート全体が軋むほどに激しい交わりだった。
僕たちの情事はほかの部屋の住人たちにも筒抜けかもしれなかったが、もうそんなことは関係ない。
ただ、互いの肉を貪りあう動物になってしまったのだから。

僕は、彼女の上体に体重を預けるように抱きしめた。
彼女もそれを受け入れるように、僕の背中に腕を回して力を込める。
彼女のたわわな乳房が、ぎゅっと僕の胸に押し付けられる。

(  ∀ )「ッ!! ……僕、もうっ!! ……だめだっ!! 我慢できない!!」

(*//∀/)「はあんっ!! ……出して!! 中にこのまま流しこんで!! アタシももう限界ッ!!」

しかし腰の動きだけは止まらなかった。
もはや二人の間にはテクニックだとか駆け引きだとか、そんな野暮なものはない。
絶頂に向かって、ただ互いを刺激しあうだけだ。

そして、僕たちは悦楽の波に飲み込まれる。
締め付けが強くなり、きゅんと収縮する。
いままでで一番強い衝撃だ。
僕のほうにも限界が訪れる。
ただ僕は、思いのまま、彼女の中に欲望を流し込む――

123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:57:29.14 ID:PTo1fQfV0
しええええええええええんんんn

124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:57:49.61 ID:KWX1orMD0
しえんしえんしえにsにえにsねしえん!!!!

125 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:57:52.40 ID:Z+GEqtdc0
僕たちは事を終えてから、数十分の――否、それは一万年と二千年前もの太古から現在までの恒久とも、
永遠とも呼べるほどに長く感じられた――間、ずっとそのままの姿勢でいた。
結合部の隙間から、ひやりとした二人の体液がこぼれ落ちているのがわかった。
でも、僕と彼女もそれを拭き取ろうともせず、ただ互いの体温を感じるように抱き合うのみだ。
僕たちに最後に残ったものといえば、疲労と充足に満ちた不思議な脱力感だけだった。

(*゚∀゚)「やっとおさまってきたみたいだね。今度は小さくなっているのがわかるよ」

(;・∀・)「もう……やめてください」

彼女は僕の反応を感じ取って、意地悪げに微笑む。
僕はまた、恥ずかしさのあまり目をそらす。

そこでようやく僕たちはおのずと身体を引き剥がし、布団の上に並んで横たわった。
それでも、視線だけは離すことはしなかった。
欲望がすっかり消え去ったあとでも、彼女を見ていたかったのだ。

ふと、アパートの前を一台のトラックが通り過ぎ、ヘッドライトの光と小さな振動が室内に一瞬だけよぎった。
天井にぶらさがった蛍光灯は揺れ、横で寝ていた彼女に落ちた光が小刻みに震える。
そして、その光の動きに連動して、大きくふくらんだ乳房に、呼吸にあわせて揺れる腹部、
まだ粘液がまとわりついている陰毛がつくり出す影は、まるで微波に揺れる水面のようにそのすがたを変えていた。

(*゚∀゚)「で、どうだった? はじめての感想は?」

僕の視線に気づいたのか、彼女は僕の手をそっと握りしめ、こちらに向きなおして訊いてきた。
僕は、今度は視線をそらさなかった。

126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:58:31.26 ID:1DdDpvcC0
しえんしえんえlびぼvんqりうgfqねflき

127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:58:34.60 ID:0EkRvqxpO
( ゚∀゚)o彡゜支援!支援!

128 : ◆foDumesmYQ :2007/10/16(火) 23:58:57.57 ID:Z+GEqtdc0
(*・∀・)「すごく……気持ちいいです」

僕は彼女の身体をぼんやりと眺めながら、そう答えた。

だが、同時にもどかしさを覚えていた。
少なくとも、この感覚を『気持ちいい』などという陳腐な表現で片付けるべきではないのだ。

この行為は僕にとって単なる射精ではない。
いわば、僕のという本質の開放。
悪意のカタルシスだ。
蝿の卵を、彼女に植え付けたのだ。
悶々と僕の中で這いずり蠢きまわる悪魔とも呼ぶべき黒い感情を、彼女に分け与えたのだ。
心からそれをありがたがり、受け入れる彼女の本質は悪であることに相違がない。

しかし、ここでひとつの矛盾にたどり着く。
周知のとおり、幼いころから僕は自分の中の悪という存在に怯え続けてきた。
そして、それを他者が持っているとなればなおさら恐れるべきことであり、もちろん、彼女も例外ではないはずだ。

僕は彼女の内なる悪に怯えることはなかった。
なぜならば僕が悪意の『共有』のしかた、すなわち性交を覚えたからだ。
性交とは、自分の悪を心の奥底から開放し、なお且つそれを交わった相手と分かち合う行為。
交わった相手が自分と同質の悪であると理解する行為。
そして、相手の悪が僕を傷つけるものではないと悟ったそのとき、彼女に対する恐怖は薄れていったわけだ。

いや、彼女だけではない。
僕は同時に、他の人間に対する恐怖も緩衝できたのだ。

129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:58:58.58 ID:W03nhfct0
( ゚∀゚)o彡支援支援

130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:59:38.83 ID:PTo1fQfV0
支援!!!!!

131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/16(火) 23:59:53.14 ID:0EkRvqxpO
アクエリwwwwww

132 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:00:26.30 ID:J+Hjp2mF0
それは、人間、いや生物全体における存在意義の源流をたどってみればわかることだろう。

生物と名の付くものであれば、原核生物、原生生物、植物、菌、動物、
(ウイルスやリケッチアなどの分類は生物としての定義があいまいだが、)
ともかく、彼らすべてに種の保存本能とは切っても切り離せない関係にある。
ゾウリムシは分裂して増殖するし、雑草は受粉して種を作るし、あのいまいましいゴキブリですらも交尾をして卵を産む。
そして彼らよりもはるかに複雑な知能を持ち得た人間も同様に、その本能を持っている。

例えば、僕の両親。
あれほど厳格な彼らですらも、悪だ。
なぜならば、父親と母親の性交によって生まれた子供が僕であるから。
つまり僕という存在が、彼らが僕と同じ欲望に支配された結果であり証拠でもあるというわけだ。
その他の人間も同様に、人間という種である以上はこの本能から逃れられない。

ちなみに性欲が存在しないような非性愛者もこの世には一部存在するわけだが、
それはあくまで(受精を経て胎児へと変化した状態以降の)後天的な影響や塩基配列の異変によってそうなったのであって、
存在以前の時期に、先天的に発生したものではないと僕は考える。

僕はこれらのことからすべての人間が悪であると認識したわけだ。
まあ、この結論に達するまでに、荀子の性悪説やキリスト教の原罪などの思想に影響を受けたということもあるのだが。
(注意すべき点として、両者の思想は善悪の解釈において同等同質のものではない。)
そうなれば、僕の内なる悪という存在に怯える必要がなくなる。

また、そもそも僕は無知ゆえにこの悪という存在を混同しつづけていたようだ。
虚偽と性欲とをひとくくりの悪として考えていたのだ。
悪の正体がわかってしまえば、それほど恐れることはなくなった。

虚偽が虚偽であることがわからなければ決してとがめられることはないし、性欲については性交の相手さえいれば解消できる。
こうして、僕は快く自分の悪を受け入れ、不完全な僕という人格を完成させることができた。

133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:01:47.75 ID:iESbjqwY0
支援支援支援!!!

134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:02:09.97 ID:bKqaRTH90
支援

135 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:02:14.80 ID:J+Hjp2mF0
【6.僕は出会った】
童貞を失った日から現在に至るまでの僕の人生は、面白がって話すようなことではない。

まずは名も知らぬ彼女についてだが、あの日から僕たちは逢瀬を重ね続けた。
おかげで、こと性交においての技巧だけが上達したものだ。

しかしながら、僕たちはそれ以上の関係にはならなかった。
あの古ぼけたアパートの一室で、ただ交わるだけの関係だ。
僕の家庭や学校生活については何一つ語ることはなかったし、彼女について何も聞くことはしなかった。
唯一、部屋の床に転がっていた名刺や手紙から、彼女の職業についてのおおよその見当がつき、
おそらく僕の想像していたような娼婦まがいの仕事と似たようなものだ、と確信することができた。
振り返ってみれば謎が多い女性だったが、深くは知りたいとは思わなかったし、今でもそれは同じだ。
つまり、僕の彼女に対する興味とは、純粋に性的な面でのことであった。

そして、中学卒業を間近に控えた冬のある日、彼女は突如姿を消した。
いつものように放課後彼女の部屋を訪ねたところ、もぬけの殻となっていたのだ。
一言も告げることのない、手紙すらも残すことのない唐突の別れだった。

僕はその後、私立の進学校に特待生として入学した。
ひとつは家庭の経済的な都合で学費がかからないところを選ばなければいけなかったこともあるが、
もうひとつに素行の悪い不良との付き合いを避けたかったこともある。
どうしてもああいう人種に対しては、僕の道化も効果が薄いのだ。
少しでも目が合えば手を出すような彼らとは、話し合う余地すらもないのだから。

高校生活はまさに無難なものだった。
読書部だとかいう文化部に入り、成績も中の上ほどの順位をキープする。
しかしながら、きちんとクラスの生徒とはそれなりに交流する。

136 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:03:55.11 ID:J+Hjp2mF0
そして、はじめての恋人もできた。

同じ部の、まっすぐ伸ばされた長い黒髪に眼鏡をかけた、まさに目立たないポジションの子だ。
ルックスは普通で特に可愛いわけでも、醜いわけでもない。
別に僕自身恋人としての関係を望んではいなかったのだが、その当時の高校生独特の風潮、
つまり、よほどの変人醜人でなければ彼氏彼女がいることが当たり前だという考え方が皆に広まっていた上に、
彼女がそういう関係にとても乗り気であったために、不本意ながらもそうしたまでだ。

彼女の心を射止めることは簡単だった。
彼女が愛読していたドストエフスキーの『罪と罰』で描かれたような人間の罪について、恥じげもなく熱く語り合ったり、
シャークスピアの『ハムレット』のような悲劇の恋に憧憬を抱いていることに、心からの同意を表したりと、
いわば彼女の考え方に全面的に肯定するようなふりをしただけにすぎない。

しかし、僕として恋人が彼女であったことは都合がよかった。
まずは、万一何かのきっかけで不仲になったところで影響が少ない。
仮に彼女がクラスの人気者であるとしたら、関係に亀裂が生じたときに僕に対する皆の非難が轟々となることは間違いないが、
あいにく彼女はそんなに友人が多くなかったため、そのような余計な問題を抱え込むおそれはまずない。

次に、彼女がひどい妄想家であったことだ。
これは、体の関係を持つことにかなり有効である。
彼女の性に対する知識や印象というものは、小説やドラマを通して受けただけのものだけであり、
それでいてひどく歪曲され美化されたものであった。
つまり、彼女が望むような美的な展開であれば、彼女は簡単に操を許すというわけだ。

結果、僕は彼女の処女を奪うことになる。
場所は放課後の二人きりの図書室。
僕はうんざりするほどの甘い言葉をささやき、彼女をその気にさせて交わることとなったのだ。


137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:04:16.26 ID:kupa4PoFO
ふぅ支援

138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:04:47.76 ID:iESbjqwY0
支援

139 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:04:56.44 ID:J+Hjp2mF0
その後、高校を卒業した僕は彼女との関係を断ち切るように、地元を離れ、単身、都会の国立大学に入学する。

余談だが、なぜ彼女と別れたかについてを一言でいえば、疲れたからだ。
彼女は重度のロマンチストであった。
彼女は僕に白馬の王子様としての理想を重ね、またそれをしきりに望んでいた。
はじめは他愛のない要望であったのだが、関係が深まるにつれてそれがエスカレートしはじめたのだ。
別れ話を持ちかけようとすればひどく取り乱して泣きじゃくり、しまいに鉈を持ち出すような、
下手をすれば首を刈られかねない燦々たる修羅場が予想できたために、僕は逃亡という選択をしたわけである。

とにかく、大学生となった僕は相変わらずつつましく生活していた。
家出した高校生を僕のアパートで飼ったり、バイト先の人妻と昼下がりの情事を繰り返したりしていたが、
特に大した出来事もなく平穏な日々の繰り返しだった。

そして、大学卒業後は某大手食品メーカーに勤めることになった。
営業職として地方支店への転勤を重ねつつ、出世コースではないにしろそれなりの待遇と評価を得てキャリアを積んだ。
二十代後半になって、結婚もした。
大人しく控えめで古風な、丸顔が特徴的な女性だ。

出会いは、上司の紹介がきっかけだ。
その発端は、いい年にもなって浮いた話もないのか、という飲みの席の他愛ない話題だった。
僕はてっきり冗談かと思い生返事をしてその場を収めたのだが、おせっかいなことに上司の方はしっかりと覚えていたらしく、
事態がエスカレートしたことで僕は彼女と会うはめになったのだ。

僕は、はっきりいって結婚などという社会的儀礼に微塵も興味を示していない。
むしろ、ただ煩わしいだけだと感じている。
それに当時は、(皆には秘密であったのだが)恋人というか、体の関係を持っていた女性も複数いたわけで、
上司のいうような女っ気に飢えていたわけでもなかった。

140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:05:53.93 ID:Lq/UnF5U0
nice boat.

141 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:06:00.67 ID:J+Hjp2mF0
だが、残念ながら簡単に断れる状況ではなくなっていた。
これまでに同僚や後輩からの紹介や、いわゆる合同コンパなどの誘いを受けてもすべて断り続けたのだが、
このころになるとさすがに、皆に不審がられていることが痛いほどわかった。

単に不要なトラブルを避けるために、会社関係のつながりで恋人を作らないようにしていただけなのだが、
皆はさすがにそこまでは想像できなかったらしく、しまいには、
僕がゲイセクシャルなのではないかといううわさまで立つほどになってしまっていたのだ。
そこで僕は断るデメリットと承知するデメリットを秤にかけた結果、彼女に会うことに決めた。

それからの交際は順調そのものだった。
十まで言わずとも僕の意図を汲み取れるほどに賢く、その上、僕に心の芯から尽くしてくれる献身ぶりが素晴らしい、
まさに良妻賢母タイプの女性であった。
結論からいえば、僕は彼女を結婚相手にすることに決めた。
『妻』としてはこの上なく都合がいい女性であるからだ。

ただ、彼女には性の相手としての役割は求めなかった。
なにしろこれから長い間、下手をすれば天寿をまっとうするまで付き添う相手となりえるため、滅多なことはできない。
それなりの体の交渉というのも夫婦生活に必要なのだが、彼女は性に対して非常に淡白な人間であるために、
僕の望むような変態的な行為を受け入れてくれる可能性は、残念ながら低い。
それに僕が頑張って彼女という女体を開拓するにしたところで、最終的には、
僕たちが中年と呼ばれる年齢になったときに体の関係が冷え切ってしまうのは明白だ。

結局、僕は彼女を『よき妻』としての立場にいてもらうことに決めた。
『世間一般的』に平穏な毎日を送るには必要でありつつも、邪魔にならないくらいの丁度いい存在だ。
それが僕たちにとって一番よい選択なのだ。
実際、僕も家庭の中では『よき夫』を演じている。
仕事から帰れば家事を手伝っているし、休みの日には買物にも付き合っている。
円満な夫婦生活を営むうえでの努力を惜しむつもりはまったくない。

しかし、その代わりに空いた時間さえあれば、僕は密かに愛人と逢瀬し、交わり続けていることも事実だ。

142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:06:13.85 ID:iESbjqwY0
支援

143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:07:03.01 ID:bKqaRTH90
支援

144 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:07:31.67 ID:J+Hjp2mF0
そして、そんな生活を送っている中で『彼ら』は突然僕の前に現れた。

僕が長年尽力していた営業畑から離れ、どういうわけか広報部に回された直後のことだ。
ちなみに僕の会社の広報部とは、平たくいえば自社および自社商品の宣伝部隊である。
僕の会社の有力商品は全国区で販売され、あらゆるメディアでコマーシャルが大々的に行われており、
その関係でうちの部署では広告代理店や、TV局、雑誌社などに出入りするような華々しい仕事を行っている。
だが一方で、路上やスーパーマーケット、イベント会場での試供品配りなどの地道な企画も存在しており、
僕は部署に配属されたばかりで、非エリート組であったために当然のごとくそちらの仕事を任せられることになった。

( ・∀・)「では計画書のほう、よろしくお願いいたします」

「はい、本日はお時間と取っていただきましてありがとうございました」

この日の午前中、僕は大手のイベント企画会社からの来客応対に追われていた。
今回の案件は、宣伝カーを都内各地に走らせて新商品の拡販を行うものであった。
僕がこれまで受け持ったなかでも比較的大きな案件だったが、商談は思いのほか上手くまとまり、
担当者を玄関まで見送り終えて、ほっとため息をついたときに事件は起こった。

( ^ω^)「私、『株式会社VIPプロジェクト』の内藤と申しますお。で、隣は私と一緒にやっております風羽ですお」

(*ノωノ)「……風羽です」

「どうも、お世話になっております。本日はどういったご用件で?」

( ^ω^)「実はですね、尾布市で秋に行われる予定の、市民マラソン大会の協賛の件でお話があるんですお。
      広報の担当者の方はいらっしゃいますかお?」

「かしこまりました。アポは取っていらっしゃいますか?」

145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:08:46.73 ID:iESbjqwY0
ktkr

146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:08:49.38 ID:bKqaRTH90
支援

147 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:08:57.70 ID:J+Hjp2mF0
(;^ω^)「……ッ!! いや、その……実は今日がはじめての訪問なんですお」

「……はあ。そう言われましても当社にいらっしゃるお客様は多いので、
 こちらとしてもアポなしでお通しするわけには……」

(;^ω^)「いや……その、そこを何とかお願いできませんかお?」

「そう言われましても……」

(*ノωノ)(先輩……がんばってください)

( ・∀・)「……」

受付で、受付嬢と二人組みの男女が何やら揉めているようだった。

しかしながら、これもよくある光景だ。
現に僕の会社には数百もの取引先や関係会社の人間が出入りしており、
中には取引先を装って、対応した社員に個人的な投資をもちかける輩も存在する。
そのため、セキュリティの問題もあって、外部の人間を基本アポイントなしでは通さないようにしているのだ。

(;^ω^)「べ、別に怪しい者じゃないですお!! ……ほ、ほらちゃんと免許書だって」

(*ノωノ)(……先輩、ここは警察じゃないです)

( ・∀・)「……」

受付嬢は困った様子で受け答えしていたが、最悪の場合警備員がどうにかしてくれるだろう、
と、僕は高をくくってそのまま自分の部署へと戻る。

148 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:10:38.28 ID:J+Hjp2mF0
はずだった。

( ・∀・)「いらっしゃいませ。私広報部の茂良と申しますが……うちの部署に何か?」

Σ(;^ω^)「えっ!? あ、あの!! 私、『株式会社VIPプロジェクト』の内藤と申す者で、こちらg」

( ・∀・)「確か風羽さん、とおっしゃいましたか?」

(;ノωノ)「え……あ、はい。私が風羽です」

「あ、あの……茂良さん? こちらは?」

( ・∀・)「……ああ、大丈夫だ。アポは取ってあったんだが、どうやらうちを紹介した会社が僕の名前を伝え忘れたらしくてね。
      内藤さん、風羽さん、こちらのミスでご迷惑をおかけして申し訳ありません」

(;^ω^)「……はあ」

僕は、彼らに声を掛けた。

実際のところ彼らと会うアポイントは取ってないのだが、思わずそう口に出してしまった。
奇妙な好奇心に駆られて出た嘘、だろうか。
ともかく僕は彼ら――特に、男性のほうに声を掛けられずにはいられなかったのだ(別にゲイセクシャル的な意味ではなく)。
なぜそうしたのかは、このときの僕には見当がつかなかったが、
彼らを客人に仕立て上げてしまった以上、招かないわけにはいかなかった。

( ・∀・)「では、こちらにどうぞ」

(*ノωノ)「……?……」(^ω^;)


149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:10:45.22 ID:iESbjqwY0
支援

150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:10:51.63 ID:YlPFVoDRO
支援

151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:11:02.21 ID:mlol8smu0
支援


152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:11:28.74 ID:Lq/UnF5U0
sien

153 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:11:39.54 ID:J+Hjp2mF0
( ・∀・)「改めましてご挨拶を。私広報部の茂良と申します。
      イベント会場や市中での販促キャンペーンを主に担当しております」

(;^ω^)「あ、どうも。『VIPプロジェクト』の内藤ですお」

(*ノωノ)「……同じく、内藤の下についている風羽と申します」

( ・∀・)「ふむふむ、イベント企画をやってらっしゃるのですか。で、今日はどういったご用件で?」

僕は彼らを応接室に招き入れると、改めて挨拶を兼ねて名刺を交換した。

どこか不思議な雰囲気を漂わせた二人だった。

内藤と名のった男性のほうは、若干くたびれたスーツ、しまりのない胴体、そして社内に入ってからのたどたどしい動作から鑑みて、
どうにもやり手の営業には見えないのだが、まったくもって不快感を与えるような人物ではなかった。
むしろほほえましさというか、柔和な空気をたたえており、それが僕に好印象をもたらしたのかもしれない。

一方風羽と名のった女性のほうは、内藤の影に隠れるようにこちらのほうを何度も伺いながらも、
一向に僕に対して売り込みをかける様子も見られない。
僕から言わせてみれば挙動不振に立ちつくしているだけで、なんの補佐もできていない。
だが、逆にかっちりとしたスーツに不似合いな可愛らしい容貌とそのつつましさが、いじらしい。

要するに彼らは僕の警戒心を、もともと持ち合わせているそのやわらかいムードで取り払ったとでもいうべきか。

(;^ω^)「……あの、その前にちょっといいですかお?
      その……なんで、僕たちを簡単に案内してくれたのですかお? 実際アポを取ってもいないのに、嘘までついて……」

と、僕が彼らの目的を聞き出そうとしたところで、内藤は遠慮がちに質問を投げかける。

154 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:13:42.96 ID:J+Hjp2mF0
( ・∀・)「あ、これは失礼しました。
      ……うん、何といいましょうか、事実仕事がひと段落ついたからというのもあったのですが、
      それよりもなぜかあなた方に興味がわきましてね。こう言ったら失礼なんですが、
      ここまでの規模の企業ともなると、社員に個人的な取引を持ちかけてくる不穏な方々がやってくることがしばしばでして……
      まあ、大抵そういった方々は胡散臭い雰囲気をかもし出しているものなのですが、
      あなた方にはそういったものが一切感じられなかったとでもいいましょうか?
      しかし、これであなたの鞄から先物や生命保険のパンフレットが出てきたら大笑いですがね……」

(;^ω^)「はあ……」

僕は馬鹿正直に説明をした。
普段の取引会社の人間に言ったら多少は失礼にあたる発言ではあったが、
彼らは僕の知る限りではまったく接点のない会社の人間であり、そのうえ彼らが売り込む側にあるため、立場上ではこちらが上である。
つまり、ここまで話したところで大事にもならないだろうという考えがあったわけだが、
同時に、万一彼らが個人投資をもちかけてくるセールスマンであった場合のために釘を刺すという意図もあった。

( ・∀・)「まあ、簡単にいえば私はあなた方によい印象を持っているということですよ。
      しかしながら、ここから先はビジネスの話。
      私は個人的な印象で首を縦に振るような慈善活動をやっているわけではないのです。
      当社にとってメリットがあるお話でなければ、遠慮なく断らせていただきます」

(;^ω^)「まったく手厳しい限りですお……でも、これはまたとないチャンス。
      わかりましたお。では、当社の企画案件についてご説明しますお」

そして内藤はジャケットの内ポケットからハンカチを取り、額の汗を拭うと、
今度は鞄の中から試作段階とおぼしきパンフレットを出し、一枚を僕に手渡して商談を開始した。

155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:14:47.22 ID:YlPFVoDRO
支援

156 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:15:24.45 ID:J+Hjp2mF0
(;^ω^)「今秋に尾布市で開催予定の市民マラソンがありまして、今回は協賛のお願いに……・」

(*ノωノ)「現段階のエントリー人数は9000人ほどでして、最終的な予想人数としては……」

(;^ω^)「一応、今回のマラソン大会を報道するマスメディアとしては、地元ラジオ局に新聞社、ケーブルTV局……」

( ・∀・)「……ふむふむ」

僕は、熱心に彼らの話に耳を傾けていた。
未決定事項も多くパンフレットには空白の欄が散見された上、要点をとらえていない遠回りな言い回しばかりが目立ち、
特別上手いプレゼンテーションとは言い難かったが、それだけの欠点をカバーするほどの熱意はひしひしと感じ取れた。

(;^ω^)「で、雨天の場合の対策としましては……風羽さん、説明おねがいだお」

(*ノωノ)「あっ、はい。雨天などの悪天皇……じゃなかった、悪天候の場合……」

(;^ω^)「ちょっw 一昔前にタイムリーだったネタと同じ間違いをしないでほしいお。
      ……あ、失礼しましたお。彼女はこういう場にはまだ慣れてないんですお」

(;・∀・)「ああ、いや別に大丈夫ですよ。続けてください」

内藤が風羽に補足説明を促したあとで、風羽が説明に詰まる場面もしばしばあったのだが、
例えるならばそれはシュールな夫婦漫才を見ているかのような掛け合いにも感じられ、飽きなかった。

(;^ω^)「……というわけで、説明は以上ですお。
      下手くそな説明で申し訳なかったですけど、何かご質問などあったらお答えしますお」

157 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:17:05.41 ID:J+Hjp2mF0
( ・∀・)「熱意あふれるご説明、ありがとうございました。
      質問は今のところは大丈夫ですよ。まだ決定していない事項もいくつかありますし」

(;^ω^)「では、急かすようで申し訳ないんですが、お返事のほうは……」

(*ノωノ)「……是非お願いします」

( ・∀・)「う〜む……とりあえず、検討させてほしいというのが正直なところです。
      この件は申し訳ありませんが、返答は後日にさせていただけませんか?
      私の一存では決定できることではありませんので、一度上司に通してからお返事差し上げたいと思います」

(;´ω`)「……わかりましたお。難しいかもしれませんがお返事お待ちしていますお」

(*ノωノ)「私のほうからも改めてお願いします。
     もし決めて頂けるのであれば、一生懸命がんばらせていただきます」

( ・∀・)「わかりました。では結論が出ましたらすぐにこちらからお返事しますので」

(;^ω^)「お忙しい中ありがとうございますお。では我々はこれで」

二人は大げさなほどに深々と頭を下げて、オフィスを後にした。
彼らは建前としては笑顔を最後まで絶やしていなかったが、同時に諦めにも似た落胆の表情も見え隠れしていた。

実際これは無理もないことで、実際こういった仕事を優先的に委託するのはわが社と関わりの深い大手のイベント会社であり、
彼らのような中小規模の会社に直接回すことなどまずない。
新規の取引先ならばなおさらだ。
しかし、僕は却下される可能性が高いことを承知で回答を先延ばしにした。
この選択が地道ながら懸命に営業を続ける彼らに対する気遣いであり、僕ができる精一杯の報いでもあるからだ。

158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:18:01.87 ID:iESbjqwY0
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159 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:18:19.37 ID:J+Hjp2mF0
とはいえ、些細な商談であるにしても報告をまったくしないわけにはいかない。
僕はこの後すぐに話を直属の上司へと回し、判断を仰いだ。

結論から言えば、可能性が限りなく薄いこの小さな案件は見事通ることとなる。
誤解のないように補足しておくと、特別彼らの意見を上司に強調したわけでもない。
それはこのケースでもそうだし、他社の案件でも同じだ。
だが、それにも関わらず採用されたのだ。

理由としては、僕の会社の事情にある。
僕の会社は食品メーカーで、主力商品は加工食品や調味料が大半である。
しかしその一方で、近年、飲料関係の商品にも手を出し、専門外のマーケットを対象にした拡販戦略を行おうとしていた。
残念ながら既存の飲料メーカーの商品に圧迫され、売上は伸び悩んでいたが。

そこで、起死回生の新商品として新たに開発されたのが、『六甲のびゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛水』である。
パッケージにサ○エさんでおなじみのフ○田マ○オをイメージキャラクターとして印刷した、ただのペットボトル飲料水だ。
誰もが売れるはずがないと感じていたこの商品であったが、社長の気まぐれで重点的な販促活動を命じられることとなり、
その結果とばっちりを一番に受けたのが僕の部署というわけだ。
とりあえず最初にスーパーの売り場や路上やイベント会場で試飲販促を行ったわけだが、目に見えるほどの効果はなかった。
さらには、思い切って全国ネットのTVコマーシャルで大々的に宣伝を行ったりもしたが、
その映像がネタとしてインターネットに広まるばかりで、これも直接的な販売量増加にはつながらなかった。

そして、万策が尽きた結果、苦し紛れとして白羽の矢が立てられた宣伝方法がスポーツ大会での協賛だ。
スポーツに必要不可欠なものといえば給水のための飲料。
大会の公式飲料の一つに『六甲のびゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛水』を採用してもらうことで販促効果が生まれるのではないか、
と重役の一人が提案したことが事の始まりだった。

だが、莫大な予算をすでに販促のために投じており、その実行は慎重を要した。
そのため、まずは実験的に小規模の大会で協賛を行い、そこで満足ゆく結果が得られたならば、
最終的には国際大会の公式飲料としての採用を狙ってはどうか、という運びになったというわけだ。

160 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:20:05.90 ID:J+Hjp2mF0
【7.僕は語った】
「お電話ありがとうございます。『VIPプロジェクト』でございます」

( ・∀・)「もしもし、『株式会社クソミソフーズ』の茂良と申します。お世話になっております。内藤さんはいらっしゃいますか?」

「はい、お世話になっております。少々お待ちください。 ピッ」

アーイマーイサンセンチ♪ ソリャプニッテコトカイ? チョッ♪
ラーッピングガセイフク♪ ダーフリッテコトナイ プ♪
ガンバッチャ♪ ヤッチャッチャ♪

(;・∀・)(斬新な保留のメロディだな……・)
     「……あ、どうも『クソミソフーズ』の茂良です。ご無沙汰しております」

「もしもし、お電話代わりましたお。内藤ですお。
 先日はお世話になりましたお。それで、早速なんですが結論のほうは……」

( ・∀・)「ええ。そのことなんですが、喜んで下さい。無事に通りましたよ。
      具体的にどういう方向で協賛させていただくのかは、これから協議していきたいと思っています。
      あ、それから今回の案件は私が担当になりますので、よろしくお願いいたします」

「……」

( ・∀・)「? 内藤さん?」

「(やったおおおおおおおお!!)
 (ちょっ!! どうした内藤!? いきなり大声を出しやがって)
 (長岡さん、やりましたおおおッ!! あの大手の『クソミソフーズ』から協賛取りましたおッ!!)
 (え゛……mjd!? あの大企業がウチなんかの相手をするなんて……おい、内藤、お前賄賂か何か渡したんじゃねえだろうな?)
 (イヤイヤイヤイヤ、まさか。僕はただ普通に商談しただけですお)」

161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:21:03.00 ID:fPji/O+AO
なんだその怪しげな飲料水www

162 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:21:46.25 ID:J+Hjp2mF0
(;・∀・)「……」

音から察するに、おそらく受話器のマイク部分を手で押さえているのだろうが、その奥でのやりとりは全て筒抜けだった。
耳をそばだててみれば、向こうのオフィス全体が動揺と歓喜の渦に包まれ、どよめきが響いてくる。
まさに、異様なまでの喜びようだった。

「……申し訳ないですお。唐突の出来事のあまり我を忘れちゃいましたお」

(;・∀・)「いえいえ。そこまで喜んでいただけて私としても光栄ですよ」

そして、三分後。
やっとのことで冷静を取り戻した内藤が、申し訳なさそうに再び受話器の前に出て謝罪した。
僕は呆れながらもフォローの言葉を返すと、彼はばつが悪そうに苦笑いをこぼすことしかできないようだった。
ともかく気にしていない旨を伝え、強引にその場をおさめてから、僕はようやく本題を切り出す。

( ・∀・)「で、唐突なお話なんですが内藤さん、明日夕方のご予定はございますか?」

「……えっ? あっ、いや特に無いですお。明日はずっとオフィスにいるだけですお」

( ・∀・)「そうですか。ならば丁度いい。早速ミーティングも兼ねてどこか食事にでも行きませんか?
      改めて大会について色々と聞きたいこともありますし」

「は、はいっ!! 是非お願いしますお!! ……ああ、でもそれだったら僕の上司も一緒に連れて行きますかお?
 互いに初めてのお取引になりますし、挨拶もしておいた方がいいですお」

( ・∀・)「ああ、それでしたら大丈夫です。今回はヒラの私だけですから。
      今回はミーティングのためのミーティングですよ。いわゆる親睦を深めるための機会です。
      両社の担当者同士の本格的な顔合わせはまた後日にしましょう。
      そのほうが、後々スムーズに事が進むでしょうから」

163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:21:53.81 ID:U2T1ctzu0
クソミソフーズwwwwww
食品メーカーとして最低最悪の名前だなwwwwwwwww

164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:21:57.30 ID:YlPFVoDRO
変なの紛れ込んでるwwwww

165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:22:38.44 ID:bKqaRTH90
『六甲のびゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛水』
ねーよwwwww

166 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:23:35.28 ID:J+Hjp2mF0
結局、今回は二人だけで会を行うことで話はまとまった。

ちなみに、このように取引相手を誘うことは営業時代に培った僕自身のノウハウだ。
どの業種においてもそうであるかもしれないが、仲良くなるに越したことはないのだ。
まあ、仲良くなるとはいっても僕にとっては上辺だけの付き合いでしかないわけだが、
それでも相手の警戒を完全に解き、心を開かせることくらいは簡単にできる。
幼い頃から他人の顔色を伺いながら細心の演技を繰り返してきた僕の唯一の特技とでもいうべきか。
おかげで、現在までの社会人生活においても特に大きな壁に突き当たることはなく、円滑で平穏な毎日を送れるようになっていた。

( ・∀・)「お忙しい中わざわざ都内まで呼び出してすみません。今週は今日しか都合がつかなかったものですから」

( ^ω^)「いえいえ、こちらこそお誘いいただいてありがとうございますお。
      それに、特別手が離せない身ではないですから心配しないで下さいお」

( ・∀・)「それならよかった。ところで内藤さん、お酒は飲めるほうですか?」

(;^ω^)「あ、いえ。そこまで強くはないですけど、たしなむ程度だったら飲めますお」

( ・∀・)「そうですか……というかこう言っておいて何ですが、僕もそこまで飲める口ではないですよ。
      あくまで食事の取り合わせですから、その辺りは気になさらないで下さい。
      この近くに私がよく利用する料理とお酒が美味しい店があるので、そこでどうですか?」

( ^ω^)「僕は都内の店をあんまり知らないので、是非お願いしますお」

( ・∀・)「では、ここから歩いて3分ほどのところですので行きましょうか」

ミーティングは、互いに交通の都合がよい八丁堀で行うことになった。
駅の改札を出たところで合流して、しばしの社交辞令を交わしたあと僕は内藤を行きつけの店に案内する。

167 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:25:16.70 ID:J+Hjp2mF0
(;^ω^)「おお……すごいオサレな店ですお。
      僕はあまりこういう店に行ったことがないので、ちょっぴり緊張しますお」

( ・∀・)「内装は凝った感じですが、値段は普通の居酒屋と変わりませんよ。
      普段はどういったところに行かれるんですか?」

(;^ω^)「いや、恥ずかしながら白○屋とか、魚○とか、養老○瀧とかチェーン店ばかりで……」

( ・∀・)「いえいえ、私もその辺りはよく利用しますよ。ああいった大衆居酒屋みたいな雰囲気も好きですから」

今回内藤と一緒に訪れた店は、八丁堀のビル街の中でひっそりと隠れ家的に存在している店だ。

個室も数部屋備わっているため、取引先との商談にはよく利用している。
黒色に統一された壁のせいで店内は薄暗く、天井から吊らされた和紙張りのランプの仄かな光だけが頼りになるのだが、
その輝きは色とりどりの和紙を透かして降りそそがれ、まさに鍾乳洞の中にいるような神秘的な雰囲気を味わうことができる。
料理も逸品で、有機栽培の野菜をふんだんに使用したロハス(笑)なメニューがOLや年配のサラリーマンの間で人気を博している。
さらには酒の種類も豊富で、全国津々浦々から取り寄せた希少な地酒を味わうことができ、愛酒家の間でも評判になっているようだ。

( ・∀・)「まあ、でもこういう場所も悪くはないでしょう? 特にデートなんかには最適ですよ。
      こういう雰囲気の店は女性はたいてい好きですし、いいムードになること間違いなしです」

(;^ω^)「あはは……参考になりますお」

( ・∀・)「都内に遊びに来る機会があったら、ぜひ使ってみてくださいよ。
      仮に内藤さんが女性とここに来られたときに、私がたまたま居合わせたとしても他人のふりをしておきますからw」

(;^ω^)「……ええ。来れればいいんですが、まあなんというか、なかなか……」

( ・∀・)「……ふむ」

168 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:26:57.49 ID:J+Hjp2mF0
注文を済ませてから料理と酒が運ばれてくるまでの間、僕は内藤に話題を振り、間をつなげた。

女性関係に関する軽い内容だ。
僕は初対面もしくはそれに順ずる人間と二人きりになったとき、最初にこういった話題で相手の反応を見る。
相手が食いついてくればその後は、多少下品な方向に持っていってでもその場を盛り上げるようにするし、
逆に相手が食いつかないようであれば、別の話題へと切り替える。
つまりこの反応で、相手の大抵の性質は予想がつくというわけである。

(;^ω^)「そういえば、茂良さんのその指輪……もしかして結婚されてるんですかお?」

( ・∀・)「ええ。子供はいませんが、もう2年目になります。しかし、結婚も面倒なだけですよ。
      小遣いは減るし、家庭サービスも必要だし、それに相手方の親戚との付き合いもしなくてはいけない。
      結婚は人生の墓場といいますが、まさにそれを実感しているところです」

(;^ω^)「そんなものですかお」

( ・∀・)「そんなものですよ、結婚なんて。楽しいのは最初の1年だけです。
      よっぽど独身のほうが身軽でいいものだと思いますよ」

(;^ω^)「……茂良さんも大変なんですお」

( ・∀・)「ええ……まったくです」

ここまで会話をしてから、僕は黙りこんだ。

どうやらこの内藤という男、こと女性関係に関してはあまり上手くいっているわけでもないらしい。
証拠に、なんとか僕の話を返そうとしているのはわかるのだが、それでも熱心に食いついてはこない。
そこで僕は自分の身の上話を、いかにも悲劇であるかのごとく自嘲気味に語ってみた。
話題の矛先を自分に向け、あざけることで彼が話しやすい環境をつくったのだ。

169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:27:57.98 ID:iESbjqwY0
支援

170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:28:08.97 ID:YlPFVoDRO
支援

171 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:28:29.97 ID:J+Hjp2mF0
「お待たせしました。生ビール中二つお持ちしました」

( ・∀・)「では、大会の成功を願って乾杯といきましょうか」

( ^ω^)「はい、ですお」

( ・∀・)「乾杯」

( ^ω^)「乾杯」

僕たちは軽く杯を交わしたあと、それぞれグラスを口に運んだ。
僕は三分の一ほど、内藤は半分ほどビールを飲み込む。

( ・∀・)「……ふう、やはり仕事のあとのビールは格別です。このしみ込む感じがたまりませんね」

( ^ω^)「……ぶはっ!! いつもは発泡酒ばかりなんですけど、でもやっぱりビールのほうがおいしいですお」

( ・∀・)「はは、まったく同感です。私も家ではビールが飲めない身ですから。
      節約のための発泡酒とはいってもやはり毎日飲んでいては飽きてしまいますよね」

( ^ω^)「やっぱり生がいちばんですお!! しかもこのサラダUMEEEE!!!!」

( ・∀・)「ははは、喜んでいただけてよかった」

内藤はビールのグラス片手に、運ばれてきた前菜のサラダを口に押し込んでいく。
この店の反応は聞かずとも、上々なようだ。
そして、この後は本題である商談の話を進めた。
思いのほかスムーズに事が運び、『VIPプロジェクト』が主催者側に対して、
『六甲のびゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛水』の公式採用の交渉を行う、
また、その最終段階として『VIPプロジェクト』と『クソミソフーズ』の各責任者が立ち会う、という二点で同意がとれた。

172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:30:03.84 ID:bKqaRTH90
支援

173 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:30:10.99 ID:J+Hjp2mF0
僕たちのミーティングはそれだけには留まらなかった。
次第に話題は互いのプライベートを含むものへと移っていったのだ。

だが、今考えておけば、自重すべきだった。
僕は基本的に深酒をしないと決めていたのだが、このときだけは調子に乗りすぎたというべきか。
酒とは恐ろしいもので、その場の雰囲気に駆られて余計なことを喋らせるような魔力を持っている。
そして、まさに僕はその呪術の影響にはまってしまったようだ。

事の発端は、再び女性関係の話題に戻ったときのことだ。

(*^ω^)「ところで、茂良さんは今おいくつなんですかお?」

(*・∀・)「今年で31になりますけど、何か?」

(*^ω^)「いや、若々しいなと思ったんですお。
     スーツの着こなしもこういう店のチョイスもオサレだし、さぞかしモテモテでしょうお」

(*・∀・)「ははは、そんなことはないですよ。内藤さんはどうなんですか、最近は?」

(*´ω`)「……まあ、相手がいないといえば嘘になるんですけど……何というか、いろいろと事情があるんですお」

(*・∀・)「……事情?」

含みをもたせた台詞を吐き出して、内藤は黙りこくった。
伏目がちになり、はあ、とため息をつく仕草は、先ほどの時と似たような反応だった。
最初のときは、女性には縁のない喪男特有の反応かと思って流していたのだが、それとも違うようだ。
少なくとも内藤が嘘をついているようには思えない。
むしろ正確にいえば、自分の女性関係の話には触れないでほしいといった拒絶を感じ取れるのだ。

174 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:31:42.54 ID:J+Hjp2mF0
しかし、僕は敢えて訊いてみた。
知りたくなったのだ。
ひねくれた天邪鬼の本性が顔を出し、意地悪をしてみたくなったのである。

(*・∀・)「ははあ、もしかして先日同席した、風羽さんという女性のことですか?
      みたところ彼女はあなたのことを慕っているようですし。それに僕から見ても可愛らしい女性だ」

(;゚ω゚)「!?」

その瞬間、内藤の表情は凍りついた。

いつも笑みをたたえている柔らかな表情から一変して、戦慄ともいうべきものが彼の中を走り抜けたのである。
僕は彼の豹変ぶりに一瞬うろたえ、しまったと思った。
怒悪よりも、激昂よりも、憤懣よりも恐ろしい表情に感ぜられたのだ。
一時的な感情の暴発だとかいう生易しいものではない。
それよりもさらに深い彼の内で寄生しているグロテスクなものが、表面に現れたという表現がふさわしい。

だが、僕は訊くことをやめなかった。
酒のせいで、恐怖に対する感覚がマヒしていたのだ。
それに、僕には興味があった。
内藤という柔和な人間に潜む内なる悪がどれほどおどろおどろしいものかを見たい、
という欲望にすっかり支配されてしまっていたのだ。

(;^ω^)「べ……別に、彼女は関係ないですお!!
      確かにそりゃ可愛らしいところもあるのは認めますお……けど、それは後輩として……」

(*・∀・)「そうですか? そう言いながらもまんざら厭そうには見えないですけどねえ」

175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:32:04.13 ID:iESbjqwY0
支援

176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:32:42.50 ID:YlPFVoDRO
支援

177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:32:54.55 ID:bKqaRTH90
支援

178 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:33:01.36 ID:J+Hjp2mF0
(;^ω^)「いやいや、僕は別に付き合いたいだとかそういうわけじゃなくて……」

嘘だ。
大げさに首と手を横に振って否定する彼を見て、僕は直感した。
少なくとも、彼は風羽に好意を抱いているか、抱きつつあるかどちらかだ。
照れくさいから否定しているというわけではなく、どちらかといえば、
彼女に好意を抱くことにどこか後ろめたい気持ちがあって、それを悟られたくないから否定しているようにしか映らない。

ならば、

(*・∀・)「もしかして、内藤さんは既に彼女がいらっしゃる、とか?」

(;゚ω゚)「――ッ!!」

(*・∀・)「……どうやら図星みたいですね」

これしか考えられない。
内藤の狼狽ぶりから察して間違いはないだろう。
元々付き合っている恋人こそいるが、心中では既に飽いており一秒でも早く関係を断ち切りたい。
だが、彼女のほうはそれを許さない。
そんな中、内藤は風羽に好意を抱いてしまった、というところだろう。

(;゚ω゚)「……」

内藤は冷静を装いつつ、無言でビールの残ったグラスに手をかける。
しかし、彼のその震える指は真実を物語っていた。

179 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:34:26.65 ID:J+Hjp2mF0
(*・∀・)「でも、気になさらないで下さいね。そういったことは男だったら一度や二度はあることです。
      僕自身だって、妻という女性には飽きています。
      ……いえ、正確には元々熱を入れていたわけでもないですけどね。
      しかしながらそういった立場である以上、おおっぴらに別の女性と付き合うことは難しいです。
      元々の彼女と別れるか、それとも知らん顔して風羽さんと同時に付き合うか。
      もしくは、風羽さんを諦める選択肢もありますが、精神衛生上はよくありませんね」

僕は、すっかり沈み込んでしまった内藤を励ますようにこう言った。

事実僕だって、こういった立場に甘んじている。
いわば彼とは同じ穴のムジナだ。
違うことといえば、僕が根本的に女性を愛することがない点だ。
僕は女性を性を交わす相手、そして僕の悪を開放する対象としか見ていない。
ともかく、彼――内藤という男に対して自分と近いものを感じずにはいられなかった。

(#゚ω゚)「簡単にそんなこと言うなおッ!!
     どうして僕がツンを裏切らなきゃいけないんだおッ!!
     僕は彼女のことが大好きだお!! それに彼女だって……なのにどうしてそんなことをッ!!」

(;・∀・)「!?」

突然内藤はテーブルに拳をたたきつけて立ち上がり、僕の方に身を乗り出してきてきた。
そして、ほかの個室にまで響くほどの大きな声で叫んだ。
想定外の彼の行動に、僕は思わず固まってしまう。

180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:35:06.02 ID:bKqaRTH90
支援

181 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:36:11.69 ID:J+Hjp2mF0
(;´ω`)「……ッ!?
     ……申し訳ないですお。別に茂良さんはこの件に関係がないんですお。
     取り乱してすみませんお……」

と、転がって中身がこぼれたグラスに気づいて、ようやく内藤は冷静を取り戻し謝罪した。
それもそうだ。
僕自身、内藤に咎められる因縁など身に覚えがない。
どこか理不尽なものを感じつつも、僕はあくまで気にしていない旨を彼に伝えた。

( ・∀・)「いえいえ、こちらこそ申し訳ない。
      酒のせいで僕も少しすぎた発言をしてしまいました。……しかし、気にかかる。
      どうやら内藤さん、あなたは自分でどうにもできないような複雑な事情を抱えているようだ。
      ……よかったら、僕に話してくれませんか? それで少しでも楽になれば幸いですし」

店員を呼んでテーブルを片付けてもらい、新たにグラスを運ばせたあとに、
僕は神妙な面持ちをしながら、静かに切り出した。
正直、内藤がどういう状況に陥ろうがどうでもいいのではあるが、親身を装ってでも彼の事情とやらを聞きたかったのだ。

(;´ω`)「……まったくの他人の茂良さんにこんなことを話すのも、申し訳ないですお。
     少し湿っぽい話になってしまいますが、いいですかお?」

( ・∀・)「ええ、かまいません。それに他言はしませんので、ご安心を。」

(;´ω`)「……ありがとうございますお。
     では、私事ながら喋らせてもらいますお。
     話は、僕が入社して3年経ったころから始まりますお――」

182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:37:50.95 ID:9HGCiApy0
支援

183 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:37:57.70 ID:J+Hjp2mF0
(;´ω`)「僕がようやく仕事を覚え、新しいグループで事務作業を任される状況になりましたお。
     上司の信頼を一身に受け、自分の責任で仕事をする。
     さあ、これからだ、と張り切っていたときに『彼女』は現れたんですお」

( ・∀・)「『彼女』……とは?」

(;´ω`)「名前は津村といいますお。僕はツンと呼んでいましたお。
     実は彼女というのが僕の小学校からの同級生だったんですが、
     僕が大学を中退して先に今の会社に入ったために、彼女にとって僕は上司という立場になったわけですお」

( ・∀・)「まさに運命的な出会い、という感じでしょうか? ……まあそれはさておき、
      ひとつ訊きますが、それ以前に彼女とは何かあったんですか?」

(;´ω`)「小学校のときには彼女をからかったり、中学校のときには少し話したりしましたけど、
     直接的に、それ以上の進展は何もなかったですお。
     でも、僕は彼女が怖かったんですお……」

( ・∀・)「……それは、どうして?
      まったく知らない仲ではなかったんでしょう?
      むしろ『普通』ならば、再会を喜びあったり、昔話に花を咲かせたりするんでしょうが……」

(;´ω`)「……恥ずかしながら僕自身、小中学生を通して楽しい思い出なんて全然ないんですお。
     同級性たちに上履きは隠されるし、朝学校にきたら机に花瓶が置かれるし、
     果てにはエスカレートして暴力を受けることもありましたお……」

( ・∀・)「ふむ……なるほどね」

184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:38:10.01 ID:iESbjqwY0
支援

185 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:39:45.72 ID:J+Hjp2mF0
僕は、顎に手を添えて考え込むような仕草をして、ふと、満杯に注がれたカクテルのグラスに視線を落とした。
天井のランプから注がれる光は、複雑なカットが施されたグラスと真赤の液体の中を複雑に走り抜けて、
テーブルに赤い陰影を映している。
僕は惜しげもなくそれを手に取り、ぐっと飲み干す。
そして、再び彼のほうに視線を戻した。

(;´ω`)「……」

彼の憂いげな姿を見て、僕は思う。
おそらく彼は器用な人間ではないのだろう。
そのことは彼のこれまでのたどたどしい言動から、簡単に窺えた。

もちろん、僕自身の過去だって何一つ誇れるものはない。
この世に生を受けてから、嫌悪と、劣等と、欺瞞に塗れた人生を送っていた。
他人から見てみれば羨むべきこともあるだろうが、それは単なる虚像にしか過ぎない。
ただ、他人の本質に触れることで自分の下劣さを思い知ることに怯え、道化として演技しつづけた結果だ。
性行為を経験することで他人に対する恐怖こそ薄れたが、それでも幼いころから植えつけられた思想を払拭できずにいる。
証拠に、名も知らぬ『彼女』との交わり以来もずっと不本意ながら他人の顔色を伺い、他人が望む行為を続けてきた。
気がつけば、自己主張ができない、自己主張の方法を知らない人間になっていたわけだ。

いわば、欲望を開放することでしか自分の本性を表現できない、空虚の人生。
そして、今も、これからもずっとそうだろう。

だが、困ったことに彼は演技が下手くそなのだ。
僕は、苛めだとかそういった迫害から必死に逃れようと『茂良ちゃん』を演じ続けてきたため被害を受けることがなかったのだが、
逆に彼はそういったことが苦手であったために辛い学生生活を送ってきたのだろう。
しかし、逆にそれがうらやましくもあった。
彼は自己表現の術を持ち合わせている。
だから彼は、僕なんかよりもはるかに人間らしい人間であるように映ったわけだ。

186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:41:00.94 ID:bKqaRTH90
支援

187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:41:13.91 ID:srf1q2wc0
なんと言うノンフィクション

188 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:41:27.19 ID:J+Hjp2mF0
(;´ω`)「当然ながら、僕が苛めを受けていることをツンは知っていましたお。
     だからこそ、怖かったんですお。
     僕の隠された歴史をばらされるのが。
     事実、僕の高校生活以降からは――すべてが順調とはいえないですけども、それでも、
     僕なりの小さな喜びを手にすることができたんですお。
     僕のことを認めてくれる人もいたし、カーチャンだって心から僕を応援してくれましたお。
     でも、彼女が僕の前に現れたことで、すべてが台無しになってしまう可能性があったお。
     だから……」

( ・∀・)「彼女を避けた。そういうわけだね」

(;´ω`)「はい。僕は、ツンに細心の注意を払って接しましたお。
     でも……そのせいで僕はツンの怒りを買うことになりましたお。
     言うなれば、最悪の形で彼女を裏切ることになったんですお」

( ・∀・)「……裏切り、とは?」

(;´ω`)「彼女はまったく、僕の過去を皆にばらしてやろうだとか、そんなことを思ってはいなかったんですお。
     それどころか、僕の気遣い……というか、彼女を不快にさせないようにとった行動を喜んですらいたんですお。
     だから、彼女は怒ったんですお。
     僕がただ怯えていただけだと知って。……まあ、今思えば恥ずかしい限りの話ですお」

( ・∀・)「彼女は君の過去をまったく気にしてなかったんだね。
      それどころか、君の接し方に好印象さえ抱いていた」

(;´ω`)「はい……というか、彼女も過去に僕と同じ境遇にあったんですお。
     彼女自身も陰ながら、苛めを受けていたんですお。
     当時の僕に知る由もなかったんですけど、女性の苛めっていうのがどうやら目に見えにくいもののようで、
     つまり、彼女も僕にまったく同じ感情を抱いていたんですお」

189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:41:48.25 ID:YlPFVoDRO
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190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:42:08.14 ID:iESbjqwY0
支援

191 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:42:44.89 ID:bKqaRTH90
支援

192 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:43:08.44 ID:J+Hjp2mF0
( ・∀・)「つまり、彼女も怖かったわけだ。君に過去をばらされることが。
      でもその不安は君が優しく接したことで、薄れていった」

(;´ω`)「そういうことですお。
     僕は、これまでずっとツンが手に届かない存在だと思っていましたお。
     中学生のときに演劇をしたことがあって、その時の僕の役は単なる植物で、
     一方ツンは、皆の注目を浴びるお姫様。
     変な例えですけど、僕が植物で彼女が人間。
     それくらいの差を感じていたんですお。
     でも、そこには差なんてなかった。彼女は僕のことを認めてくれたんですお」

( ・∀・)「なるほど。類は友を呼ぶ……というのは少々失礼だが、君たちは互いにシンパシーを感じていたわけか。
      そして次第に仲が進展し、君たちは……」

(;´ω`)「最終的には結婚を誓い合う仲になりましたお。
     まあ、それは家庭の事情もあったんですけど……ともかく、僕たちは新居を構えることになって、
     具体的に引越しをしよう、と準備するまでに話が進んだんですお」

( ・∀・)「結婚を考える仲か。すばらしいことじゃないか。
      ……でも、どうして? うまくいっていたはずじゃなかったのかい?」

(;´ω`)「……ここで、『あの』出来事が起こったんですお。
     今でも僕は後悔していますお。なぜお金をかけてでも業者を呼ばなかったのかって。
     ……僕たちは経済的な事情もあって、友人と3人だけで引越し作業をしたんですお。
     でも、それが間違いだった」

( ・∀・)「……それは?」

193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:44:38.66 ID:rhsZlLJ3O
支援

194 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:44:50.54 ID:J+Hjp2mF0
(;´ω`)「――階段で、大きな家具を運んでいる途中で、彼女は誤って頭から転落したんですお。
     救急車を呼ぶほどの重体でしたお。
     ここからは……僕は、錯乱していてはっきりと覚えていないんですけど、
     気がついたら彼女は病院のベッドの上で横たわっていましたお」

( ・∀・)「……それから?」

(;´ω`)「医者は、彼女の命に別状はないと言いましたお。
     ただ……彼女が目覚めることもない、とも言いましたお」

( ・∀・)「……」

(;´ω`)「……」

いたたまれないような沈黙が、流れた。

僕は内藤が皆まで言わなくても状況を完全に把握できた。
彼女はただベッドに横たわることしかできない、植物人間になってしまったのだ。
そして、おそらくそれは今この瞬間にも同じだ。

同時に、ようやく先ほどの激昂の理由を納得した。
内藤はその出来事からずっと、罪の意識を感じ、悩み苦しんでいる。
だがその反面、風羽に惹かれはじめている自分にも気がついている。
だから、憤慨した。

彼は元々の恋人に飽いたわけでも、愛していないわけでもない。
むしろ、彼女の再来をわずかな希望に託している。
しかしながら、風羽という存在が彼の頭にまとわりつき、離れない。
風羽に心を傾けてしまえば、それは津村に対する背徳に他ならず、彼は懊悩することしかできない。
つまり、僕は先ほどの発言で彼のもっとも痛いところをついてしまったわけだ。

195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:45:31.03 ID:iESbjqwY0
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196 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:46:32.49 ID:J+Hjp2mF0
(  ω )「……お」

内藤は、口ごもるように続けた。

( ・∀・)「え……?」

(  ω )「ほとんど毎日、僕は彼女に会って話をしているんだお。
       会社の飲み会で上司がアフロのカツラをつけて踊った可笑しい話を。
       春になって会社のそばの並木道に咲いた桜の花が美しい話を。
       仕事で『クソミソフーズ』の協賛が取れてとてもうれしかった話を。
       昨日だって、今日は茂良さんと飲むから少し遅れるってことも話したお……なのに」

そして、

(#゚ω゚)「彼女は、それでも何も答えてくれないんだおッ!!
     泣いても、笑っても……怒ってもくれないんだお!!
     ……病室では僕の声しか聞こえないんだお。
     他の人だってたまに彼女に会いにきてくれるけど、それでも目を閉じて黙ったままなんだお!!」

( ・∀・)「……」

(# ω )「……なのに、何でッ!!
      ……っく……」

今まで溜めていた感情を、津村という女性が倒れてからずっと彼の内でうごまいていた感情を開放した。
通りかかった店員や他の個室の客が一瞬のぞきこんだが、それでも彼は意に介さず、叫んだ。
先ほどの憤慨とは比べ物にならないほどの怒号だった。
想いを完全に言葉にできないまま、吐き出すだけの行為。
見ている側としても非常に辛く、情けない姿だった。

197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:47:29.73 ID:bKqaRTH90
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198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:47:53.85 ID:Y/LhSQNT0
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199 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:48:16.98 ID:J+Hjp2mF0
だが、僕は彼の姿を美しいと思った。

容貌だとか見てくれだとかいう、表面的な美しさではない。
彼の内なるところからとめどなく出てくるもの、理性に複雑に絡み合う醜状たる『悪』。
僕はそれに感動すら覚えていたのだ。
少なくとも僕にはできない。
怒ったふりや、笑ったふり、泣いたふりを一種のパフォーマンスとして行うことはできるが、
それを普段に、自然とやったことはない。

僕は、彼の姿に人間の美の本性を見た。
ブッダが悟りを開いた瞬間というものはまさに、こういう感覚なのだろうか。
ようやく僕は、内藤という人間に惹かれた理由が解った。
彼は内なる『悪』を、最も美しく見える、僕ができないような方法で開放できる人間であるからだ。
『世間一般的』にはおかしな感情であるかもしれないが、それは紛れもない事実だ。

そして、僕は思った。
もっと彼を知りたい。
彼の内なる『悪』を見てみたい、と。

(  ω )「……うっ」

( ・∀・)「……」

落ち着きを取り戻し、内藤はテーブルに小さく崩れ、震えた。
だが、僕は安っぽい慰めの言葉を掛けなかった。
彼自身そんなことは聞き飽きているだろうし、それに言ったところで津村の意識が戻るわけでもない。

だから、代わりに僕はこう切り出した。

200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:49:30.40 ID:Y/LhSQNT0
支援

201 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:49:57.59 ID:J+Hjp2mF0
( ・∀・)「最初に言ったように、解決できて君の気が楽になるのならば……
      と思って聞いていたが、どうやら僕にはそれすらできそうにない。
      君の苦しみは君にしかわからないからね。僕に理解できるはずもない。
      だが、逃れられる方法ならば知っている。
      それは君の行動からすべての理性を排除することだ。
      時折あるだろう? 口には到底出し切れないような黒い感情が君を支配することが。
      そう。その感情にすべて身を任せてしまえばいい。
      そしていっそのこと、すべてを忘れて淫靡な行為に溺れてしまったほうが楽かもしれない。
      そうだな……君にとって、いちばんいい相手は――風羽さんあたりが……」

(  ω )「……言ってるんだお」

内藤は何かをつぶやいたが、僕はかまわず続ける。

( ・∀・)「端的にいえば、津村とかいう女性のことを考えないことだ。
      君がその彼女をどれだけ愛しているか解らないが、彼女では少なくとも精神的にも肉体的にも君の相手は無理だ。
      少なくとも僕ならば、彼女は植物と同じで人間としての価値はないと判断する。
      ならば、いっそのこと新しい女性と交わったほうが……」

(#゚ω゚)「何を言ってるんだお!! 僕に彼女を捨てろというのかお!!
     それにツンは……植物じゃないお!! 人間だお!!
     それをお前は物みたいにッ!! その上風羽さんのことも……」

僕が言い切らないうちに内藤は立ち上がり、僕のワイシャツの襟首を掴んで強引に引き寄せた。
酒臭い息が、僕の鼻をつんざく。
だが、僕は怯まなかった。
涙と鼻水に汚れきり、目を真っ赤にしてしわを寄せる内藤の顔を冷たく見据えて、さらに続ける。

202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:50:59.34 ID:Y/LhSQNT0
支援

203 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:51:39.03 ID:J+Hjp2mF0
( ・∀・)「ならば、どうして風羽さんを拒絶できずにいる?
      それほどまでに津村とかいう女性が大事ならば、彼女だけを見ていればいいんじゃないのかい。
      彼女を心の中から愛しているんだろう?
      ……どうした? 心の奥から純粋に彼女だけを愛していると言えないのか?
      ふん……だったら、やはりそれは嘘だ。
      自分を正当化したいだけの虚偽に他ならない。
      君は、眠り姫になった彼女を愛し続けるという状況に酔いしれたいだけなんだ。
      それは、『世間一般的』に美徳であるし、君自身もそれを信じて疑わないからね。
      少なくとも、今君の言っていることは――」

(#゚ω゚)「黙れッ!!」

僕の言葉はさえぎられた。
内藤の拳が途中で飛んできたからだ。
残念ながら僕は護身術の心得もなく、あっけなく壁に突き飛ばされることしかできなかった。

(メ・∀・)「……っく」

僕は中途半端に仰向けに寝転がる格好で、内藤のほうを見上げた。
内藤は無言で、肩を大きく揺らしながら立ち尽くしていた。
その表情は逆光のせいで、よくわからない。
だがそれ以上に動かないことから、さらに飛び掛ってくる気配はないようだ。

これ以上は危害がないと判断すると、次に僕は身体の感触を確かめた。
口にじわじわと鉄臭い味が広がる。
おそらく、はずみで口内を切ってしまったのだろう。
頬も焼けるように熱い。
そして、鈍い痛みが皮膚の下で脈を打っていた。

204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:52:09.44 ID:YlPFVoDRO
支援

205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:52:38.09 ID:Y/LhSQNT0
支援

206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:53:20.17 ID:bKqaRTH90
支援

207 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:53:25.60 ID:J+Hjp2mF0
(#゚ω゚)「……もう、アンタとは話したくもないお。残念だけど、この取引はなかったことにするお」

内藤は鼻息を荒くしながら自分の鞄をひったくると、そのまま踵を返し、個室から出て行ってしまった。
僕は同じ姿勢のまま、呆然とそれを見つめることしかできなかった。

(メ・∀・)「……やれやれ。僕としたことが、つまらぬ失態をしてしまった。
      まあ、いいか。しかしこの怪我はどう言い訳をしようか」

そこではじめて、僕は口元をハンカチで拭い、姿勢を正した。
と、そこに、この騒ぎを聞きつけて店員と他の客が再びやってきたが、
僕は大丈夫だから、と説明し、彼らを帰させた。

今度は、後悔はしていなかった。
冷静に考えてみれば、このせいで『VIPプロジェクト』の取引が破談になったところで、僕の会社には何の影響もない。
代わりの会社などいくらでもある。
それに発言が不謹慎だったとはいっても、先に殴ったのは内藤のほうだ。
別にやりはしないが、仮に刑事裁判になれば明らかに向こうが不利な状況だ。
むしろ、この顔の腫れの言い訳だけが気がかりだ。
きっと明日会社に出れば、すぐに他の社員が訊いてくるにちがいない。

僕はいろいろと思いを巡らせ、はあ、とため息をついた。
そして、姿の見えない内藤へつぶやくように言った。

(メ・∀・)「予言しよう。君が選ぶ道は二つ。
      津村を捨てて、風羽と結ばれ罪の意識に苛まれながら生きるか、
      風羽を捨てて、意識の戻らない津村と今後を共にするか。君は同時に二人を選べはしない。
      誰が見たって君は不器用だ。それに、今みたいな中途半端な状況もそんなに長くは続かないだろう。
      おそらく両者に対する愛情の呵責に耐え切れなくなって狂ってしまうはずだ……もう、聴こえていないだろうけどね」

そして、これが『正常』な状態の彼との最後の邂逅だった。

208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:53:53.31 ID:Y/LhSQNT0
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209 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:55:00.94 ID:J+Hjp2mF0
【LAST:僕は知った】

「茂良さん、2番にお電話です」

( ・∀・)「ん? どこからだい?」

「すみません、あまり聞き覚えのない会社からなので聞き取れなくて……」

( ・∀・)「こらこら、次からは先方の会社名と担当者くらいはしっかり聞いておいておくれよ」

「はい、すみませんでした。テヘッ」

(;・∀・)「やれやれ……まったく。
      ……お電話代わりました、茂良です」

内藤との会合から二週間ほど経ち、僕は普段通り仕事に追われる日々を送っていた。
結局『VIPプロジェクト』との取引は一時休止、というよりは未だ開始の段階に至っていない。
役員の決裁が遅れていることもあったが、あれ以来向こうからの連絡が全くなかったためでもあった。
それに、僕自身も例の宣伝カーの案件で忙しかったこともあり、ついつい放置してしまったのだ。

「いつもお世話になっています。私は『VIPプロジェクト』の栖来と申します」

( ・∀・)「……ああ、どうもお世話になっています」

そしてようやく、今頃になって連絡が来たようだ。
電話を掛けてきた担当者は内藤ではなかった。
凛とした低い声が印象的な、栖来と名乗る女性だった。

210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:55:39.85 ID:YlPFVoDRO
支援

211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:56:05.59 ID:Y/LhSQNT0
支援

212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:56:07.66 ID:bKqaRTH90
支援

213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:56:20.08 ID:FiBQdQFfO
支援

214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:56:34.80 ID:iESbjqwY0
支援

215 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:56:39.45 ID:J+Hjp2mF0
しかしながら、取引をやめると言っておきながら今更虫のいいことだ。
おそらくは内藤の上司にあたる人間が、僕に謝罪をしたい旨を伝えるつもりなのだろう。
僕は社内にはこの件については伏せていたため、こちら側からすれば何事もなかったに等しいのだが、
向こうの立場からすればかなり重大な、最悪、裁判も覚悟せねばならない事態だ。
ただし、僕は事を荒立てる気はなかったため、穏便に回答をするつもりではいた。

だが、

「いつも内藤がお世話になってましたが、諸事情によって私が担当を引き継ぐことになりました。
 で、まことにお恥ずかしい限りですが、案件のほうはどこまで進んでいらっしゃるのでしょうか?
 実は今回の案件、内藤が一人で抱えていたものですから進捗状況がよくつかめない状態でして……」

( ・∀・)「? それはどうい……いや、内藤さんがどうかされたんですか?」

栖来の切り出してきた話の内容は、僕の予想とは別のものであった。
思わずのど元にまで出かかった言葉を飲み込み、冷静に事情を分析する。
まるで先日の出来事を知らないような、そんな口ぶりだ。
いや、実際に知らないのだろう。
とすれば考えられることはただ一つ、内藤も先日の件を内部に伏せていることだ。

それよりも気になるのが、内藤が当社の担当から外れた事実だった。
事情が相手方に伝わっていないとなれば、唐突の担当者変更はあまりに不自然すぎる。

ともかく、僕は咄嗟に状況を飲み込み、彼女に訊きかえした。

「実は……先日から内藤は入院のためお休みを頂いておりまして……」

216 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:58:13.62 ID:J+Hjp2mF0
( ・∀・)「……入院?
      先々週にお会いしたときは元気そうでしたが……内藤さんに何が?
      ともかく、それならそうと早く知らせて頂ければお見舞いに参りましたのに。
      差し支えなければ、入院先を教えて頂けませんか?」

「それが、事情が事情のため……いえ、わかりました。
 ならば私も同行します。詳しいお話はそれからで」

( ・∀・)「……はあ」

結局その日の夕方に、僕は内藤が入院している病院で、栖来と名乗った女性と待ち合わせることにした。

たどり着いたのは、電車で一時間ほど、その後にバスで十五分ほどかかる住宅街に位置する中規模の病院だ。
門に一歩足を踏み入れれば、数種類の花を咲かせた花壇と等間隔に植えられた並木のアーチが僕を出迎える。
彩を添えるために設けられたものだと思われるが、その規則正しさが逆に作為的であり、気持ちの悪いものだった。
そして、その奥に見える大きなコンクリート造の建物は病棟だ。
清潔感を表現するために白く塗られてはいるが、所々に黒ずんだ汚れやひび割れが浮かび、
人間の生死を司る機能を持つ病院本来の不気味さをかもし出している。

川 ゚ -゚)「『クソミソフーズ』の茂良さんですか? はじめまして、私『VIPプロジェクト』の栖来と申します。
     今日は同期の内藤のためにわざわざご足労いただいて、申し訳ございません」

( ・∀・)「はい、私が茂良です。
      いえいえ、こちらこそ内藤さんにはお世話になっていたので当然のことですよ」

病棟の入口では、黒のパンツスーツを纏ったロングの黒髪の女性が既に立っていた。
電話での声に違わない、引き締まった印象の女性だった。
簡単に社交辞令の挨拶と名刺交換をすませると、僕たちは病棟の中に入っていった。

217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:58:28.14 ID:Y/LhSQNT0
支援

218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:58:46.24 ID:iESbjqwY0
支援

219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 00:59:26.99 ID:6UpjHlSe0
支援

220 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 00:59:51.38 ID:J+Hjp2mF0
( ・∀・)「……そうですか」

病棟の廊下を歩く中、僕たちの間に奇妙な空気が流れていた。
初対面であるから、というよりも、この重々しい状況がそうさせたのだろう。
互いに核心を伏せて語るという状態での、探り探りの会話だった。

実際、僕は内藤と仲がいいというほどの間柄ではない。
事実を引き出すために、あたかも懇意の仲であるという嘘をついただけだ。
むしろ二週間前のあのときが最初で最後の、彼と語り合う機会だったのだ。

しかし一方で、彼女、栖来のほうも一つ嘘をついていることがわかった。
彼女のようなポーカーフェイスの、表情の変化が薄い人間でも、必ず嘘をつくときに何らかの反応を見せるものだ。
それを見破るのが、幼い頃から他人の表情を注意深く観察していた僕のもうひとつの特技である。

彼女は嘘をつくときに、きまって瞳孔が収縮する。

それは、風羽の体調不良による入院に触れたときに一回。
僕は彼女の変化を見逃さなかった。
だが、どの部分で嘘をついたかは判断し辛かった。
体調不良が嘘なのか、それとも入院したこと自体が嘘なのか。
ともかく、内藤の入院と同じタイミングで彼女の身にも何かが起こったのは事実だ。
これは明らかに不審なことで、おかげで色々とあらぬ邪推が僕の頭を埋め尽くしたが、
どちらにせよ内藤との間に何かがあったことだけは間違いないだろう。

川 ゚ -゚)「ここが、内藤の病室です」

そうこうしている間に、栖来はある病室の前で足を止めた。
『503』と刻印されたプレートの下には、『津村』と『内藤』の文字があった。

221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:01:10.53 ID:Y/LhSQNT0
支援

222 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:01:15.14 ID:J+Hjp2mF0
( ・∀・)「……わざわざありがとうございます。
      ところで、無理を承知でお願いがあるのですが、内藤さんと二人きりで話がしたいのです。
      ともかく、会話ができるかは別にして、腹を割って言いたいことがありますから」

僕は、栖来に一人で病室に入りたいという意思を伝えた。

川 ゚ -゚)「……そうですか、わかりました。では私はこれで」

その結果、僕の要望は以外にあっさりと受け入れられることとなった。
栖来は今後の仕事方針についての打ち合わせを後日に行いたい旨だけ告げると、そのまま病院を後にする。
内藤と風羽が抜けた結果、仕事のしわ寄せが回ってしまいゆっくりもしていられないのだろう。
それに、おそらく内藤のいたたまれない姿を見たくないという部分もどこかにあるはずだ。

まあ、ともかく内藤と違って有能そうな人物だ。
今後の仕事はスムーズに進むだろう。
僕はため息をひとつ漏らすと、病室のドアをノックした。

( ・∀・)「……」

返事はない。
二人に意識がないのだから当然であるが。
しかしながら最低限の礼儀だけは忘れずに、僕は一声かけてノブに手を掛ける。

( ・∀・)「……失礼します」

ドアを開けた瞬間、窓から放たれた夕日の茜色の光が僕の目を突き刺した。
まぶしさに眩みつつも、僕はゆっくりと中に入っていく。

223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:01:42.62 ID:Y/LhSQNT0
支援

224 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:02:39.14 ID:J+Hjp2mF0
次に僕の目に飛び込んできたものは、僕の半身ほどの大きな窓と、その直前の棚に置かれた花瓶、
そして、左右に並べられた二つのベッドだった。
僕は迷わず部屋の中央まで歩み寄り、まず、左のベッドを覗きこむ。

ξ )ξ「……」

( ・∀・)「……例の彼女、か」

左に横たわっていたのは巻き毛が印象的な、白肌の女性だった。
美しい女性だった。
正常な状態であれば、だが。

しかし、今では目を覆いたくなるほどの無残な状態だった。
その腕と首は衰弱してやせ細り、表面には紫色の血管が葉脈のようにくっきりと浮かんでいる。
顔はさらに凄惨たるものだ。
表皮は枯木のように乾燥してかさつき、頬が萎れた茎のようにすっかりそぎ落ちている。
そして、力なくぽっかりと開かれた唇は、菫の花弁のように蒼白していた。

( ・∀・)「植物……か。皮肉にもまさにこの表現がぴったりだね」

点滴の管が腕から垂れ下がっている様子ですら、液肥を注入しているように見えた。
内藤は必死に否定していたが、僕以外の他の人間が見ても植物に見えるだろう。
少なくとも僕にとって、欲情できる対象ではない。
それでよく彼は彼女を長い間愛し続けたものだ、と関心した。

( ・∀・)「残念ながら、君に特別話があるわけじゃないんだ。
      まあ、一目会いたいという興味はあったんだけどね」

彼の『恋人』への挨拶を手短に済ませると、僕は背後に振り向いた。

225 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:04:07.61 ID:J+Hjp2mF0
(  ω )「……」

( ・∀・)「……やあ、内藤さん。先日は世話になったね。
      まったく君に殴られたせいでアザを誤魔化すのに苦労したよ。
      まあしかし、この件誰にも他言はしないから安心して欲しい。
      仕事のほうもこれからは君の同期の栖来さんと商談を進めるから心配いらないよ。
      ……と、言っても今はものを言えない状況みたいだがね」

右側のベッドには、変わり果てた姿の内藤が横たわっていた。
転落からまだ日も浅く、体格にそれほど変化が見られない。
全身には真新しい包帯が巻かれ、唯一、表情だけが隣の彼女とまったく同じ蒼白に染まっている。

だからこそ、リアルだった。
眼前に広がる生々しい姿がかえって彼の生存を連想させ、
もしかしたら今にも目を開けて起き上がるのではないか、と僕を錯覚させたのだ。
だが、それでも返事はなかった。
ただ目を閉じて、眠っているだけだ。

僕は仕方なく、話を続けることにした。

( ・∀・)「まあ、どこで知ったかは忘れたが、どうやら植物状態でも会話だけは聞きとれるらしいね。
      というわけで、このまま僕の話を聞いてほしい。
      ……どうやら僕の予想は外れていたらしい。
      君は二つの選択を同時にしてしまったようだ。
      君は確かに横にいる津村さんを愛していた。だが、それと同じくらい風羽さんも愛してしまった。
      だが、最初の恋人である津村さんは見てのとおり反応がない。
      満たされない寂しさのあまり、君はとうとう風羽さんに手を出してしまったんだろう?」

226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:04:14.70 ID:bKqaRTH90
支援

227 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:04:34.27 ID:YlPFVoDRO
支援

228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:04:41.46 ID:5iIrisFJ0
やっと追いついた。支援。

229 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:05:32.62 ID:J+Hjp2mF0
窓から生暖かい風が吹き込み、花瓶に添えられた色とりどりの花の香りがこちらに運ばれてくる。
だが、その香りは見た目ほど心地よいものではない。
むしろ不快なほどの青臭さに、僕は顔を少しだけしかめた。

( ・∀・)「……それにしても、今まさに実感しているんだが、植物状態の人間に喋りかけることほど気味悪いことはないよ。
      まるで、人形と話しているようだ。
      実際に植物状態の人間を自分の目で見れば印象が変わるかと思っていたが、やはり僕の予想通りだったよ。
      こんなこと毎日繰り返してたら、僕なら間違いなく発狂するね。
      ……だからこそ君が風羽さんを求めてしまったことも頷ける。
      誰も君を責める者などいないさ。いや、実際そうだったんだろう?
      とにかく君の選択は、そこまでは間違ってはいなかった。精神衛生を守るためには、だが。
      しかしながら、君は最後の最後でうしろを振り返ってしまった。
      津村さんのことを、いや、倫理だとか道徳心だとかそういったくだらない美徳を捨てきれなかったんだ。
      だからこそ、罪悪感にさいなまれ狂人に、果てには物言わぬ植物と化してしまった」

我ながら残酷な言葉だった。
隣に愛すべき恋人がいるというのに、内藤を陥れるようなことを次から次へと吐き出した。

しかし、これも事実。
僕はあるがままのことを言っているだけに過ぎない。
だが、内藤は目をそむけてしまった。
内なる悪に気づいていながらも同時にそれを否定する、という矛盾した行動をとってしまった。
だから、壊れた。

( ・∀・)「だが、ちょっぴり残念だったよ。
      実のところ、このまま悪意に染まっていく君を、
      そして、それを僕とは違う方法で開放する君を見てみたかったんだがね。
      ……まあ無理もないか。己の悪を認められる人間など、僕を含めて一握りだ。
      生涯を通して不器用だった君に、望むべきことではなかった」

230 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:07:17.71 ID:J+Hjp2mF0
言葉を途切れさせると、病室の中は心電図のモニターから発せられる機械音と、蛍光灯がちらつく音で埋めつくされる。
僕以外に人間の気配は、ない。
この一方的な会話にもはや意味がないことを、僕はわかっていた。
だが、僕が内藤とコミュニケーションをするためには、目の前で横たわっている水分とたんぱく質、
脂質、無機質、糖質、ビタミン等の栄養素で構成された『物質』に語りかけるほかになかった。

( ・∀・)「ずいぶん長居してしまったね。
      二人きりの甘美な時間を邪魔するつもりはなかったんだが、どうしても君に一目会いたくなってしまったんだ。
      でも、もうここに来たりはしないから、安心してほしい。
      ……ところで、最後にひとつだけ訊きたいんだ。
      ここに来てからずっと僕の頭をもたげていた疑問だったんだが、どうも納得いく答えが導き出せなくてね」

――そして、僕は最後に訊いた。


( ・∀・)「君は今、幸せかい?」


唯一、最後まで僕が疑問に思っていたことを、内藤本人にしか知りえないことを。

( ・∀・)「奇しくも……いや望むべくして君は愛すべき恋人と同じ状態になったわけだが、
      そうすることで、彼女という存在に触れることはできたのかい?
      まあ、霊体だとか魂魄だとか非科学的な概念で接触しているのかもしれないが、その場合は残念ながら知りようがない。
      それとも、聴覚、視覚、思考、記憶など大脳の機能はすべて正常に働いている、
      つまり自分の身の回りの出来事は感じ取れるが、ただ動くことが――自分の感覚、感情を表現することができない状態なのかい?
      だとしたら、君は最も悲痛な状態にあるわけだ。なぜならこの場合、君の恋人との距離がさらに遠ざかったわけだからね。
      正常な状態だったら触れることも喋りかけることもできたのに、この状態ではただ彼女が横にいるという気配しか感じ取れない。
      皮肉にも彼女の許にいくための行為が、さらに彼女を遠いところに追いやってしまう結果になってしまったんだ。
      ……まあ、君が答えないかぎり、この疑問は払拭されないわけだが、仕方ない。
      僕はこの辺りでおいとまさせてもらうとしよう」

231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:07:48.32 ID:iESbjqwY0
sien

232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:08:27.80 ID:YlPFVoDRO
支援

233 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:08:46.10 ID:J+Hjp2mF0
結局、疑問が晴れないまま僕は病院を後にした。
しかしながら、確証はできないものの、僕は後者の説が濃厚であると思っている。
実際にポーランドでは、植物状態となった人間が十九年ぶりに目覚めたというニュースがあった。
彼のコメントによれば、寝たきりになりながらも意識ははっきりと存在していたという。
ならば、内藤も津村も似たような状況にあると考えることが自然だ。

ただし、こればかりは植物状態を体験していないとわからないというのも実情だ。
極端にいえば、意識がない状態の中で身体だけが機能していることだってありうるのだ。
あくまでこれはひとつのソースを元に導き出した僕の推論にすぎない。
だから、僕は確信が持てずにいたわけだ。

( ・∀・)「物言わぬ植物、か。不可思議な存在だね。
      考えれば考えるほどその意義がわからなくなる。
      問題は意識の所在、か。となると、まずは――
      いや……もう、この件について考えるのは止そう。
      どちらにせよ、彼は僕の手の届かないところに旅立ってしまったのだから」

僕は、疑問について考えることをやめた。
結論が出ない順々めぐりの思考ほど、無駄で非生産的なものはない。
まだ、今晩の食事のメニューを何にするかを考えたほうがましである。
とは言っても、食べたいものを食欲のままに食べるのではなく、
自分の身体にとってもっとも良い効果をもたらすものを選択するだけに過ぎないのだが。

ともかく、僕は徒歩で駅まで戻ることにした。
バスが来るまで三十分も待たなければいけないこともあったが、
それ以上に、何者にも邪魔されずにゆっくりと歩きたかった。
空虚とも鬱蒼ともいいがたい、この非現実的な感覚に支配されていたかったのだ。

234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:09:41.27 ID:bKqaRTH90
支援

235 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:10:12.70 ID:J+Hjp2mF0
真夏だというのに、家々の隙間からは肌寒いくらいの風が吹き込んでくる。
ふと、顔をあげて空を見上げれば、先ほどとうって変わって重厚な灰雲が無限に空を埋め尽くしている。
この雲は決して晴れることはないのだろう。
悲劇の運命に翻弄された、『彼』の結末のように。

だが、紛れもなく美しかった。
まさに散っていく花弁のような、そんな脆くも危いはかなさが、『彼』の姿に重なって離れない。

ただ、僕自身『彼』のようになりたいかといえば、決してそうではない。
……いや、『彼』のようになりたくない、という表現には語弊がある。
苦悩と、罪悪と、混乱の果てに、狂気に犯されてしまうことは、僕のもっとも忌むべきことのひとつだ。
僕はあくまで、平穏の中に暮らしたいのだ。
平穏という安全な籠から出ようとしない、出る術を知らない僕がどう足掻いたところで決して『彼』のようになりえないのだ。

( ・∀・)「隣の芝は青い……ってことか。まあ、これも仕方のないことだ。
      僕と『彼』の人間の根本が全くちがうのだから。望めないものを望んでも仕方がn……うわっ!」

と、僕が呟いた瞬間、一陣の突風が身体を疾りぬける。
気を抜けば、吹き飛ばされかねないほどの強風だ。
思わず、僕は目を覆った。

( ・∀・)「まったく……夏だというのにこの気温はどうしたことだ? そろそろ地球の環境も危ないのかな? ……ん?」

目を再び開くと、視界の下のほうに違和感を覚えた。
僕は、足元を見た。
するとそこには真新しいB5サイズほどの紙が一枚、転がっていた。
何かの文字が手書きでしたためられている手紙のようだが、裏返しになっていたために内容までは解らない。
僕はそれとなく、それを取ろうと手を伸ばす。
普段ならば気にもせずに無視して通りすぎていたはずなのだが、なぜかこのときは拾い上げてしまったのだ。
そして、書かれている内容にじっくりと目を通した。

236 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:11:18.89 ID:bKqaRTH90
支援

237 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:11:32.08 ID:5iIrisFJ0
支援

238 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:12:07.45 ID:9HGCiApy0
支援

239 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:13:03.11 ID:J+Hjp2mF0
『 あなたにとってこれは、きっと突然のお手紙となっていることでしょう。
  以下には私が経験から得た事実を認めます、助けになれば本望です。
  
  
  あなたは今、どこにいますか?
  
  明確な返答は、恐らく出来ないでしょう。
  ただ、自分のいるべき世界ではない、どこか別の場所に迷い込んでいることは分かって頂けるでしょう。
  
  結論を言いましょう、あなたは本来いるべき世界を離れ、別の世界に飛ばされているのです。
  自身はまるで人形にでもなったのでしょうか、私も初めはまったく理解できませんでした。
  様々な世界とそれぞれの人間が交錯しているのです。
  
  居心地がいかがなものか、私に知る術はありません。
  ただ、その世界は現実とは乖離されていることを理解して下さい。
  そこにいる人たちは生きていますが、あなたの住んでいる世界の人間ではないことを把握して下さい。
  
  そう、それは夜寝ている時に見る、束の間の、それでいてとても長い時間です。
  
  あなたがどのように帰結するのかは分かりませんが、しっかりと現状を捉え、結論を出して下さい。
  心が固まり誠の決意が定まれば、おのずと元の世界へ戻るないしその世界へ留まれることでしょう。
  
  
  あなたがどういった理由でその世界に呼ばれたのかは個人によって異なるのでしょうが、
  その世界の人たちも生きており、元の世界も動いています。
  本当に大切な人を、世界を、どうかしっかりと見極めて下さい。
  
  一時の夢の居心地の良さに騙され、自己満足で終わらないよう、気をつけて下さい。
  
  最後となりますが、見ず知らずの同じ体験をしているだろうあなたを、心から応援しています。』

240 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:14:06.61 ID:J+Hjp2mF0
(  ∀ )「……ッ……」




(  ∀ )「フッ……クク……」




(  ∀ )「クク……ククク……」




(  ∀ )「ク……クアーッハッハッ!!
      アーッハッハッハッハッハッハッ!! アハッ!!
      アーッハッハッアーッハッハッアーッハッハッ!!!!
      ククククッ!! アハハハッ!! アーッハッハッ!!
      ハハハハッハハッハッハハハッハハハハハハハッハハハハッハハハハハッハ!!
      ハッハハハハッハハハッハハッハハハハッハハハハハハッハハハハハッハハ!!」

僕は、笑った。
『ふり』ではない。
生まれてはじめて、心の奥底から笑ったのだ。

この手紙の所以は知りようもない。
誰かが書いた悪戯なのかもしれないという考えが頭をよぎったが、違う。
確信はまるでないのだが、直感的に真実であることを悟らずにはいられなかった。

241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:14:52.74 ID:bKqaRTH90
支援

242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:14:55.39 ID:YlPFVoDRO
支援

243 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:16:02.33 ID:J+Hjp2mF0
書面の内容どおり捉えるならば、この手紙は、僕なんかのちっぽけな人間の思慮に及ばないほどの遠くの世界
――つまり、こことは違う異次元に存在する何者かが僕にメッセージを伝えるために、送られたことになる。
そして、僕も気づかぬうちに違う世界に旅立っていたというのか。

だとすれば、これほど滑稽なものはない。

手紙で表現されている別世界の住人。
それは、内藤であり、風羽であり、津村であり、『VIPプロジェクト』の社員たちである。
確かに厳密にいえば、『彼ら』は僕と同じ世界に、同じ時代に、同じ次元に存在しており、
異次元だとか別世界だとかいう大げさな表現は少しばかり相応しくないかもしれない。

だが、これも僕にとっては微々たることだ。
仮に何処かの遠くの異世界、例えば『不思議の国のアリス』のアリスが僕の前に迷い込むことと、
同じ現代社会の別領域で生活している『彼ら』が僕の前に現れたことに、大差はない。
なぜならば、本来出会うべきではない人間同士が出会うということ自体に変わりがないのだから。
アリスも『彼ら』も、微小な世界で細々と生きている僕にとっては別世界の人間だ。
(もっとも、同じ現代社会を共有している以上、『彼ら』に対する親近感のほうがはるかに大きいのではあるが)

ともかく、僕はその手紙通りに別世界に旅立ったわけだ。
神的な大いなる存在が意図してこのようなことをやったのか、
それとも天文学的な数値の確率で『可能性』に歪みが生じて今回の出来事が起こったのか、その原因は僕の及ぶところではない。
しかし、少なくとも僕にしてみれば、これほどまでに大げさな仕掛けを起こしておいて、
わざわざ僕が別世界に出向いた意義が、いや、その影響ですら何一つも残っていないのだから面白い。

――僕は、あるひとつの、喜劇にも似た悲劇を見ていただけだ。
そして、唯一イレギュラーな出来事として、その登場人物と会話をしただけにすぎない。

244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:17:08.08 ID:iESbjqwY0
支援

245 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:17:18.81 ID:J+Hjp2mF0
ここでひとつの疑問が出てくるだろう。
僕が劇に関わったことでストーリーの結末に影響を与えてしまったのではないか?

答えはNOだ。
むしろ僕は、『彼』に自身の破滅を防ぐための助言をし、バッドエンドを回避する努力を行ったくらいだ。
しかし、『彼』はそれに耳を傾けず、ただの植物人間となってしまい非業の結末を迎えてしまった。
要するに、僕に残ったものといえば何もない。
この出来事によって、日常生活に何一つ影響はなかったし、僕という人格に対して毛筋ほどの変化も起こらなかった。

そして、この手紙によれば今回は僕が選択する番らしい。
それにしても、馬鹿馬鹿しい質問だ。
この言い回しも変に仰々しく、それがまた僕の笑いを誘う。

「きゃっ!!」

(;・∀・)「うわっ!! ……痛たた……あっ、大丈夫ですか?
     僕が余所見をしながら歩いていたばかりに申し訳ない」

从'ー'从「ごめんなさい。 私も急いでいたばっかりに周りを見てなくって……」

( ・∀・)「いえ、大丈夫ですよ。気になさらないで下さい」

从;ー:从「ああ〜書類がバラバラに!!
       あああっ、どうしよう!!どうしよう!! 早く拾わなきゃ!!」

( ・∀・)「手伝いましょうか? 僕のほうも悪かったですし。
      ……しかし、大量の書類ですね。紙袋二つ分は女性には辛いはずだ」

从;ー;从「ごめんなさ〜い。実はこの書類を支社まで運ばなきゃいけないんですけど……
       バスには乗り遅れちゃうし、タクシーはつかまらないし……手で運ぶしかないんです」

246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:18:26.16 ID:bKqaRTH90
渡辺さんktkr

247 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:18:35.34 ID:J+Hjp2mF0
しかしながら、この数奇な運命に出会わせてくれたことは感謝している。
味気の無い日々の生活から僕を解放し、久々に楽しませてくれたのだから。
どの小説よりも、どの映画よりも刺激的で、完全なる絶望に満ちたすばらしい物語だった。

( ・∀・)「……それは大変だ。ならば僕が運びましょう。
      ちょうど僕も駅に行くところですから」

从;ー;从「……ふぇ? いいんですか!?」

( ・∀・)「はい。どうせ今日は早く帰るつもりでしたから。喜んで手伝いますよ」

从'ー'从「やった〜ありがとうございます〜!!」

ただ、僕は決して『彼ら』のように劇的な生き方などはできないし、興味もない。
ましてや、植物のようにただ生き永らえるような結末を辿るなどもってのほかだ。

また、口頭で栖来と『VIPプロジェクト』との取引の継続を約束したが、僕は他の人間に担当を変わってもらうことに決めた。
僕が『彼ら』の傍に居る意思や必要性は、微塵もない。
このまま残された人間のその後を眺め続けていても、落胆させられるのは目に見えているからだ。
やはり、夢は夢であるほうがいい。

そう。

これまで通りでいいのだ。
特別望むべきことは、何もない。
いつものようにやっていれば、僕は平穏でつつましい生活を送れるのだから。

ならば、いうまでもなく答えは決まっている。

248 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:20:04.51 ID:J+Hjp2mF0
「――ええ。喜んでお手伝いしますよ……フフ」





これまでと変わらず、己の『悪』に忠実に生きよう。





嫌悪と、劣等と、欺瞞に塗れながら、
軽蔑に、不快に、逆鱗に触れないように、
臆病で、卑怯で、狡猾に『虚偽』を演じ続けよう。





そして、決して陽の光が届くことのない影の中で、欲望の赴くまま『淫靡』に溺れてしまえばいい。

249 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:21:03.10 ID:J+Hjp2mF0





――それが『僕』という存在なのだから。






250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:21:28.81 ID:5iIrisFJ0
支援

251 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:21:44.93 ID:J+Hjp2mF0

            『( ・∀・)モララーは植物と会話をするようです』 〜Fin〜


               To be continued 『('A`)ドクオは淫靡に溺れてしまったようです』

252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:22:20.27 ID:9HGCiApy0


253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:22:34.16 ID:bKqaRTH90
乙!

254 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:22:46.47 ID:yf5AP/S80
支援?

255 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:23:10.71 ID:xBcl9g140
乙!

256 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:23:14.40 ID:/E2Wkw+GO


257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:23:15.60 ID:NZY/3Uf5O


258 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:23:21.39 ID:wNnz7kdx0


259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:23:46.07 ID:2rJGHkQd0
乙!

260 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:25:41.30 ID:FiBQdQFfO


261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:27:03.45 ID:5iIrisFJ0
乙!

262 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:27:22.29 ID:dOLE8t+50


263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:30:04.99 ID:SHPnYSyv0

面白いけどモララーむかつくな

264 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:30:49.83 ID:srf1q2wc0
乙!!

さぁ、Aの締めくくりですね

265 :あとがき ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:34:58.34 ID:J+Hjp2mF0
この読み辛い作品を最後まで読んで支援してくれた方々、そしてまとめさん方有難うございました。

そして、『( ^ω^)ブーンが植物の世話をしているようです』のファンの方々ごめんなさい。
徹底的に植物さんの作品をレイプしてしまった。
『( ^ω^)ブーンが植物の世話をしているようです』は元々欝な話ではあったのだが、
ラストにツンとブーンが寄り添うという点ことで救いがあったのにも関わらず、
『淫靡』のモララーが科学的な観念からそれを完全否定してしまった。
言うなれば、『( ^ω^)ブーンが植物の世話をしているようです』という作品の否定。
そこからこの合作作品は始まったわけで。

とりあえず弁解しておくと、自分は植物さんの作品は大好きだし、
前もってこの作品を植物さんに見せており、この作品の趣旨は理解していただいていると思っている。

で、本作の内容ですが、大きく分けて三つ。

まずは、『淫靡』本編で明かされなかったモララーの過去。
これは太宰治の『人間失格』にかなり影響されました。
テーマが『淫靡』のモララーにピッタリだったのですが、
どちらかというとこの時点では劣化太宰コピーだったわけでそこは反省すべき点でした。
しかしながら思うように時間が取れず、結局『人間失格』色を薄めることができませんでした。
でも、『植物』のブーンというキャラが実在している以上、
『淫靡』のモララーも同じ土俵に立たなければいけなかったので上記の通り長々と書いた次第です。

↓続く

266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:40:03.93 ID:bKqaRTH90
とりあえず支援

267 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:43:54.90 ID:wNnz7kdx0
あとがきに支援を送ることになるとは・・・

268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:50:33.51 ID:srf1q2wc0
支援

269 : ◆foDumesmYQ :2007/10/17(水) 01:50:35.75 ID:J+Hjp2mF0
で、その後はエロシーン。
ぶっちゃけ濃厚に書く必要はなかったわけだったが、
お祭りのサービスシーンということでモララーとつーと絡ませてみた。
決して、あの作者さんをイメージしたわけではないですよ。
決して。
お間違えのないように。

その後、ようやく『植物本編』との絡み。
まあこれは最初にモララーというキャラを知ってもらった上で、『植物』のブーン達とどう絡むのか。
そこがいちばん書きたかった点なのですが、安易なハッピーエンドにはしたくなかった。
非情なまでの鬼畜っぷりにしたいと思っていたり、
また、『植物』本編では描かれてなかったツンのむごい姿を描写することで、
物語としての救いや、淡い期待を一切排除することを目的に書きました。

全編を通しての総括ですが、この物語は自分の殻をぶち壊すためにつくりました。
裏合作Bグループ異世界編や、メンクイ、鋼城樹民を超える作品を作りたかったのです。
なので、敢えて地の文は一般小説に近い文量で、しかも無意味に内容を難解にして書いてみました。
それに合作を通して、フラストレーションが全くなかったかと言えばそうではないので、
作品を通して少し意地悪をしてみたくなったということもありますw
でももうこんな量では書きません。疲れた。


それでは改めて最後に、お付き合い頂いた皆さん、そしてともに合作をして頂いた皆さん、本当に有難うございました。

これからまた、投下があるのかな?
では、引き続き合作をお楽しみください。

270 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:53:21.24 ID:srf1q2wc0
今度こそ乙!!

あの作者をイメージしたら貧乳になるかrgfgdcつkl

271 : ◆7at37OTfY6 :2007/10/17(水) 01:53:21.35 ID:6+A2fCpI0
さて、それでは人も少なくなった中、細々と投下していこうと思います。

272 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:54:23.96 ID:bKqaRTH90
支援

273 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:54:37.70 ID:U2T1ctzu0
>>270
お前……言ってはならん事を……

274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:54:47.97 ID:XqGE+rJJO
おおお支援

275 : ◆7at37OTfY6 :2007/10/17(水) 01:54:54.84 ID:6+A2fCpI0
   (*ノωノ)が街で出会うようです『エピローグ:プロローグ』



事故から一週間は経ったか、これといった後遺症もないが、相変わらず病院とは決裂出来ない日々だった。
一方仕事の進行具合は事故の影響に関係なくのんびりとしたもので、残業ばかりがかさむ毎日を送っていた。

月もおぼろげな夜にバスを乗り継いで家に帰るのが日課となっていたが、
その日は仕事で外回りをし、そのまま直帰したために、太陽が朱色に染まる前に家に到着した。

ポストを覗くと、自分宛へ手の平大の小包が届いていた。

(*ノωノ)「……ギコさん?」

ギコさんとは私が事故した車の運転手だ。
とても人当たりがよく、飛び出した私の事を何一つ非難する事もせず真摯に尽くしてくれた。
親からも口を揃えて「ぶつかった相手が良かった」と言われた。

そんな律儀な人だ、お詫びの品が届いてもなんらおかしくない。

(*ノωノ)「別にいいのに……」

などと言いながらも厚かましく包みを破くと、意に反して質素な箱が姿を現した。
特にメーカーの名前が入っているわけでもなければ厳密な封もされていない。
何か個人的な物を、ギコさん自らがこの箱に詰めたんだ。

しかしタバコより気持ち大きい程度の箱、一体何を郵送してまで届けたかったのだろう?


ビニールテープを解くと、箱をゆっくりと開けた。

276 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:55:20.88 ID:srf1q2wc0
淫靡ノンフィクション乙。
植物支援

277 : ◆7at37OTfY6 :2007/10/17(水) 01:56:33.80 ID:6+A2fCpI0
中からは紫色の布に包まれて、冷たく重量を感じる物が出てきた。


頭に疑問符を浮かべながら続いてその布を解くと……。

(*ノωノ)「?」

出てきたものを見ても、私は疑問符を仕舞い込むことが出来なかった。


そこにあるのは、どう見ても男物の腕時計だった。
どうしてこれを私に渡すのか、女物ならまだしも間違えろというほうが難しいだろう。

時計には一枚の手紙が添えてあった。


中を見たけれど、下の方は破れているし、擦れ切ったその内容はとても確認出来なかった。

結局意図が出来ないままに終わったなと思い、目を向けたのは……紫色の布。
時計と手紙が包んであったそれを広げると、ハンカチーフだった。


始めて見た気のしない、私には到底似合わないだろう悪趣味な色。


一度見たらもう忘れることの無さそうな、とても印象的な。

278 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 01:57:25.03 ID:bKqaRTH90
支援

279 : ◆7at37OTfY6 :2007/10/17(水) 01:58:28.49 ID:6+A2fCpI0


私は咄嗟に男物の時計を見た。

時計は4時20分を力強くさしていた。
止まることなど無縁そうに、一秒一秒を確実に刻んでいた。


慌てて荷物を持つと、帰って間もないにも拘らず、すぐさま家を出た。

最寄のバス停へ行くと、5分もしない内に所望順路のバスがくる。


安心すると時計を腕にはめ、鞄の取っ手に悪趣味なハンカチを結んだ。



ともすればバスが来て、私は学生でごった返すバスに揺られ、目的地へと進んでいった。



280 : ◆7at37OTfY6 :2007/10/17(水) 02:00:11.13 ID:6+A2fCpI0


病院へ到着したのは16時45分、手っ取り早く受付を済ませると、大きな建物を駆け、階段を上り、その部屋へと入った。



そこでは二人が、仲睦まじくベッドの上で眠っていた。



(*ノωノ)「なんで……どうして黙っているんですか?」



聞いても当然返ってくるわけがない。
構わずに続けた。


(*ノωノ)「本当……意地悪ですね、先輩って。
  でも私、思い出しましたよ……。
  内藤先輩とツンさん、思い出しましたよ」


時計をベッドの隣に置いた。


ツンさんと違い、内藤先輩はまだふくよかな風貌で、今にも動き出しそうだった。



281 : ◆7at37OTfY6 :2007/10/17(水) 02:02:03.04 ID:6+A2fCpI0

換気のために軽く窓を開け、その前に腰をかけた。
窓の縁に便箋を一枚広げると、胸のボールペンで文章を綴る。


私の経験を、そこに認める。


もしこの世界に来訪者があるならば、その手助けとなるために。


この世界が夢か現実かは分からない。

それでも……その人たちが、しっかりと己の結論を出せるように。


私の様に五里霧中に彷徨わないように。



思いの丈を一気呵成に書き綴ると、ペンを置いた。


282 : ◆7at37OTfY6 :2007/10/17(水) 02:02:32.26 ID:6+A2fCpI0
(*ノωノ)「この世界には……誰が来ているんだろう……」


誰かが来ているわけなんて無い、思いに反して口からはそんな言葉が漏れた。

そう、私の様に別世界にいることに気付かない人が殆どだろう。

何よりその人と私が出会える確率のなど、どれほど微々たるものか。



一息つくと、私は席を立ち、部屋を後にした。






283 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:02:35.18 ID:srf1q2wc0
支援


284 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:02:51.34 ID:bKqaRTH90
支援

285 : ◆7at37OTfY6 :2007/10/17(水) 02:04:40.51 ID:6+A2fCpI0





お手洗いに席を立ったつもりだったが、ふと帰宅報告を忘れている事を思い出して病院の外まで歩いた。
携帯の電源を入れて、仕事先の先輩である長岡さんへ仕事終わりの電話を入れる。
つい口が滑って早い時間に帰宅した事を言ってしまうと、そういうことは黙っておけと言われた。


思ったよりも長くなってしまい、病室に戻ると風が強く吹きつけた。

(*ノωノ)「……誰かいたのかな?」

窓を慌てて閉めると、カーテンが僅かに開いていることに気付いた。
私はいつもカーテンを締めて部屋を出ている、さっきも閉めて部屋を出たはずだ。

疑問符を浮かべながら目線を窓の縁に下ろすと、書き綴った手紙が消えていた。
突然強く吹き出した風に飛ばされてしまったのだろうか、窓縁に放ったらかしにした事をとても後悔した。


(*ノωノ)「あぷー、やっぱり私ってダメダメかも……」


相変わらず不注意な自分に嫌悪しながらも、これでいいのかもしれないと思っていた。

どうせ私がこの世界に迷い込んだ人に会えるとは限らないのだから。

風に運んでもらおう、その人のもとへと、私の手紙を。

286 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:04:42.95 ID:XqGE+rJJO
支援

287 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:04:53.51 ID:5iIrisFJ0
支援

288 : ◆7at37OTfY6 :2007/10/17(水) 02:06:41.73 ID:6+A2fCpI0
鞄に括り付けてあったハンカチを解くと、私はそれを腕首に巻いた。
痛々しい傷跡を隠すように。


(*ノωノ)「先輩、似合いますか?」


寝ている先輩に声をかけたが、答えてくれない。
きっと似合っていなかったのだろう。


(*ノωノ)「内藤先輩、先輩は夢を見ていますか?
  夢っていっても、将来の希望とかじゃなくて寝る時に見る夢のことです。
  その夢に……私は登場していますか?」



(*ノωノ)「もし、私が登場していたら……」



私は先輩を前にして、しっかりと笑顔を作ることが出来た――



(*ノωノ)「ご迷惑をお掛けすると思いますが、よろしくお願いしますね、先輩」



後悔など、どこにもなかった。

289 : ◆7at37OTfY6 :2007/10/17(水) 02:08:27.87 ID:6+A2fCpI0
〜〜〜〜

以上、作品のエピローグというかは、Aグループ世界観の付け足しになります。
どちらかというと全ての始まりに位置するものですので、兼プロローグとして考えていただけると助かります。
続きがあるという意味合いを含め、半端に終わらせました。
本当の終わりはAグループの総合後編で、お願いします。

また、全ての作品内で手紙が廻っている通り作品間での時系列はループしております(正確には時系列を崩壊させました)。
全て読んで頂けた方へのご褒美程度に、その辺りも楽しんでもらえればと思います。

補足完了です、それではAグループ総合後編を、金の袋さんお願いします。


>オムライスさんへ
自分の合作作品の372と378の間の2レスが飛んでいるようですので、保管していただけると助かります。
今合作を毎日まとめていただけ、本当にありがとうございます。

290 : ◆qvQN8eIyTE :2007/10/17(水) 02:09:47.16 ID:bKqaRTH90
淫靡さん、植物さん、本当に乙でした。
それではただいま聖人タイム真っ盛りの状態で、Aグループ総合後編を投下したいと思います。

291 : ◆qvQN8eIyTE :2007/10/17(水) 02:10:53.48 ID:bKqaRTH90
開かれた光から遮る闇へ。

二人の影はその姿を隠す。

影さえ映さなくなった黒の世界で

足場さえ存在しなくなった空間で

二つの声が響き合う。

――なぁ、僕達はいつからここにいるんだい?

――624万と562時間と19分……くらいだね

――もうそんなに経っているのかい?

――そうだね

――また、暗闇に戻ったね

――でも、色々な「可能性」を見られたよ

――そう。そして「結果」もね

292 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:11:05.94 ID:srf1q2wc0
>>290
最悪だwwwwww

293 : ◆qvQN8eIyTE :2007/10/17(水) 02:12:21.36 ID:bKqaRTH90
――「結果」というのは「可能性」を経て形を成す物なんだ

――うん。今までの光景でそれがわかった

――前にA君の話をしたね
  A君には色んな育ち方という「可能性」があった

――でも、その過程はどうであれ、A君は今「結果」として存在している

――そう。そうなんだ。あらゆる可能性を乗り越えて、「結果」へと繋がる

――「可能性」はいくらでも存在するけど「結果」は一つしかないんだね

――そういうことだね

294 : ◆qvQN8eIyTE :2007/10/17(水) 02:14:05.41 ID:bKqaRTH90
――願望や奮闘などお構いなしに、ただ「結果」は待っているんだね
  今、僕が君を見たり触れたりできないのも、きっと「結果」なんだ

――手紙がちゃんと届くかが「可能性」
  ちゃんと届いたから「結果」
  こういうこと、かな

――そうだね。でも、ときどき「結果」ってやつはイレギュラーを起こすんだ

――イレギュラー、かい?

――そう。例えば、その手紙が時空を遡ったり、ね

――そんなことあるわけないじゃないか

――でも、実際何処かで有り得た話かもしれない
  時間ってやつは、膨大で不鮮明なものだからね

295 : ◆qvQN8eIyTE :2007/10/17(水) 02:15:47.76 ID:bKqaRTH90
――その流れの中では、イレギュラーがあってもおかしくない、と?

――そうだね。実際、君も世界を跨いだ交流を感じたんじゃないかな

――どこか遠く、遠く。果てなく続く大地の先
  確かにそこで何かを見た気がする

――それもまた「可能性」と「結果」が織り成した展開なんだ

――悲しみの少女、不可解な青年、常識外れの変態、非現実的な淑女、色欲に溺れた男
  これら、全てが深い記憶にリンクしている気がする

――きっとそれは心の底、夢のような時間に見られた光景さ
  現実からのイレギュラーとしての、夢

296 : ◆qvQN8eIyTE :2007/10/17(水) 02:17:28.82 ID:bKqaRTH90
――とても楽しかった気がする
  心が弾んで、気分が高揚して

――でもそれはイレギュラー。現実ではないんだ

――そっか

――うん。でも夢は望めば見られるのさ

――それは「可能性」が「イレギュラー」した「結果」として、かい?

――半分は正解

――もう半分は?

――望むわけだから、「イレギュラー」ではない。正常なことなのさ

297 : ◆qvQN8eIyTE :2007/10/17(水) 02:18:56.59 ID:bKqaRTH90
――夢を見たい、ということが?

――そう。願望を持つのは誰しもが行うことだから

――なら

――なら?

――また、夢を見たい

――うん。君がそう言うのはわかっていたよ

より深い闇が訪れた

闇を更に上塗りするように

298 : ◆qvQN8eIyTE :2007/10/17(水) 02:20:44.27 ID:bKqaRTH90
一層深くなる闇の中

瞼の裏に今までの光景を投影した

様々な世界

様々な人

様々な繋がり

様々な可能性

様々な結果

様々なイレギュラー

299 : ◆qvQN8eIyTE :2007/10/17(水) 02:22:17.36 ID:bKqaRTH90
哀しみは不可解へ

不可解は非常識へ

非常識は非現実へ

非現実は淫らかへ

淫らかは哀しみへ

帰宅部だけ取り残されて

全てが繋がり

そして





全てを巡った

300 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:23:57.07 ID:wNnz7kdx0
支援

301 : ◆qvQN8eIyTE :2007/10/17(水) 02:24:02.04 ID:bKqaRTH90
「やぁ、こんにちは。夢の中の僕」

「こんにちは。僕」

「今やっと気付いたよ。夢の中では僕は全てであって、全てが僕であるって」

「そうだね。だから、僕は君。すなわち僕なのさ」

302 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:24:16.17 ID:srf1q2wc0
支援


303 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:25:00.62 ID:5iIrisFJ0
支援

304 : ◆qvQN8eIyTE :2007/10/17(水) 02:25:40.34 ID:bKqaRTH90
歩むように、駆けるように


匍うように、跳ねるように


「可能性」と「結果」の繋がる「イレギュラー」な世界で


「暗闇」の中の「光」に照らされて


過去となった物語は


静かに幕を閉じる







「こんにちは。そして、夢の中でお休み。僕」

305 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:26:58.13 ID:srf1q2wc0
支援


306 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:30:57.30 ID:93fijNJuO
したらばwww
乙!

307 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:32:37.27 ID:6+A2fCpI0
金の袋さん:あとがき

これでAグループはおしまいです。
皆様、お疲れ様でした。
共通後編は無断で少し変更しました。
申し訳ない。

これから締めくくりまでゲリラ祭になるのかな?
皆さんジャンジャン下痢ってください。

あと個人的に。
今週のオムライスの、中の人の独り言を読んで土下座したい衝動に駆られました。
すみませんです>オムさん

それでは最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました。
家に帰るまでが合作だよ!

308 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:32:41.05 ID:wNnz7kdx0
289 名前:金の袋 ◆qvQN8eIyTE[sage] 投稿日:2007/10/17(水) 02:28:41
あとがき書こうとしたらさるった\(^o^)/
一応スレに書き込もうとしてた言葉↓

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

これでAグループはおしまいです。
皆様、お疲れ様でした。
共通後編は無断で少し変更しました。
申し訳ない。

これから締めくくりまでゲリラ祭になるのかな?
皆さんジャンジャン下痢ってください。

あと個人的に。
今週のオムライスの、中の人の独り言を読んで土下座したい衝動に駆られました。
すみませんです>オムさん

それでは最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました。
家に帰るまでが合作だよ!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜


眠さに耐えきれないので解除まで耐えられる気がしません。
スレにいる方々にはすみません。お疲れ様でした!


309 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:33:21.50 ID:wNnz7kdx0
かぶったwwww俺氏ねwwww

310 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:34:10.58 ID:srf1q2wc0
乙!!

311 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:37:22.58 ID:XqGE+rJJO
皆さん乙!

312 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:37:25.20 ID:6+A2fCpI0
改めて乙です!

>>309
気遣っていただきありがとうございます。
4秒差とは……

313 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:39:19.96 ID:srf1q2wc0
ID:wNnz7kdx0は異能者

314 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 02:39:55.76 ID:i78txfHUO
4秒wwwwAグループの皆様乙です!

315 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/17(水) 03:12:27.68 ID:ZvPn88upO
乙!!

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